35 / 99
墓地の攻防
ホディト前衛対エッジ
しおりを挟む
ラウタロとマイガは阿吽の呼吸で、左右に広がりながらスケルトンに迫る。
スケルトンは踊りを続けている。
左右から挟み撃ちの形をとれた。
ラウタロの袈裟切りと、マイガのシールドバッシュが同時にスケルトンに迫る。
マイガの大盾と、ラウタロの剣先が触れ合うような攻撃。
だが
二人に手ごたえは無い。
足元には崩れ去ったスケルトンの全身の骨がある。
全身の関節を外し、「伏せ」たのか?
そして立ち上がりながらシミターを振るう。
マイガは盾で防ぐ。
ラウタロが後方に跳ねて飛びのく。
その一回の跳躍の間に、盾を叩くシミターの音は十回を超えていた。
マイガの大盾の一部が欠けていた。
その後も二人は攻撃を繰り返す。
スケルトンを若干押せているようで、大きな反撃は来ない。
そもそも、後衛二人の回復時間を稼ぐ為だ。
倒しきる必要はない。
しかし
ラウタロもマイガも視界の端では捉えていた。
アミール・ラリサと交戦している、もう一体のスケルトンを。
マイガは思考を巡らせる。
「自分一人で、このスケルトンを押さえてラウタロを向こうの救援に向かわせるか」
「二人で攻め切って、倒してから向かうか」
「あの二人ならば、向こうを処理してから、こちらに援護に来てくれるか」
深い思考をする余裕も、よそ見をする余裕もない。
そして、この相手を一人で押さえられる自信もなかった。
距離を置こうと離れる相手を必要に狙い、向かってくる攻撃には反撃をしない。
体勢を崩し、致命傷を与えるチャンスがあっても、このスケルトンはそれをしない。
何故だ?何が狙いだ?手加減をしているのか? それとも、こちらを追い詰めるための何かがあるのか?
そんな事を考えている余裕がなくなる。
一瞬、視界全体が血の色に染まったかのようだった。まばたきすら間に合わず、気づけばアミールとラリサが燃えている。
「おい!マイガ!」
焦りの声を上げるラウタロ。
「落ち着くんだ!あの二人なら、回復できる。仲間を信じるんだ」
そういうマイガ自身も、焦る自分に言い聞かせていた。
「よ、よし。コイツを早く倒して救援に行こう」
シミターの連撃を躱しながら、ラウタロは叫ぶ。
徐々に疲労が溜まり、精細さを欠いた攻撃を繰り出す二人。
しかし、スケルトンは致命的な攻撃をしてこない。
シミターの峰で叩いたり、盾や体を蹴るような行動が多い。
ラウタロの視界に、崩れ落ちるアミールの姿が入ってしまった。
「アミール!」
咄嗟に走り出すラウタロに迫るスケルトンは、滑り込むように足をひっかけてラウタロを転倒させた。
大きく振りかぶったシミターを、ブンと振る。
「ラウタロ!」
マイガはシールドを押し出し、ラウタロに向かうも、彼は無事だった。
倒れて咄嗟に構えた丸盾を、横一文字に斬られていた。
大盾を倒れるラウタロの前で構え、スケルトンに向かいながらマイガは叫ぶ。
「俺が抑える!行け、ラウ!」
ラウタロが立ち上がる眼前に、二本のシミターをバツ印のようにクロスして構えるスケルトンが立ちはだかる。
「なんだと?盾の前にいたはず。目を放してないぞ!」
いつのまにか背後に回られていた。
マイガは立ち上がるラウタロの前に立つと、盾にかすかな衝撃を覚える。
視界が広くなる。
盾の強化している縁部分が全て斬られていた。
そして、盾の上にスケルトンが乗っている。
動きの変わるスケルトン。
先ほどまでの、守備的な動きから、攻撃的になる。
盾蹴りから、躍動感のある飛翔をし、連撃を討つ。
視界の隅に、どうしても捉えてしまう倒れている仲間。
それが映った瞬間に、このスケルトンは攻撃をしてくる。
まるで「自分から目を離すな」そう言っているようだ。
ラウタロとマイガが並び立つと、その間にシミターを振り回しながら割って入る。
自ら挟み撃ちの位置に立ち、前後の敵を作っているのか?
その隙を付き、攻撃をしようと踏み込むと、シミターが伸びてくる。
肘は逆に折れ曲がり、手首も肩も関節がないような、軟体動物を思わせる動きで。
足もつま先が常に二人を捉えていて、後ろにも踏み込んでくる。
「なんだ、なんなんだ、こいつは」
ラウタロの打ち下ろした剣を、肘を折るように引いて受け流す。通常ならばありえない角度のはずなのに。
そして、左右の連撃から、スケルトンは回りだした。
大気をもヒュンヒュンと切り裂く音が響く。
高速で回転する刃の嵐。
二人とも近付けないと判断し、盾を構える。
マイガの小さくなった大盾に吸い寄せられるように迫る。
コツン
そんな軽い音と共に、スケルトンの回転は停止した。
マイガの大盾が斜めに切断された。
そしてラウタロに向き合うスケルトン。
ラウタロはスケルトンの背後でマイガの体が、上下に切断された上の部分だけが、ゆっくりと斜めに滑るのを見た。
「う、うわああああああああああ」
ラウタロは盾を投げ捨て、両手で剣を握る。
大上段に構えている一本のシミターが見えた。
ラウタロは激情に駆られながらも鋭く踏み込む。
渾身の袈裟切りを放つ。
ラウタロの目には、左右に分かれて倒れていく景色が見えた。
それを最後に、視界は暗転した。
スケルトンは踊りを続けている。
左右から挟み撃ちの形をとれた。
ラウタロの袈裟切りと、マイガのシールドバッシュが同時にスケルトンに迫る。
マイガの大盾と、ラウタロの剣先が触れ合うような攻撃。
だが
二人に手ごたえは無い。
足元には崩れ去ったスケルトンの全身の骨がある。
全身の関節を外し、「伏せ」たのか?
そして立ち上がりながらシミターを振るう。
マイガは盾で防ぐ。
ラウタロが後方に跳ねて飛びのく。
その一回の跳躍の間に、盾を叩くシミターの音は十回を超えていた。
マイガの大盾の一部が欠けていた。
その後も二人は攻撃を繰り返す。
スケルトンを若干押せているようで、大きな反撃は来ない。
そもそも、後衛二人の回復時間を稼ぐ為だ。
倒しきる必要はない。
しかし
ラウタロもマイガも視界の端では捉えていた。
アミール・ラリサと交戦している、もう一体のスケルトンを。
マイガは思考を巡らせる。
「自分一人で、このスケルトンを押さえてラウタロを向こうの救援に向かわせるか」
「二人で攻め切って、倒してから向かうか」
「あの二人ならば、向こうを処理してから、こちらに援護に来てくれるか」
深い思考をする余裕も、よそ見をする余裕もない。
そして、この相手を一人で押さえられる自信もなかった。
距離を置こうと離れる相手を必要に狙い、向かってくる攻撃には反撃をしない。
体勢を崩し、致命傷を与えるチャンスがあっても、このスケルトンはそれをしない。
何故だ?何が狙いだ?手加減をしているのか? それとも、こちらを追い詰めるための何かがあるのか?
そんな事を考えている余裕がなくなる。
一瞬、視界全体が血の色に染まったかのようだった。まばたきすら間に合わず、気づけばアミールとラリサが燃えている。
「おい!マイガ!」
焦りの声を上げるラウタロ。
「落ち着くんだ!あの二人なら、回復できる。仲間を信じるんだ」
そういうマイガ自身も、焦る自分に言い聞かせていた。
「よ、よし。コイツを早く倒して救援に行こう」
シミターの連撃を躱しながら、ラウタロは叫ぶ。
徐々に疲労が溜まり、精細さを欠いた攻撃を繰り出す二人。
しかし、スケルトンは致命的な攻撃をしてこない。
シミターの峰で叩いたり、盾や体を蹴るような行動が多い。
ラウタロの視界に、崩れ落ちるアミールの姿が入ってしまった。
「アミール!」
咄嗟に走り出すラウタロに迫るスケルトンは、滑り込むように足をひっかけてラウタロを転倒させた。
大きく振りかぶったシミターを、ブンと振る。
「ラウタロ!」
マイガはシールドを押し出し、ラウタロに向かうも、彼は無事だった。
倒れて咄嗟に構えた丸盾を、横一文字に斬られていた。
大盾を倒れるラウタロの前で構え、スケルトンに向かいながらマイガは叫ぶ。
「俺が抑える!行け、ラウ!」
ラウタロが立ち上がる眼前に、二本のシミターをバツ印のようにクロスして構えるスケルトンが立ちはだかる。
「なんだと?盾の前にいたはず。目を放してないぞ!」
いつのまにか背後に回られていた。
マイガは立ち上がるラウタロの前に立つと、盾にかすかな衝撃を覚える。
視界が広くなる。
盾の強化している縁部分が全て斬られていた。
そして、盾の上にスケルトンが乗っている。
動きの変わるスケルトン。
先ほどまでの、守備的な動きから、攻撃的になる。
盾蹴りから、躍動感のある飛翔をし、連撃を討つ。
視界の隅に、どうしても捉えてしまう倒れている仲間。
それが映った瞬間に、このスケルトンは攻撃をしてくる。
まるで「自分から目を離すな」そう言っているようだ。
ラウタロとマイガが並び立つと、その間にシミターを振り回しながら割って入る。
自ら挟み撃ちの位置に立ち、前後の敵を作っているのか?
その隙を付き、攻撃をしようと踏み込むと、シミターが伸びてくる。
肘は逆に折れ曲がり、手首も肩も関節がないような、軟体動物を思わせる動きで。
足もつま先が常に二人を捉えていて、後ろにも踏み込んでくる。
「なんだ、なんなんだ、こいつは」
ラウタロの打ち下ろした剣を、肘を折るように引いて受け流す。通常ならばありえない角度のはずなのに。
そして、左右の連撃から、スケルトンは回りだした。
大気をもヒュンヒュンと切り裂く音が響く。
高速で回転する刃の嵐。
二人とも近付けないと判断し、盾を構える。
マイガの小さくなった大盾に吸い寄せられるように迫る。
コツン
そんな軽い音と共に、スケルトンの回転は停止した。
マイガの大盾が斜めに切断された。
そしてラウタロに向き合うスケルトン。
ラウタロはスケルトンの背後でマイガの体が、上下に切断された上の部分だけが、ゆっくりと斜めに滑るのを見た。
「う、うわああああああああああ」
ラウタロは盾を投げ捨て、両手で剣を握る。
大上段に構えている一本のシミターが見えた。
ラウタロは激情に駆られながらも鋭く踏み込む。
渾身の袈裟切りを放つ。
ラウタロの目には、左右に分かれて倒れていく景色が見えた。
それを最後に、視界は暗転した。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜
芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。
ふとした事でスキルが発動。
使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。
⭐︎注意⭐︎
女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる