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強者と狂者
ネクロマンサー 前編
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ギド・セルヴァンは、聖王都郊外の中流家庭の次男として生まれた。
両親は調理器具をメインに商売をする雑貨商であり、兄とギドの四人の家庭だった。
両親も兄も平凡だったが、幼少期にギドは魔力に目覚めた。
無表情で手のひらから炎を出す子供に両親は驚き、神殿に連れて行くと魔法学院に連れていかれた。
彼は幼いながら、魔法の能力が高いと認められ、特待生として魔法学院に通い始めた。
その地域での魔法学院の同学年の生徒は五十人ほどだった。
彼は他の生徒と同じように座学の授業を受けた。
そして、ほとんどの生徒がはじめて魔法を行使する、実技の授業の事。
魔力の込められた杖を握り、杖の先から飛び出す火の玉に興奮して騒ぐ生徒たち。
彼はその同級生を冷ややかな目で見ていた。
「大した事ではないのにな」と。
卓越した能力に注目した魔法学院の教育者たちは、彼を聖王都直轄の魔法学院への推薦状を書いた。
それを知ると、彼はその場でそれを承諾した。家族への相談も無しに。
彼は、家族に連れられて聖王都を訪れ、魔法学院の門を叩く。
そして特待生の権利を獲得し、寮生活を始めた。
彼は十代前半にして、親元を離れた生活を始める。
「両親は、何事にも無関心で何を考えているかわからない我が子が、手から離れてむしろ安堵していたのかもしれないな」
漠然とだが、ギドはそんな風に感じていた。
社交的でもなく、どことなく大人びた印象を持たれ、同学年の学友などもほとんどできなかった。
しかし、その聖王都の魔法学院にはそうした生徒が多かった。
あまり友達付き合いを必要としない、慣れ合わなくていい、そうした環境が彼には心地よかった。
王都の外れだが、広大な土地を持つ聖王国立魔法学院。
そこでは、基礎的な魔法の実技訓練から、軍の動き方などの授業もあった。
国家の支援を得て設立された魔法学院は、結局の所は国に利益をもたらせといった内容を過分に含んでいた。
遠征では水を生み出し、火を起こすことが重要。
魔法で敵を焼き払うだけではなく、相手の魔法に備えて土の壁を作ったり、塹壕を掘ったり、どこか「戦争」を匂わせるような授業もあった。
教職員を交えて、「実戦さながらの訓練」といいつつ、負傷者一人もでないのにどこが「実戦さながら」なのかには疑問をおぼえたが。
彼と同時期にその学院に入学した生徒がいた。
「天才」と教員に紹介された彼の名はアルフレッド。
とある大貴族の子供と噂されていた。
そうして、一部の生徒たちからは「坊ちゃん」などと陰で噂されていた。
しかし、天才と言われるのは伊達ではなかった。
教員を超える魔法の技を披露したり、知識があったりした。
実技の魔法の練習に関しては「坊ちゃんを手本にしたほうがいい」と生徒たちにも言われるほどだった。
授業の終わった後に、ギドは図書室で自習をする事がよくあった。
学園の敷地内の寮に住む彼は、時間を見つけては図書室で本を読むことが多かった。
王都魔法学院に入学して数年が経過していたころ。
そんなある日、彼はいつも通りに図書室で本を見ながら魔法の幾何学模様を紙に移していた。
その背後から覗き込む存在が、後ろにたった。
坊ちゃんだった。
ギドとアルフレッドは、同じ教室にいたこともあったが、会話したことなどなかった。
しかし、坊ちゃんはギドに話しかけてきた。
「君は何か他の子と違うね。僕には色々と権限があるんだ。そして秘密を知っている」
なんとなく、興味が湧いたギドは、坊ちゃんについていってみることにした。
「この先、生徒の進入を禁ずる」と書かれた通路を堂々と歩く。
すれ違う教員や職員が道を開けて頭を下げている。
ギドはそんな姿を冷ややかに見ていた。
そのギドの姿を見た坊ちゃんは、笑いながらギドの肩に手を回す。
「やっぱり君は素晴らしいね。僕たちは友達になれそうだ」
馴れ馴れしいな、とは思ったが、不思議と不快感は湧かなかった。
お互いに「ギド」と「アル」と呼び合うのに、さほど時間はかからなかった。
そうして、魔法学院内の探検が始まった。
特別に待ち合わせなどせず、図書室で顔を合わせると、アルが声をかけて始まる冒険。
二人とも、敷地内の寮に住んでいた。
他の学友と遊びに行ったり食事に行ったり、家族が面会に来たりと言った事が全くない二人に、冒険をする時間は十分にあった。
それでも王都の魔法学院は広大な敷地とたくさんの建物を持っていた。
アルと一緒に職員室に入ってみたり、時には職員の宿舎まで遠征したりもした。
「魔法道具資料室」は面白かった。
見たこともないような道具が散乱し、何に使うかわからない道具に触れて電気が体を走ったこともあった。
しかし、誰もアルを咎めなかった。
ある時、アルはギドに問いかけた。
「ギド。君は僕が何者なのか気にならないのか?何も聞かないんだな」
ギドは首をかしげる。
貴族や王族なのか?しかし、それには興味なかった。
「アルはアルだろう?肩書や身分の方が君を蝕んでいるのか?」
「はは、はははっ。ありがとう、ギド。君のような人にもっと早く会いたかったな。いや、今に感謝しよう。ここには、過去に魔法犯罪で使われた物や押収品、王都周辺で発見された『禁忌の品』が隠されているらしいんだ。王城に隠すのは憚られたようだ。神殿の人もうるさいようだし」
ギドの肩の手を起き、真剣な表情のアル。
「一緒に探さないか?もちろん他言無用だ。僕もこの話しは君にしかしていないし、今後誰にもいわない。どうだ?」
ギドは無言で頷いた。
そうして探検をしていると、遂に地下室の入口を見つけた。
学校で使う資料室の、書棚の下に隠されており、パッと見はわからない細工が施されていた。
二人で汗を書いて書棚をどけて地下室へ入る。
しかし、大きな鉄の扉には鍵がかかっていた。
「鍵か。一度、父さんに聞いてみるよ」
アルは神妙な顔でそう言った。
数日後、アルに誘われて地下室へ向かった。
鍵を開け、重い鉄の扉を開く。
埃やカビの匂いが立ち込めた、こもった空気の臭いがした。
室内は真っ暗だったが、授業で聞いて自習をしていた灯りの魔法をアルは唱えた。
連動するように、室内の魔法の灯りが点灯したが、薄暗さが濃くなったような感覚がする。
以前に見た「魔法道具資料室」と同じように、よくわからないものが散乱していた。
しかし、埃の中に比較的新しい足跡も見て取れた。
大量の書籍が本棚から溢れ、床に平積みで置かれていた。
その他には、何かの動物の骨や頭蓋骨、儀式用の短剣や煙を吸うパイプのような物。
アルもギドも興味本位に色々と見て回った。
しかし、二人は書物を読み漁るようになった。
動物の皮に何かの記号を組み合わせたものが書かれたもの。大きな葉っぱに傷がついているだけにしか見えないもの。細い竹になめくじが這った後ではないかとしか思えないものも書物の上に置いてあった。
毎日のように、ギドとアルはそこでかび臭い本を読んでいた。
他の部屋から椅子とランプを持ち込み、休日には飲食物まで持って居座っていた。
「僕はね、時空魔法や空間魔法に興味があるんだ。だから、もしそう言ったものをギドが見つけたら教えてほしい。ギドには何か手に入れたい知識はあるかい?」
ギドは「そのような物を見かけたら教える。自分は特別には何もない」と答えた。
「過去には、この世界ではない場所にも転移できるような魔法が存在したようだ。転移陣などとは比較にならないような魔法なのだろう。待っていろよ宮廷の魔術師め…」
熱っぽくそのような事を語るアルフレッド。
ギドにはそのアルフレッドの言葉は理解できたし、彼が魔法をしっかり勉強し理解し鍛錬していることもわかった。彼は「天才」ではなく、おしみない「努力」をしている事を知っていた。
しかし、その熱意をあまり理解できなかった。
その後も二人は「秘密の書庫」と名付けた部屋の捜索を続けていた。
一生かかっても読み切れないのではと思うような量の書籍類の数だった。
言語もわからないものが多く、正規の図書室で外国語や古代語の本を持ち込んだりもした。
中には「魔導書は魔力で読むものだ」と書かれた後には、落書きだらけのページばかりのものもあった。アルもギドも魔力は同学年どころか、学院の教員と比肩できるレベルだったが、その魔導書は落書きだろうとの結論に至った。
「これは面白そうだけど、僕の好みではないや。君が読んでみるかい?」
そう言って獣の皮で装飾されたような、分厚い黒い本を手渡された。
何故かひんやりと感じるその本は、開くとカビや埃の他に血生臭さを感じた。
「死霊術」の本のようだった。
「持っていきなよ。僕も何冊か持って行ってるし。大丈夫大丈夫。誰も僕に文句は言わないさ。それに、真理を得る為には、大抵の事は些細な事だと教員たちもよく言うではないか」
それもそうかと、その後も気になった本の数冊を寮の自室に持ち帰った。
それらの本は本棚でしばらく眠る。
ギドはアルとの冒険や捜索が忙しかった。
そして、共に何かを探し、本を読み耽り、色々と語り合うことが楽しかった。
しかし、そんな二人の冒険に終止符が打たれる。
アルフレッドは学院を去る事になったのだ。
家の事情のようだ。近頃、社会情勢が戦争する方向に進んでいると教員は言っていた。
「ギド。僕の唯一の友達。僕は手に入れた。また、あの場所に、あの時間に」
そう言って去っていった。
後に知る事になのだが、アルフレッドは現国王の弟の子息だったようだ。
なんでも王の弟は、王城に現王と一緒に居住していたようだが、情勢が不安定な地域の平定の為に自身の領地に戻るだか、引っ越すだか、そんなような内容だった。
そんな事には興味がないが、アルフレッドとの探検を失ったことは悲しかった。
両親は調理器具をメインに商売をする雑貨商であり、兄とギドの四人の家庭だった。
両親も兄も平凡だったが、幼少期にギドは魔力に目覚めた。
無表情で手のひらから炎を出す子供に両親は驚き、神殿に連れて行くと魔法学院に連れていかれた。
彼は幼いながら、魔法の能力が高いと認められ、特待生として魔法学院に通い始めた。
その地域での魔法学院の同学年の生徒は五十人ほどだった。
彼は他の生徒と同じように座学の授業を受けた。
そして、ほとんどの生徒がはじめて魔法を行使する、実技の授業の事。
魔力の込められた杖を握り、杖の先から飛び出す火の玉に興奮して騒ぐ生徒たち。
彼はその同級生を冷ややかな目で見ていた。
「大した事ではないのにな」と。
卓越した能力に注目した魔法学院の教育者たちは、彼を聖王都直轄の魔法学院への推薦状を書いた。
それを知ると、彼はその場でそれを承諾した。家族への相談も無しに。
彼は、家族に連れられて聖王都を訪れ、魔法学院の門を叩く。
そして特待生の権利を獲得し、寮生活を始めた。
彼は十代前半にして、親元を離れた生活を始める。
「両親は、何事にも無関心で何を考えているかわからない我が子が、手から離れてむしろ安堵していたのかもしれないな」
漠然とだが、ギドはそんな風に感じていた。
社交的でもなく、どことなく大人びた印象を持たれ、同学年の学友などもほとんどできなかった。
しかし、その聖王都の魔法学院にはそうした生徒が多かった。
あまり友達付き合いを必要としない、慣れ合わなくていい、そうした環境が彼には心地よかった。
王都の外れだが、広大な土地を持つ聖王国立魔法学院。
そこでは、基礎的な魔法の実技訓練から、軍の動き方などの授業もあった。
国家の支援を得て設立された魔法学院は、結局の所は国に利益をもたらせといった内容を過分に含んでいた。
遠征では水を生み出し、火を起こすことが重要。
魔法で敵を焼き払うだけではなく、相手の魔法に備えて土の壁を作ったり、塹壕を掘ったり、どこか「戦争」を匂わせるような授業もあった。
教職員を交えて、「実戦さながらの訓練」といいつつ、負傷者一人もでないのにどこが「実戦さながら」なのかには疑問をおぼえたが。
彼と同時期にその学院に入学した生徒がいた。
「天才」と教員に紹介された彼の名はアルフレッド。
とある大貴族の子供と噂されていた。
そうして、一部の生徒たちからは「坊ちゃん」などと陰で噂されていた。
しかし、天才と言われるのは伊達ではなかった。
教員を超える魔法の技を披露したり、知識があったりした。
実技の魔法の練習に関しては「坊ちゃんを手本にしたほうがいい」と生徒たちにも言われるほどだった。
授業の終わった後に、ギドは図書室で自習をする事がよくあった。
学園の敷地内の寮に住む彼は、時間を見つけては図書室で本を読むことが多かった。
王都魔法学院に入学して数年が経過していたころ。
そんなある日、彼はいつも通りに図書室で本を見ながら魔法の幾何学模様を紙に移していた。
その背後から覗き込む存在が、後ろにたった。
坊ちゃんだった。
ギドとアルフレッドは、同じ教室にいたこともあったが、会話したことなどなかった。
しかし、坊ちゃんはギドに話しかけてきた。
「君は何か他の子と違うね。僕には色々と権限があるんだ。そして秘密を知っている」
なんとなく、興味が湧いたギドは、坊ちゃんについていってみることにした。
「この先、生徒の進入を禁ずる」と書かれた通路を堂々と歩く。
すれ違う教員や職員が道を開けて頭を下げている。
ギドはそんな姿を冷ややかに見ていた。
そのギドの姿を見た坊ちゃんは、笑いながらギドの肩に手を回す。
「やっぱり君は素晴らしいね。僕たちは友達になれそうだ」
馴れ馴れしいな、とは思ったが、不思議と不快感は湧かなかった。
お互いに「ギド」と「アル」と呼び合うのに、さほど時間はかからなかった。
そうして、魔法学院内の探検が始まった。
特別に待ち合わせなどせず、図書室で顔を合わせると、アルが声をかけて始まる冒険。
二人とも、敷地内の寮に住んでいた。
他の学友と遊びに行ったり食事に行ったり、家族が面会に来たりと言った事が全くない二人に、冒険をする時間は十分にあった。
それでも王都の魔法学院は広大な敷地とたくさんの建物を持っていた。
アルと一緒に職員室に入ってみたり、時には職員の宿舎まで遠征したりもした。
「魔法道具資料室」は面白かった。
見たこともないような道具が散乱し、何に使うかわからない道具に触れて電気が体を走ったこともあった。
しかし、誰もアルを咎めなかった。
ある時、アルはギドに問いかけた。
「ギド。君は僕が何者なのか気にならないのか?何も聞かないんだな」
ギドは首をかしげる。
貴族や王族なのか?しかし、それには興味なかった。
「アルはアルだろう?肩書や身分の方が君を蝕んでいるのか?」
「はは、はははっ。ありがとう、ギド。君のような人にもっと早く会いたかったな。いや、今に感謝しよう。ここには、過去に魔法犯罪で使われた物や押収品、王都周辺で発見された『禁忌の品』が隠されているらしいんだ。王城に隠すのは憚られたようだ。神殿の人もうるさいようだし」
ギドの肩の手を起き、真剣な表情のアル。
「一緒に探さないか?もちろん他言無用だ。僕もこの話しは君にしかしていないし、今後誰にもいわない。どうだ?」
ギドは無言で頷いた。
そうして探検をしていると、遂に地下室の入口を見つけた。
学校で使う資料室の、書棚の下に隠されており、パッと見はわからない細工が施されていた。
二人で汗を書いて書棚をどけて地下室へ入る。
しかし、大きな鉄の扉には鍵がかかっていた。
「鍵か。一度、父さんに聞いてみるよ」
アルは神妙な顔でそう言った。
数日後、アルに誘われて地下室へ向かった。
鍵を開け、重い鉄の扉を開く。
埃やカビの匂いが立ち込めた、こもった空気の臭いがした。
室内は真っ暗だったが、授業で聞いて自習をしていた灯りの魔法をアルは唱えた。
連動するように、室内の魔法の灯りが点灯したが、薄暗さが濃くなったような感覚がする。
以前に見た「魔法道具資料室」と同じように、よくわからないものが散乱していた。
しかし、埃の中に比較的新しい足跡も見て取れた。
大量の書籍が本棚から溢れ、床に平積みで置かれていた。
その他には、何かの動物の骨や頭蓋骨、儀式用の短剣や煙を吸うパイプのような物。
アルもギドも興味本位に色々と見て回った。
しかし、二人は書物を読み漁るようになった。
動物の皮に何かの記号を組み合わせたものが書かれたもの。大きな葉っぱに傷がついているだけにしか見えないもの。細い竹になめくじが這った後ではないかとしか思えないものも書物の上に置いてあった。
毎日のように、ギドとアルはそこでかび臭い本を読んでいた。
他の部屋から椅子とランプを持ち込み、休日には飲食物まで持って居座っていた。
「僕はね、時空魔法や空間魔法に興味があるんだ。だから、もしそう言ったものをギドが見つけたら教えてほしい。ギドには何か手に入れたい知識はあるかい?」
ギドは「そのような物を見かけたら教える。自分は特別には何もない」と答えた。
「過去には、この世界ではない場所にも転移できるような魔法が存在したようだ。転移陣などとは比較にならないような魔法なのだろう。待っていろよ宮廷の魔術師め…」
熱っぽくそのような事を語るアルフレッド。
ギドにはそのアルフレッドの言葉は理解できたし、彼が魔法をしっかり勉強し理解し鍛錬していることもわかった。彼は「天才」ではなく、おしみない「努力」をしている事を知っていた。
しかし、その熱意をあまり理解できなかった。
その後も二人は「秘密の書庫」と名付けた部屋の捜索を続けていた。
一生かかっても読み切れないのではと思うような量の書籍類の数だった。
言語もわからないものが多く、正規の図書室で外国語や古代語の本を持ち込んだりもした。
中には「魔導書は魔力で読むものだ」と書かれた後には、落書きだらけのページばかりのものもあった。アルもギドも魔力は同学年どころか、学院の教員と比肩できるレベルだったが、その魔導書は落書きだろうとの結論に至った。
「これは面白そうだけど、僕の好みではないや。君が読んでみるかい?」
そう言って獣の皮で装飾されたような、分厚い黒い本を手渡された。
何故かひんやりと感じるその本は、開くとカビや埃の他に血生臭さを感じた。
「死霊術」の本のようだった。
「持っていきなよ。僕も何冊か持って行ってるし。大丈夫大丈夫。誰も僕に文句は言わないさ。それに、真理を得る為には、大抵の事は些細な事だと教員たちもよく言うではないか」
それもそうかと、その後も気になった本の数冊を寮の自室に持ち帰った。
それらの本は本棚でしばらく眠る。
ギドはアルとの冒険や捜索が忙しかった。
そして、共に何かを探し、本を読み耽り、色々と語り合うことが楽しかった。
しかし、そんな二人の冒険に終止符が打たれる。
アルフレッドは学院を去る事になったのだ。
家の事情のようだ。近頃、社会情勢が戦争する方向に進んでいると教員は言っていた。
「ギド。僕の唯一の友達。僕は手に入れた。また、あの場所に、あの時間に」
そう言って去っていった。
後に知る事になのだが、アルフレッドは現国王の弟の子息だったようだ。
なんでも王の弟は、王城に現王と一緒に居住していたようだが、情勢が不安定な地域の平定の為に自身の領地に戻るだか、引っ越すだか、そんなような内容だった。
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