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強者と狂者
エッジ 後編
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砂漠でよみがえり、かつて所属していた傭兵団に守られた商隊を滅ぼした。
傭兵は全部で七人いた。
間髪入れない見事な連携だった。
だが、俺の身体は疲労しないし、少々の斬撃や刺突ではなんともなかった。
商人も勢いで全員切り倒してしまったが、面白くないな。手ごたえがない。
真っ赤な視界が消え、景色が鮮明になって気分は良かった。
さて、どうするか。
自身の武器を確認する。
二回ほど、相手の武器ごと、その体を切断して無理をさせてしまった。
二本の曲剣の数カ所の刃こぼれが見てとれた。
ふと、自身の肉体が滅ぶ寸前を思い出す。
あの時、あの剣士の剣筋が見えた。
確かに見えていた。
忌々しい動かない体でも、かわせたのだ。
はじめは、幸運や、一か八かの読みが当たったのかとは思っていたが、違う。
思い通りに動かない俺の体は、どう言う訳か、打ち込まれる箇所が直感でわかり、どう言う道筋で剣が走ってくるのか見えた。
そして、どこに隙があり、どう撃てば切れるかも。
それはこの体になっても変わっていない。
いや、あの時よりも鮮明にわかる。
傭兵団の二人三人の同時攻撃ですら、僅かに身を削られるだけで済んだのは、以前の俺には無理だったはずだ。
はは、あははは
俺は、俺はもっと強くなる。
そして強い相手と戦える。
こんなに嬉しい事があるか。
とりあえず、武器は使い捨て、倒した相手の物を使うか。
どうせなら、強い相手と丈夫な武器を探そう。
俺に応えてくれる強敵と良い剣だ。
防具など不要。だが、鞘やベルトは武器の為には必要だ。
倒した傭兵の武器を漁り、使わないものは死体に刺して立てた。
こうしておけば「こいつの剣は見た」とわかりやすい。墓標みたいで、カッコいいしな。
剣はいまいちの品質だが、短刀に業物を見つけた。
あの、俺を倒した剣士の剣も探すか。
俺を斬ったあの業物の剣。
まだ、あの場所に打ち捨てられているはずだ。
剣士の死体はすぐに見つかった。
サソリみたいな大きな虫がワラワラと数匹で死体を貪っていた。
俺の体に残る腐肉にも興味を示して向かってくる。
生き物は、皆赤いのだな
そう思った。
一匹だけ切って捨てた。
だが、もう虫に食われようと、あまり気にならなかった。
「俺もお前も、砂漠の砂に戻って風に吹かれるだけだ」
声は出なかったが、そう剣士に声をかけて、今だに握っている剣と鞘をしゃがみ込み、拾う。
「もらうぞ。返してほしければ、立ち上がれ。そして、また、戦おうぜ!」
強かったな、この男。
世の中には、まだまだいるはずだ。
まだ見ぬ強者が。
そうして放浪した。
いくつかの町だの村だのは滅ぼしてしまったかもしれない。
肉を失って、骨も乾燥したのか、体が軽い。軽すぎる。
踏み込んでも、斬撃が軽くなりすぎている。
また、やり直しだ。
体の動かし方、剣の握り方、踏み込み、腕の振り。
だけど
楽しいな
鍛錬して、戦う。
ただ、ただ、それだけのこと。
この体は、砕けても時間をかければ元に戻る。
短剣を振り、両手で持つ長大な剣を振り回し、スタンダードな直剣を握り、時に体術も混ぜる。
だけど、やっぱり俺には曲剣だな。
しっくりくる。
メイスだの斧だの槍だのは性に合わん。
俺を倒す相手に、早く会いたいな。
どれだけ彷徨ったのか。
何人と剣を交えたか。
あれから、俺がよみがえってから何年たったのか。
もう覚えてないな。
軍人たちの紋章はコロコロ変わるのだな。
そんなことに興味はない。
だが、戦う者は変わらない。
強者を探していたが、なぜか墓地にいる事が多かった。
墓地は綺麗だろうと、廃れていようと、落ち着く場所だった。
しかし、砂漠では砂丘に寝かして弔うのに、この辺りでは土に埋めるのだな。息苦しさを感じるな。
新しい剣を手に入れたら、墓地に行った。
墓地で剣を振り、体に馴染ませ、試し切りに行く。
いつのまにか、そんなことを繰り返していた。
強者と武器を探す事には変わっていないがな。
いくつかの魔法の武器を手に入れた。
たいして強くもないヤツが持っていたりする。
金持ちが道楽で持っていたりもした。
おかげで強くなれたが…ちょっと別の問題が出てきた。
魔法の武器を使いはじめた頃から、生者が弱くなった。
炎の剣は、かすっただけで相手が燃え上がる。
雷の短刀を投げれば、回避もせずに痙攣して倒れる。
俺が、強くなりすぎたのか?
稀にいる強い生者すら、最近は見かけない。
わからん
魔法の武器は封印するか…
いや、そうだな、生者に、人間にこだわる必要はないな。
強い相手、モンスターでも、アンデッドでも、ドラゴンとかいいかもな。
また新しい戦い方を鍛錬するか。
はは
楽しみだな
まだ見ぬ強敵たちよ
戦いを楽しもうぜ
傭兵は全部で七人いた。
間髪入れない見事な連携だった。
だが、俺の身体は疲労しないし、少々の斬撃や刺突ではなんともなかった。
商人も勢いで全員切り倒してしまったが、面白くないな。手ごたえがない。
真っ赤な視界が消え、景色が鮮明になって気分は良かった。
さて、どうするか。
自身の武器を確認する。
二回ほど、相手の武器ごと、その体を切断して無理をさせてしまった。
二本の曲剣の数カ所の刃こぼれが見てとれた。
ふと、自身の肉体が滅ぶ寸前を思い出す。
あの時、あの剣士の剣筋が見えた。
確かに見えていた。
忌々しい動かない体でも、かわせたのだ。
はじめは、幸運や、一か八かの読みが当たったのかとは思っていたが、違う。
思い通りに動かない俺の体は、どう言う訳か、打ち込まれる箇所が直感でわかり、どう言う道筋で剣が走ってくるのか見えた。
そして、どこに隙があり、どう撃てば切れるかも。
それはこの体になっても変わっていない。
いや、あの時よりも鮮明にわかる。
傭兵団の二人三人の同時攻撃ですら、僅かに身を削られるだけで済んだのは、以前の俺には無理だったはずだ。
はは、あははは
俺は、俺はもっと強くなる。
そして強い相手と戦える。
こんなに嬉しい事があるか。
とりあえず、武器は使い捨て、倒した相手の物を使うか。
どうせなら、強い相手と丈夫な武器を探そう。
俺に応えてくれる強敵と良い剣だ。
防具など不要。だが、鞘やベルトは武器の為には必要だ。
倒した傭兵の武器を漁り、使わないものは死体に刺して立てた。
こうしておけば「こいつの剣は見た」とわかりやすい。墓標みたいで、カッコいいしな。
剣はいまいちの品質だが、短刀に業物を見つけた。
あの、俺を倒した剣士の剣も探すか。
俺を斬ったあの業物の剣。
まだ、あの場所に打ち捨てられているはずだ。
剣士の死体はすぐに見つかった。
サソリみたいな大きな虫がワラワラと数匹で死体を貪っていた。
俺の体に残る腐肉にも興味を示して向かってくる。
生き物は、皆赤いのだな
そう思った。
一匹だけ切って捨てた。
だが、もう虫に食われようと、あまり気にならなかった。
「俺もお前も、砂漠の砂に戻って風に吹かれるだけだ」
声は出なかったが、そう剣士に声をかけて、今だに握っている剣と鞘をしゃがみ込み、拾う。
「もらうぞ。返してほしければ、立ち上がれ。そして、また、戦おうぜ!」
強かったな、この男。
世の中には、まだまだいるはずだ。
まだ見ぬ強者が。
そうして放浪した。
いくつかの町だの村だのは滅ぼしてしまったかもしれない。
肉を失って、骨も乾燥したのか、体が軽い。軽すぎる。
踏み込んでも、斬撃が軽くなりすぎている。
また、やり直しだ。
体の動かし方、剣の握り方、踏み込み、腕の振り。
だけど
楽しいな
鍛錬して、戦う。
ただ、ただ、それだけのこと。
この体は、砕けても時間をかければ元に戻る。
短剣を振り、両手で持つ長大な剣を振り回し、スタンダードな直剣を握り、時に体術も混ぜる。
だけど、やっぱり俺には曲剣だな。
しっくりくる。
メイスだの斧だの槍だのは性に合わん。
俺を倒す相手に、早く会いたいな。
どれだけ彷徨ったのか。
何人と剣を交えたか。
あれから、俺がよみがえってから何年たったのか。
もう覚えてないな。
軍人たちの紋章はコロコロ変わるのだな。
そんなことに興味はない。
だが、戦う者は変わらない。
強者を探していたが、なぜか墓地にいる事が多かった。
墓地は綺麗だろうと、廃れていようと、落ち着く場所だった。
しかし、砂漠では砂丘に寝かして弔うのに、この辺りでは土に埋めるのだな。息苦しさを感じるな。
新しい剣を手に入れたら、墓地に行った。
墓地で剣を振り、体に馴染ませ、試し切りに行く。
いつのまにか、そんなことを繰り返していた。
強者と武器を探す事には変わっていないがな。
いくつかの魔法の武器を手に入れた。
たいして強くもないヤツが持っていたりする。
金持ちが道楽で持っていたりもした。
おかげで強くなれたが…ちょっと別の問題が出てきた。
魔法の武器を使いはじめた頃から、生者が弱くなった。
炎の剣は、かすっただけで相手が燃え上がる。
雷の短刀を投げれば、回避もせずに痙攣して倒れる。
俺が、強くなりすぎたのか?
稀にいる強い生者すら、最近は見かけない。
わからん
魔法の武器は封印するか…
いや、そうだな、生者に、人間にこだわる必要はないな。
強い相手、モンスターでも、アンデッドでも、ドラゴンとかいいかもな。
また新しい戦い方を鍛錬するか。
はは
楽しみだな
まだ見ぬ強敵たちよ
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