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輪の中にある
山の石
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「お前たちの手助けをしてやろう。ディクト教には従いたくないのだろう?」
白髪の男はそう言う。
全身を隠すように着用している、薄汚れたこげ茶色のローブ。
それでも、その節くれだった手や、長い白髪で半分隠れている顔を見れば「痩せぎす」だとわかる。髪も肌も白いのに、目は黒く、見開かれているように見える。
「お前の力はわかった。その石のゴーレムを貸してくれるのか?」
痩せぎすの男は何故か笑う。
「はは、違うとも。もっといいものだ」
「お前の望みはなんだ?我らの森の神とも山の神とも無縁であろう。何がしたい?なぜ手を貸すのだ?」
そうだ。この男は突然現れて、ディクト教に改宗せよという武力集団を蹴散らした。
我らが争いをしている場に現れ、石のゴーレムを引きつれ、我らを守るようにしながら。
「森の民には興味があるのだ。そしてお前たちはもっと戦えるはずだ。それを支援したいのだよ。だめかね?それと、ついでというか、君たちに平穏が訪れたら、少し山の石をコイツにわけてやってくれるか?それが主目的なのだが、言い出しにくくてな」
無償と言うのなら疑うが、山の石か…
「そうか。神の山たるその欠片にも魂は宿っておる。しかし、我らだけでは…数には勝てぬ。報酬はいつ渡せばよい?どれだけだ?」
「くく…。いや、失礼。報酬は君たちが落ち着いた時に。量は手で持てる程度でかまわんよ」
またくる。
そう言い残して痩せぎすの男は去っていった。
意識を拾い集め、立ち上がろうとするが、立てない。
俺の体は、骨は、全て焼かれ灰になってしまったのか?
『炎の国』と言っていたような気がするが。
──その記憶が霧散し、現実の意識が戻ってくる。
気力をふり絞り、手を地面に突き再度立ち上がる。
そこは、森の中だった。
鬱蒼と茂るジャングルの光景だ。
体中に絡まるつる草を引き裂く。
骨と言う骨に絡まり、あばら骨の間からは、若木が顔を出している。
俺は焼かれて灰になったのに、よみがえったのか?
全く理解できないが、体を取り戻した。
以前と同じ「骨」のような気がする。
急速に意識も冴え渡ってきた。
峻険な岩肌を背に山を下る。
深い森はツタやシダが多く、骨の足に絡まり思うように進めない。
特に何か目的がある訳でもない。
あの時と同じように、ゆっくりと山を下り、家に帰ればいい。
…どこに俺の家はあるのだ?
自身の記憶の渦に飲まれかかったが「まあ、いいか」という思いが強くなる。
そして、先ほどの記憶の驚愕など、初めからなかったように気持ちは凪いでゆく。
徐々に赤く変わる視界。
緑の葉も茶色い樹木も、空も山も赤く染まっていく。
「生者め。許さん」
その思いを胸に、赤い人影に向かう。
木の上に潜む生者がいる。
五・六・七人か。
そして、向こうから向かってくる赤い影は十程か。
生者を発見したが、何か様子がおかしいと思い、草むらに潜んでいた。
今すぐにでも、襲い掛かり殺したいと思う衝動と、震え出す全身を抑え込み気配を消した。
地上を歩き、こちらに来ているのはディクト教の兵士か。
紋章が入った盾が見えた。
そして、木の上に潜んでいる者たちは、獣の皮を加工したような衣服だ。
あれならば、獣の匂いで気配を消せるのか。
両者の距離が近付く。
突如、ディクトの兵の二人が、木から垂れ下がったつる草に絡め取られ宙に浮く。
残った地上の兵士は「敵襲」と慌てているが、その足にも草がまとわりついているようで、弓の的になり次々に倒れていく。
俺は、兵士から飛び散る血と絶叫を聞き、我慢ならずに飛び出す。
やつらはまだ生きている、とどめを刺さねばと。
背後から飛来する矢は骨の体を通過する。
それを無視し、倒れる兵士に駆け寄る。
呻く兵士の頭を兜ごと、大きく振りかぶった足で蹴る。
ジワジワと赤から白に変色していく姿に喜びを覚えるが次だ。
腹に受けた矢が革鎧を貫通して呻いている兵士は、立ち上がる。
何かをわめいて手に持つ剣を振り回す。
しかし、後退しようとした足は、つる草に巻きつかれており、仰向けに転倒した。
剣を握り、俺に向けている。
そうだな、先ほどは「サッカー」だったから「野球」にするか。
足元に落ちている石を拾い上げた。
拳よりも大きい石を、両手で頭上に振り上げ兵士に投げつける。
三度、同じように「投球」すると、兵士の姿は白んでいった。
もう一人、生きている兵士がいたが、転がる剣を拾い、十数回叩きつけた。
宙に浮き、つる草に巻きつかれた兵士は二人とも、首を締められ死んでいた。
そして、木の上に潜む赤い影を見上げる。
次はお前たちだ。そう思ったのだが。
彼らは何を思ったのか、弓を下ろし、俺に叫びながら指示をする。
「奴らは先発部隊だ。向こうに本体がいる」
俺は指さされた方向を見ると、木々の間から煙が立ち上っているのが見えた。
ここで生者を逃して向こうに行ってみるか。
向こうには多くの生者がいる気配がある。
俺は僅かに逡巡した。
いいだろう。
次はお前たちだと、七人を順に指さし、煙の方へむかった。
崖の下で野営している奴らがいる。
簡素なテントが十ほど見える。
焚火を囲み、食事をしているのか。
赤茶けた崖だが、大きな葉をのびのびと伸ばす巨木も崖から生えている。
背後は深いジャングルだ。
今すぐに崖を駆け下りて襲い掛かるか。
体は「そうしろ、今すぐ」と言っている。
しかし
崖下までは二十メートルか。
赤い影は五十ほどか。
俺は石を集め、夜を待つ。
生者の「赤い気配」にわなわなと震えながら、石を集め積み上げた。
空を見れば、黒い月と白い月が共に半分の姿でならんでいる。
太陽は消えた。
俺はかがり火目掛けて石を投げ始めた。
拳前後の大きさの石を次々と投げおろす。
距離があり、コントロールが難しい。
テントに当たったり、見張りの兵士の足に当たったりしている。
つい、見張りの兵士を狙いたくなるが、光源を断ったほうが結果的に多くの生者を殺せるだろう。
そうして石を投げ続けていたが、ラッパが響き、テントから続々と人が出てくる。
崖はそこまで急斜面ではなく、兵士は昇ってくる。
その姿目掛けて石を投げる。まだ石の在庫は十分にある。
背後にも赤い影の気配を感じたが、やつらは兵士に向かって矢をいりだした。
崖を昇る兵士が悲鳴をあげながら落ちる。
下にいる兵士を巻き込み地に落ちて赤い花を咲かせていた。
「指揮官は無能か?位置的優位は完全に俺だろう」
カタカタとあごがなる。
石を投げ続けていると、兵士たちは崖のぼりをやめて隊列を整え盾を構えていた。
背後から矢の支援を確認し、崖を大きく迂回して兵士の後方に回り込む。
バカな兵士たちは、石や弓を警戒し、まだ盾を崖上方向に構え続けていた。
僅かに残るかがり火が揺らぐ。しかし、明るさは足りない。
兵士の背後に迫り、兜ごと首を捩じり、蹴り倒し、殴り、突く。兵士たちは混乱している。
崖の上からその姿を確認したのか、矢の勢いが強くなる。
落ちている矢を革鎧に握って差し、股間を蹴り上げ、頭を踏みしだく。
遮二無二に暴れながらも、兵士たちの数は減っていく。
残りが二十を切ったあたりから、森の中に逃げ込む兵士が出た。
一人が逃げると、バラバラと逃げ始める。
夜の森で俺から逃げられると思っているのか。
俺は追跡を始めた。
赤い影を追う。
月明りも届かない、真っ暗な森の中を満足に走れない兵士に追いつくのは容易だった。
後ろから殴り、蹴り、突く。
時に抱きつき倒し、頭突き、噛みつき、ひっかき、引き裂く。
逃げる兵士を追っていると、視界が開けた。
僅かに太陽が地上を斜めに照らしていた。
山を下りきり、森を抜けたのか。
その先に、赤い景色がばっと広がる。
眼前に大きく陣を敷いている大量の兵士が目に入る。
大量の赤い影が蠢く。その中に、青い光が天に伸びるように揺らめく人影があった。
自身の頭蓋骨を砕いた、あのモンクと同じように。
地の底から湧き上がるような怒りと、無いはずの内臓が煮えるような衝動が全身を包み、待ち構えている兵士たちに突撃をした。
がむしゃらに戦う。
しかし
白い光が飛来し、咄嗟に防御した腕に当たった。
光の玉は弾け、腕が消滅した。
浄化の魔法か!
その魔法が飛んできた方向を見ると、赤い体から青い光が滲んでいる。
その方向に踏み出した。だが、盾を構えた兵士に取り囲まれ、押し倒されると、白い服を着た青く光るヤツが頭に触れた。
「不浄なる者よ、消えなさい」
その言葉を最後に、俺の意識は、空に舞った。
しかし、空に舞う俺の意識は薄れてはいたが、見た。
数体のスケルトンを引きつれた、痩せたローブ姿の男が森から現れたのを。
弓を構えたスケルトンは、兵士の盾を貫通する弓を連射し、瞬く間に前線を崩壊させると、剣や槍を持ったスケルトンが突貫する。
男と、魔法を唱える一体のスケルトンは毒霧のような魔法を広範囲に発している。
千人規模でいた部隊は、僅か数分で全滅していた。
なんだこの強さは。
そして、あの男に見覚えがある。赤く見えない生者の痩せた男。
岩のゴーレムに寄りかかり、長い白髪をかきあげ、男は空の俺を見た。
「やはり、浄化は天敵だな。次はもっと冷静に戦え」
そう言ってにやけている。
俺の意識はそこで四散した。
白髪の男はそう言う。
全身を隠すように着用している、薄汚れたこげ茶色のローブ。
それでも、その節くれだった手や、長い白髪で半分隠れている顔を見れば「痩せぎす」だとわかる。髪も肌も白いのに、目は黒く、見開かれているように見える。
「お前の力はわかった。その石のゴーレムを貸してくれるのか?」
痩せぎすの男は何故か笑う。
「はは、違うとも。もっといいものだ」
「お前の望みはなんだ?我らの森の神とも山の神とも無縁であろう。何がしたい?なぜ手を貸すのだ?」
そうだ。この男は突然現れて、ディクト教に改宗せよという武力集団を蹴散らした。
我らが争いをしている場に現れ、石のゴーレムを引きつれ、我らを守るようにしながら。
「森の民には興味があるのだ。そしてお前たちはもっと戦えるはずだ。それを支援したいのだよ。だめかね?それと、ついでというか、君たちに平穏が訪れたら、少し山の石をコイツにわけてやってくれるか?それが主目的なのだが、言い出しにくくてな」
無償と言うのなら疑うが、山の石か…
「そうか。神の山たるその欠片にも魂は宿っておる。しかし、我らだけでは…数には勝てぬ。報酬はいつ渡せばよい?どれだけだ?」
「くく…。いや、失礼。報酬は君たちが落ち着いた時に。量は手で持てる程度でかまわんよ」
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意識を拾い集め、立ち上がろうとするが、立てない。
俺の体は、骨は、全て焼かれ灰になってしまったのか?
『炎の国』と言っていたような気がするが。
──その記憶が霧散し、現実の意識が戻ってくる。
気力をふり絞り、手を地面に突き再度立ち上がる。
そこは、森の中だった。
鬱蒼と茂るジャングルの光景だ。
体中に絡まるつる草を引き裂く。
骨と言う骨に絡まり、あばら骨の間からは、若木が顔を出している。
俺は焼かれて灰になったのに、よみがえったのか?
全く理解できないが、体を取り戻した。
以前と同じ「骨」のような気がする。
急速に意識も冴え渡ってきた。
峻険な岩肌を背に山を下る。
深い森はツタやシダが多く、骨の足に絡まり思うように進めない。
特に何か目的がある訳でもない。
あの時と同じように、ゆっくりと山を下り、家に帰ればいい。
…どこに俺の家はあるのだ?
自身の記憶の渦に飲まれかかったが「まあ、いいか」という思いが強くなる。
そして、先ほどの記憶の驚愕など、初めからなかったように気持ちは凪いでゆく。
徐々に赤く変わる視界。
緑の葉も茶色い樹木も、空も山も赤く染まっていく。
「生者め。許さん」
その思いを胸に、赤い人影に向かう。
木の上に潜む生者がいる。
五・六・七人か。
そして、向こうから向かってくる赤い影は十程か。
生者を発見したが、何か様子がおかしいと思い、草むらに潜んでいた。
今すぐにでも、襲い掛かり殺したいと思う衝動と、震え出す全身を抑え込み気配を消した。
地上を歩き、こちらに来ているのはディクト教の兵士か。
紋章が入った盾が見えた。
そして、木の上に潜んでいる者たちは、獣の皮を加工したような衣服だ。
あれならば、獣の匂いで気配を消せるのか。
両者の距離が近付く。
突如、ディクトの兵の二人が、木から垂れ下がったつる草に絡め取られ宙に浮く。
残った地上の兵士は「敵襲」と慌てているが、その足にも草がまとわりついているようで、弓の的になり次々に倒れていく。
俺は、兵士から飛び散る血と絶叫を聞き、我慢ならずに飛び出す。
やつらはまだ生きている、とどめを刺さねばと。
背後から飛来する矢は骨の体を通過する。
それを無視し、倒れる兵士に駆け寄る。
呻く兵士の頭を兜ごと、大きく振りかぶった足で蹴る。
ジワジワと赤から白に変色していく姿に喜びを覚えるが次だ。
腹に受けた矢が革鎧を貫通して呻いている兵士は、立ち上がる。
何かをわめいて手に持つ剣を振り回す。
しかし、後退しようとした足は、つる草に巻きつかれており、仰向けに転倒した。
剣を握り、俺に向けている。
そうだな、先ほどは「サッカー」だったから「野球」にするか。
足元に落ちている石を拾い上げた。
拳よりも大きい石を、両手で頭上に振り上げ兵士に投げつける。
三度、同じように「投球」すると、兵士の姿は白んでいった。
もう一人、生きている兵士がいたが、転がる剣を拾い、十数回叩きつけた。
宙に浮き、つる草に巻きつかれた兵士は二人とも、首を締められ死んでいた。
そして、木の上に潜む赤い影を見上げる。
次はお前たちだ。そう思ったのだが。
彼らは何を思ったのか、弓を下ろし、俺に叫びながら指示をする。
「奴らは先発部隊だ。向こうに本体がいる」
俺は指さされた方向を見ると、木々の間から煙が立ち上っているのが見えた。
ここで生者を逃して向こうに行ってみるか。
向こうには多くの生者がいる気配がある。
俺は僅かに逡巡した。
いいだろう。
次はお前たちだと、七人を順に指さし、煙の方へむかった。
崖の下で野営している奴らがいる。
簡素なテントが十ほど見える。
焚火を囲み、食事をしているのか。
赤茶けた崖だが、大きな葉をのびのびと伸ばす巨木も崖から生えている。
背後は深いジャングルだ。
今すぐに崖を駆け下りて襲い掛かるか。
体は「そうしろ、今すぐ」と言っている。
しかし
崖下までは二十メートルか。
赤い影は五十ほどか。
俺は石を集め、夜を待つ。
生者の「赤い気配」にわなわなと震えながら、石を集め積み上げた。
空を見れば、黒い月と白い月が共に半分の姿でならんでいる。
太陽は消えた。
俺はかがり火目掛けて石を投げ始めた。
拳前後の大きさの石を次々と投げおろす。
距離があり、コントロールが難しい。
テントに当たったり、見張りの兵士の足に当たったりしている。
つい、見張りの兵士を狙いたくなるが、光源を断ったほうが結果的に多くの生者を殺せるだろう。
そうして石を投げ続けていたが、ラッパが響き、テントから続々と人が出てくる。
崖はそこまで急斜面ではなく、兵士は昇ってくる。
その姿目掛けて石を投げる。まだ石の在庫は十分にある。
背後にも赤い影の気配を感じたが、やつらは兵士に向かって矢をいりだした。
崖を昇る兵士が悲鳴をあげながら落ちる。
下にいる兵士を巻き込み地に落ちて赤い花を咲かせていた。
「指揮官は無能か?位置的優位は完全に俺だろう」
カタカタとあごがなる。
石を投げ続けていると、兵士たちは崖のぼりをやめて隊列を整え盾を構えていた。
背後から矢の支援を確認し、崖を大きく迂回して兵士の後方に回り込む。
バカな兵士たちは、石や弓を警戒し、まだ盾を崖上方向に構え続けていた。
僅かに残るかがり火が揺らぐ。しかし、明るさは足りない。
兵士の背後に迫り、兜ごと首を捩じり、蹴り倒し、殴り、突く。兵士たちは混乱している。
崖の上からその姿を確認したのか、矢の勢いが強くなる。
落ちている矢を革鎧に握って差し、股間を蹴り上げ、頭を踏みしだく。
遮二無二に暴れながらも、兵士たちの数は減っていく。
残りが二十を切ったあたりから、森の中に逃げ込む兵士が出た。
一人が逃げると、バラバラと逃げ始める。
夜の森で俺から逃げられると思っているのか。
俺は追跡を始めた。
赤い影を追う。
月明りも届かない、真っ暗な森の中を満足に走れない兵士に追いつくのは容易だった。
後ろから殴り、蹴り、突く。
時に抱きつき倒し、頭突き、噛みつき、ひっかき、引き裂く。
逃げる兵士を追っていると、視界が開けた。
僅かに太陽が地上を斜めに照らしていた。
山を下りきり、森を抜けたのか。
その先に、赤い景色がばっと広がる。
眼前に大きく陣を敷いている大量の兵士が目に入る。
大量の赤い影が蠢く。その中に、青い光が天に伸びるように揺らめく人影があった。
自身の頭蓋骨を砕いた、あのモンクと同じように。
地の底から湧き上がるような怒りと、無いはずの内臓が煮えるような衝動が全身を包み、待ち構えている兵士たちに突撃をした。
がむしゃらに戦う。
しかし
白い光が飛来し、咄嗟に防御した腕に当たった。
光の玉は弾け、腕が消滅した。
浄化の魔法か!
その魔法が飛んできた方向を見ると、赤い体から青い光が滲んでいる。
その方向に踏み出した。だが、盾を構えた兵士に取り囲まれ、押し倒されると、白い服を着た青く光るヤツが頭に触れた。
「不浄なる者よ、消えなさい」
その言葉を最後に、俺の意識は、空に舞った。
しかし、空に舞う俺の意識は薄れてはいたが、見た。
数体のスケルトンを引きつれた、痩せたローブ姿の男が森から現れたのを。
弓を構えたスケルトンは、兵士の盾を貫通する弓を連射し、瞬く間に前線を崩壊させると、剣や槍を持ったスケルトンが突貫する。
男と、魔法を唱える一体のスケルトンは毒霧のような魔法を広範囲に発している。
千人規模でいた部隊は、僅か数分で全滅していた。
なんだこの強さは。
そして、あの男に見覚えがある。赤く見えない生者の痩せた男。
岩のゴーレムに寄りかかり、長い白髪をかきあげ、男は空の俺を見た。
「やはり、浄化は天敵だな。次はもっと冷静に戦え」
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