8 / 223
アニエルカ・スピラと紅茶。
8話
しおりを挟む
「えーと、つまりは、電話でアルバイトの申し込みがあった時、なぜか僕がフロアで、アニーちゃんが電話のとこにいたと。で、僕の声を使って、それを引き受けたわけだね?」
『セイ! カー…い』
「それ使って返事しないで! なんで引き受けたの、そういうのは僕にまず報告してくれないと困ーー」
『ウメル…ゾ!』
ダーシャの喋りに、唐突に音声が割り込む。
ダーシャはビクッ、と体が強張った。
「すいません、誤作動です」
アニーが謝罪するが、本当に誤作動か? と、ダーシャはドキドキと疑心暗鬼になる。
「もっとアルバイトの人数がいれば、店長も休み取れるって思ってやったことなんじゃないですか? 多めに見てあげましょうよ」
と、静観を決め込んでいたビロルが入ってくる。悪ノリをすることもあるが、基本的にはまとめ役で、下の子達への配慮もできる子だ。一歩引いたところから、物事を見ることができる目を持っている。
『ビロル、くぅぅん……キミ、は! ジ、キュウ……アップ、だ、ァー!』
「よしてくださいよ店長、当然のことをしたまでです」
「僕じゃないよそれ」
前言撤回。色々節穴だ。
嘆息しつつも、せっかく来てもらった面接の方は、一応やってみようとダーシャは切り替える。人数が多くいて困ることはない。ちゃんと働いてくれるなら、むしろアニーのファインプレーになるかもしれない。そしたら儲け物だ。
「まぁ、とりあえず事務所まで案内してもらえる? このまま帰すわけにもいかないでしょ」
店外の入口で待っているらしいので、カッチャに伝えて移動する。できればフロアかなぁ、でもビロルくんの負担も大きいしキッチンもできる子だと嬉しいね、と面接の会話をシミュレーションする。とりあえず、ヤバすぎなければ採用してから考えよう。
『セイ! カー…い』
「それ使って返事しないで! なんで引き受けたの、そういうのは僕にまず報告してくれないと困ーー」
『ウメル…ゾ!』
ダーシャの喋りに、唐突に音声が割り込む。
ダーシャはビクッ、と体が強張った。
「すいません、誤作動です」
アニーが謝罪するが、本当に誤作動か? と、ダーシャはドキドキと疑心暗鬼になる。
「もっとアルバイトの人数がいれば、店長も休み取れるって思ってやったことなんじゃないですか? 多めに見てあげましょうよ」
と、静観を決め込んでいたビロルが入ってくる。悪ノリをすることもあるが、基本的にはまとめ役で、下の子達への配慮もできる子だ。一歩引いたところから、物事を見ることができる目を持っている。
『ビロル、くぅぅん……キミ、は! ジ、キュウ……アップ、だ、ァー!』
「よしてくださいよ店長、当然のことをしたまでです」
「僕じゃないよそれ」
前言撤回。色々節穴だ。
嘆息しつつも、せっかく来てもらった面接の方は、一応やってみようとダーシャは切り替える。人数が多くいて困ることはない。ちゃんと働いてくれるなら、むしろアニーのファインプレーになるかもしれない。そしたら儲け物だ。
「まぁ、とりあえず事務所まで案内してもらえる? このまま帰すわけにもいかないでしょ」
店外の入口で待っているらしいので、カッチャに伝えて移動する。できればフロアかなぁ、でもビロルくんの負担も大きいしキッチンもできる子だと嬉しいね、と面接の会話をシミュレーションする。とりあえず、ヤバすぎなければ採用してから考えよう。
0
あなたにおすすめの小説
灰かぶりの姉
吉野 那生
恋愛
父の死後、母が連れてきたのは優しそうな男性と可愛い女の子だった。
「今日からあなたのお父さんと妹だよ」
そう言われたあの日から…。
* * *
『ソツのない彼氏とスキのない彼女』のスピンオフ。
国枝 那月×野口 航平の過去編です。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
四人の令嬢と公爵と
オゾン層
恋愛
「貴様らのような田舎娘は性根が腐っている」
ガルシア辺境伯の令嬢である4人の姉妹は、アミーレア国の王太子の婚約候補者として今の今まで王太子に尽くしていた。国王からも認められた有力な婚約候補者であったにも関わらず、無知なロズワート王太子にある日婚約解消を一方的に告げられ、挙げ句の果てに同じく婚約候補者であったクラシウス男爵の令嬢であるアレッサ嬢の企みによって冤罪をかけられ、隣国を治める『化物公爵』の婚約者として輿入という名目の国外追放を受けてしまう。
人間以外の種族で溢れた隣国ベルフェナールにいるとされる化物公爵ことラヴェルト公爵の兄弟はその恐ろしい容姿から他国からも黒い噂が絶えず、ガルシア姉妹は怯えながらも覚悟を決めてベルフェナール国へと足を踏み入れるが……
「おはよう。よく眠れたかな」
「お前すごく可愛いな!!」
「花がよく似合うね」
「どうか今日も共に過ごしてほしい」
彼らは見た目に反し、誠実で純愛な兄弟だった。
一方追放を告げられたアミーレア王国では、ガルシア辺境伯令嬢との婚約解消を聞きつけた国王がロズワート王太子に対して右ストレートをかましていた。
※初ジャンルの小説なので不自然な点が多いかもしれませんがご了承ください
消えない思い
樹木緑
BL
オメガバース:僕には忘れられない夏がある。彼が好きだった。ただ、ただ、彼が好きだった。
高校3年生 矢野浩二 α
高校3年生 佐々木裕也 α
高校1年生 赤城要 Ω
赤城要は運命の番である両親に憧れ、両親が出会った高校に入学します。
自分も両親の様に運命の番が欲しいと思っています。
そして高校の入学式で出会った矢野浩二に、淡い感情を抱き始めるようになります。
でもあるきっかけを基に、佐々木裕也と出会います。
彼こそが要の探し続けた運命の番だったのです。
そして3人の運命が絡み合って、それぞれが、それぞれの選択をしていくと言うお話です。
🥕おしどり夫婦として12年間の結婚生活を過ごしてきたが一波乱あり、妻は夫を誰かに譲りたくなるのだった。
設楽理沙
ライト文芸
☘ 累計ポイント/ 190万pt 超えました。ありがとうございます。
―― 備忘録 ――
第8回ライト文芸大賞では大賞2位ではじまり2位で終了。 最高 57,392 pt
〃 24h/pt-1位ではじまり2位で終了。 最高 89,034 pt
◇ ◇ ◇ ◇
紳士的でいつだって私や私の両親にやさしくしてくれる
素敵な旦那さま・・だと思ってきたのに。
隠された夫の一面を知った日から、眞奈の苦悩が
始まる。
苦しくて、悲しくてもののすごく惨めで・・
消えてしまいたいと思う眞奈は小さな子供のように
大きな声で泣いた。
泣きながらも、よろけながらも、気がつけば
大地をしっかりと踏みしめていた。
そう、立ち止まってなんていられない。
☆-★-☆-★+☆-★-☆-★+☆-★-☆-★
2025.4.19☑~
今宵、薔薇の園で
天海月
恋愛
早世した母の代わりに妹たちの世話に励み、婚期を逃しかけていた伯爵家の長女・シャーロットは、これが最後のチャンスだと思い、唐突に持ち込まれた気の進まない婚約話を承諾する。
しかし、一か月も経たないうちに、その話は先方からの一方的な申し出によって破談になってしまう。
彼女は藁にもすがる思いで、幼馴染の公爵アルバート・グレアムに相談を持ち掛けるが、新たな婚約者候補として紹介されたのは彼の弟のキースだった。
キースは長年、シャーロットに思いを寄せていたが、遠慮して距離を縮めることが出来ないでいた。
そんな弟を見かねた兄が一計を図ったのだった。
彼女はキースのことを弟のようにしか思っていなかったが、次第に彼の情熱に絆されていく・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる