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中等部編
夏休みは変身だ!
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さて、今日から夏休みだ
夏休みと言えば冒険って事で
家族で魔法石の採掘旅行へ行くことになった
行き先は火山の街"ラーヴァーク"
ここは採掘で栄えた街で、ここで取れた鉱石を加工した装飾品も売ってたりするみたい
街から少し離れた所に"ヴェザラス山"という活火山があり、魔法石や鉱石の宝庫らしい
魔法石は火山の力でうんたらかんたらで活火山の洞窟だと沢山取れるみたい
難しい事はよくわからないや
でも、危険だから入れる範囲が決まっていて、あまり奥へは行けないそうだ
下層も2階までしかないみたい
浅いから初心者にも人気があるダンジョンで、もちろんモンスターも居る
「ユカ…おいユカ!」
「あっ、えっ?なに?」
「寝てたのか?もう着いたから降りるぞ」
「はーい」
ついにラーヴァークの街に着いたぞ!
「まずは宿探しからだな」
「そうだね!飯より宿!」
「あらあら、はしゃいじゃって」
辺りを見回すと色々な店が出ている
屈強な男が多いのかご飯屋さんもステーキ等の肉類が多い
中にはオシャレな喫茶店もあるけどね
「お、ここだな」
「火の玉亭?」
「変わった名前だけどシンプルで分かりやすいわね」
「こんにちは!」
「こんにちは!いらっしゃいませ!酒場ですか?宿ですか?」
「宿を頼むよ」
「かしこまりました!ではこちらに…」
ここは宿屋と酒場がセットになっている様だ
見た目が荒くれ者みたいな人たちがお酒を飲んでワイワイ騒いでいる
「よし、受付が済んだぞ、まずは部屋に行って荷物を置いてこよう」
「はーい」
広い階段を登り角を曲がると客室が見えてきた
この辺りまで来ると酒場の騒ぎ声は聞こえなくなる
「お、ここだな」
鍵を開けるとなかなか広い部屋が広がる
「すごい!広い!キレイ!」
よく清掃されていて、広い部屋だ
窓から火山が見える
山肌には血管の様に溶岩が流れている
「今から行くのがあの山だな、確かヴェザラス山だったかな」
「凄い近いところに街を作ったんだね!」
「そうだな、風向きとか色々考えてここに街を作ったんだろうな」
「中は暑いのかしらね?」
「多分な、中にも溶岩が流れてるから暑そうだ」
「ね、ね、何時頃に行くの?」
「そうだな、昼飯を食ったら行くか」
「はーい!ここのご飯も美味しそう!」
「あらあら」
「じゃ、それまで街を見てきて良い?」
「いいけど迷子になるんじゃないぞ」
「はーい!行ってきます!」
火の玉亭を飛び出し装飾品売り場へ向かう
「へー、色んなものが売ってるなあ」
雑貨も扱っている店の様だ
水?が入った小さな小瓶がある
「すみません、これは何の瓶ですか?」
店主が答える
「これはアイスポーションだよ、飲めばしばらく暑さに耐えられるぞ」
「あまり暑すぎる所では効果は無いがな、ヴェザラス山で採掘するのなら必需品だな」
「なるほど、ちなみにおいくらですか?」
「こいつは一つ300ルクだ、買うかい?」
「う~ん、後でパパを連れてきます!」
「はっは!そうかい、それじゃまた後でな!」
「はーい!バイバイ!」
次は…道具屋かな!
ツルハシの看板がかかってる建物がある
「ここか、ごめんくださーい」
「はいよ、いらっしゃい」
物凄く腕が太い店主だ
「お嬢ちゃん採掘かい?」
「うん、欲しいのがあったら後でパパを連れてきます」
「そうかい、ゆっくり見ていってな」
いろんな種類のツルハシが置いてある
よく見る両側が尖ってるものや、片方が平たいやつや、斧みたいになってるやつもある
それも大小様々だ
「すみません、私が魔法石を掘るにはどれぐらいが良いんですか?」
「お嬢ちゃんの身長ならこれぐらいが丁度いいんじゃないかな」
出されたのは地面から腰ぐらいの長さのツルハシだ
「魔法石は地面に顔を出してるやつが多いからな、大きくてもこれぐらいあれば負担なく掘れると思うぞ」
「なるほど~」
すると、ドアが開いた
「こんにちは」
「あれ?パパ!」
「おぉユカ、ここに居たのか」
「いらっしゃい!この子の父さんかい?良いの買ってやりなよ!」
「あぁ、はは」
「ユカ、何か良いものあったか?」
「うん、お店の人に教えてもらったこのツルハシなんてどうかな?」
さっきのツルハシを見せる
「おお、丁度良さそうだな」
「でしょ、私はこれと…あぁこれこれ!」
先が尖った小型のハンマーだ
こがあれば、浅く埋まっていて頭を出している鉱石が彫りやすい
「よく考えたな、その2セットがあれば十分だろう」
「うん!」
「でもツルハシの予備は持っていかないからな?装備が重くなるし」
「わかってるって!それと、他の店なんだけど、アイスポーションが欲しい」
「さすがユカだ、よく分かってる、すごいぞ」
「えへへ」
まぁ、殆ど偶然なんだけどね
それから食料など色々買い込み、いざダンジョンへ
入り口に受付がある
これは登山届けの様なもので、営業時間が過ぎても帰って来ない冒険者等を探したりするときにと使うものだ
「へー、しっかり管理されてるんだね」
「これなら安心して入れるだろ?こういった商用利用で管理されているダンジョンは初心者とか関係なく入れるからな」
「鉱石堀のアルバイトもできるぞ」
「なるほどねぇ、素晴らしいわ!」
出口には鑑定所もある
結構並んでいるが、一番高く買い取ってくれるらしい
出口と言っても入口と出口は同じ場所だ
向かって左が入り口、右が出口だ
「よし、そろそろ行くか」
「はい」
「はーい!楽しみ!」
受け付けで記入して入場料を払う
入場料があるとこにびっくりしたが、年齢関係無く1000ルクなのでそれほど高くない
これは掛け捨ての保険料と救助料も含まれているので、そう考えると安い
ちなみに日本円で換算すると、ほぼほぼ1ルク=1円だ
おっと、脱線しすぎたかな
早くダンジョンへ入ろう
明かりが無くても流れている溶岩でほんのり明るい
逆に明かりを点けると溶岩の明かりが目立たなくなり、踏む危険がある
「それじゃ、だいたい1時間後にここに集まろう、成果報告と休憩だ」
「はーい!」
「じゃあ、私はお父さんと一緒にゆっくり掘ってるからね」
「え~ラブラブじゃん」
「そうよ、羨ましい?」
「うっ、そんな返しをされるとは…」
「ははは!ユカは好きなところで掘ってみなさい、ユカならどういった場所が成果がでるかすぐ分かると思うから」
「はーい!」
「じゃあ、いってきま~す!」
アイスポーションのおかげでそんなに熱くない
すぐ足元に溶岩が流れていてもだ
これはこれで踏む危険があるかも…
ふと溶岩が溢れている壁に目が行った
「ん?んんん?」
よく見ると何か光っている
「お!早速ゲットかな?」
近付くと、まさしく魔法石だ
黄色の魔法石が少しだけ壁から出ている
まずは小さなハンマーで周りを掘ってみる
カン、カン、カン
「なるほど、こうやって埋まってるのか、それなら…」
周りを掘ると結構深いところまで入っているようだ
ツルハシを出し、振り下ろす
カンッ!カンッ!カンッ!
ガラッ、ボロボロッ
だいぶ出てきた
これは結構大きいぞ!
カンッ!カンッ!パキンッ!
「あっ!割れちゃった!」
そう、黄色の魔法石は割れやすいので、石の近くをツルハシで掘るとツルハシと石の衝撃で割れるのだ
「うーん、近すぎたかな?そうか、先に岩ごと掘り出して、そっからハンマーで余分な岩を落とせば良いのか」
ひらめいてからは早かった
早々にコツを掴んで次々と掘り出す
「結構たまったな、先に戻って待ってようかな」
そう思い、待ち合わせ場所まで戻る
「あれ?パパとママ早いね」
ユカよりも先に戻っていた両親が答える
「ちょっと疲れちゃってね、先に戻って来たの」
と、ママ
「お疲れさん、ユカはどれだけ掘れたんだ?」
「リュックいっぱいにはなったよ」
リュックを下ろし中を見せる
「おぉ、結構掘れたな、しかも早い」
「うん、ちょっとコツを掴んだからね」
「そうか、相変わらずそういうの得意だな」
「まあね!」
台車へ魔法石を移し休憩を始める
「パパ達はどれだけ掘れたの?」
「二人でユカと同じぐらいかな、小休憩挟みながらやってたし、ユカほど体力無いからな」
さすがに子供の体力には勝てない
「パパは魔法石をどうするの?」
「最初はユカに分けてあげようと思ったけど、それだけ掘ってるなら全部売って豪華な夜食にでもするかな」
「やった!賛成!」
子供はげんきんである
休憩も終わり、持ち場へ戻る
「じゃ、これで終わりにするから次も1時間後にここへ集合な」
「りょーかい!」
戻ったは良いが、あらかた掘り尽くしたので、ちょっと移動する
「お?ここなら良いかな」
新たな魔法石がたくさん顔を出している
ツルハシで叩くとコーン!と響く
「さっきと何か違うような…ま、いっか」
違和感を感じながらも採掘をすすめる
コーン!コーン!コーン!
ボロっ
「これはなかなか…」
大きめの魔法石が掘れた
コーン!コーン!コーン!
「よし、いい感じに掘れるぞ」
柔らかく感じたのか、休憩で体力が回復したのか
ボロボロと魔法石が掘れる
「私も売ってお小遣いにしよっかな?」
ウキウキしながら掘っているが
足元にヒビが入っているのを見過ごしてしまっていた
コーン!
ボロボロボロ!ガラガラガラ!!
「あっ」
声にならない声を上げて体が宙に浮く
なんと床が崩れて下へ下へ落ちているのだ
ウソウソウソ!なんで???
そう思ったのか思っている途中なのか鈍い音が響く
ゴチッ
頭から落ち頭蓋骨が割れた
幸い?脳は崩れていない
視界がグワングワンする
「死ぬのか」
声に出ていないが口は動いた
溶岩溜まりに何かいるのに気付いた
「これは…ニンゲンの子か…」
声はするがよく聞き取れない
「もう長くは持たないな…ならばひとおもいに…」
「え?あ、はい。えっ、そうなんですか…あ、はぁ、わかりました、でも本当に良いのですか?はぁ、わかりました、では…」
誰かと喋っているみたいだ
「ニンゲンの子よ…女神様よりお前を救えとの事だ少し痛いが我慢しろ」
自身の大きな翼を噛み血が流れる
そう、この影は炎の神龍「エンバークス」なのだ
エンバークスは活火山を拠点とし巡回をしている
そして"たまたま"この火山を巡回中だったのだ
翼から流れる血がユカに降り注ぐ
割れた傷口からエンバークスの血が混ざり体内へ流れる
そのとき脳にも直接かかっていた
次の瞬間体が跳ね上がる
ドクン!
「がっ!」
それまではアドレナリンやエンドルフィンのせいか痛みが無かったが
急に頭が割れるように痛い感覚がある(実際に割れているが)
体が痺れ手足の指先からジワジワと強烈な痛みが全身に広がる
「あ、あ、あ…」
なんと、指先に鱗が現れ始めた
それが徐々に全身に広がる
「が…あ…あ…」
苦しそうなユカ…ユカだった者
爪は長く尖り
服を突き破り翼が広がる
目は瞳孔が縦長になり、顔も鱗で覆われる
もはや人間には見えず、ドラゴニュートになってしまった
口から炎を吐き
壁に頭を打ち付けながら殴り
暴れまわっている
「ガアアア!」
「こら!暴れるな!」
エンバークスがなだめるも聞こえてはいない
赤い炎が段々と青色に変わり光として吐き出される
それはレーザーの様に
口元が光った瞬間、射線にある自然にできた柱や壁を一瞬で溶かす
これはたまったもんじゃないとエンバークスが怒る
「いい加減にせんか!」
バチコン!
尻尾を振りユカに叩きつける
ユカは飛ばされ壁に激突し、大人しくなった
「せっかくの住処がだいなしだ…」
「それとブレスが強力すぎるな…普通のドラゴンブレスまでに封印しておくか…」
爪を頭に当てると一瞬光ったかと思うとすぐに消えた
「これでよし」
ユカの体の鱗が両腕(二の腕)に収束していく
そして人の姿に戻ったが、両腕には赤い鱗状の痣が残った
その時、大きな声がし始めた
「ニンゲン達が来たな、俺はもう行くが、達者でな」
そういうとエンバークスは行ってしまった
「ユカー!!!ユカ!!どこなのーー?!!」
母親の声がする
「おーい!ユカ!居たら返事しろーー!!!」
父親も叫ぶ
その他救助隊も居る
ユカは少しずつ意識を取り戻した
あれ?ここは?私はどうなったの??
朦朧として考えがまとまらない
たしか落っこちて大きな龍に出会って…
龍の事は微かに覚えている様だ
「ユカーー!!!」
ママの声が聞こえる
「ユカ!!どこだ!!」
パパの声もする
ハッと気が付く
「パパー!ママー!!ここだよー!!!」
ユカは起き上がり手をふる
「ユカ!」
駆け寄る二人
「パパ!ママ!」
遅れて救助隊もやってくる
「大丈夫ですか?怪我は?」
「うん大丈夫!ありがとうございます!」
1つ上の階といえどこの溶岩洞窟は高さがある
普通なら死んでいる高さだ
「よく無事だったな」
「うん!…よくわからないけど大丈夫だよ」
龍に会った事は今は伏せておこう
一時は大騒ぎになったが無事に救出され、念の為にと1日入院する事になった
「はぁ~心配したぞ」
父親が安堵のため息をつく
「本当に、無事で良かったわ」
母親も安堵する
「ごめんなさい、床が抜けるとは思わなかったの」
「そうだよな…次から気をつけないとな」
「そうそう、落ちたときに大きな龍に会ったの」
声を小さくして言う
「なに?!本当か?!」
「あらまあ」
「それでどこに?!」
「わからない、気がついたら居なくなってた」
「それこそ良く無事だったな」
「本当にねぇ」
「何か言ってたような気がするんだけどね…」
「人の言葉を話す龍か…火山ということはもしかして炎の神龍エンバークスかもな」
「エンバークス?」
「あぁ、めったに人前に姿を表さないとか」
「そうなんだ」
「収穫祭などで稀に上空を旋回しているのが目撃されたりな」
「ツイてたな、そんなに希少な龍に会えたんだ。何か良いことがあるかもしれないな」
それから少し会話したあとゆっくりと休んだ
次の日
検査も終わり、無事退院できた
当たり前だがドラゴニュートになった際に怪我は全て完治している
両親はユカが寝ている時に鉱石を売りに行っていた
「結構な額で売れたからここで良いもの食べてから帰るか」
「さんせーい!」
ステーキハウスでジューシーな肉を食べ、買い物を済ませ帰路につく
馬車の中
「ユカは何を買ったんだ?」
「青色の魔法石があったから買っちゃった!」
「早速ツイてたな!」
「パパ達は何を買ったの?」
「ユカこれ」
母親が指輪を見せる
「これは?」
「それはな、魔力の自動回復ができる魔石だ」
「えっ?魔石も売ってたの?」
「そうよ、パパと探し回ってやっと見つけたのよ」
「ママは昔から欲しがってたからな」
「魔術師にとって神アイテムなのよね」
そういって微笑む
「私も魔石を探せば良かったな」
「ちなみに何の魔石なんだ?」
「う~ん…特にないかな、あはは」
「なんだそれ」
ふと、母親が気付く
「ユカ、その腕…」
「あ、見えちゃった?」
「そんな痣あったか?」
「寝てる間に思い出したの。言おうかどうしようか迷ってたんだけど…」
「何を思い出したんだ?」
両親が神妙な顔をする
声を小さくしてユカが言う
「実はね、落ちたときに頭を強く打って死にかけてたの」
母親がギョッとする
「それでね、エンバークスが現れて誰かと話してたの」
「うん、それで?」
「それで、急に血が降ってきたと思ったら体がドラゴンになって…」
「ちょっとまって!それって…」
「まさか…」
両親が顔を見合わせる
「その時に体中が痛くて痛くて…ちょっと暴れちゃったのね」
「それでエンバークスに怒られて元の体に戻ったの」
「えぇ…そんな事が…」
「はぁ…お前には驚かされてばかりだな…」
「家についたらちょっと裏山で確認させてくれ」
「うん、わかった」
「それにしても、うちの子が神の子になるなんて…」
「そうだな…またお祝いしなくちゃな…」
「そんなに凄いことなの?」
「あぁ、人と龍の子はドラゴニュートって言ってな
、希少も希少で、その存在も文献にあるだけなんだ」
「そうよ、だから研究機関とかにも狙われやすいの」
「その事は誰にも言っちゃ駄目だぞ、ドラゴニュートの姿もな」
「ほぇ~、わかった!気をつけるね!」
そして裏山で…
「それじゃまず何が変わったか確認させてくれ」
「うん、どうすれば良い?」
「そうだな、普通の魔術を使ってくれ」
「わかった、じゃあまずは普通のファイアね」
「あぁ」
「ファイア!」
ボウっ!ゴオオオオ!
手のひらから凄い炎が立ち上る
「おいおい、どうなってんだ?」
「えっ、ちょっと、おしまい!」
炎が消える
「なんだその出力は…」
「わかんない、自分でもびっくりした」
「それじゃ、素材の変化は?」
「ん~…あれ…何も減ってないや…」
「はあ?それじゃ魔力は?」
「全然平気…」
「素材が減ってないのは気になるが…魔力はまぁ、ファイアだしな…」
「じゃあ次はファイアボールをやってみるね」
「あぁ、あ、カバンを俺に預けてくれ」
「はい」
「ファイアボール!」
シュッ!ドーン!!!!
「やっぱりできた…」
「なんだ…?詠唱は…?素材は…?」
「なんか出来そうだからやってみたら出来た」
「なんか…もうむちゃくちゃだな…はは」
もう笑うしかない感じだ
「それじゃ次は水やってみるね」
「あぁ」
「ウォーター!」
プシュ~
「あれ?……パパカバンちょうだい」
「ウォーター!」
チョロロロロ…
「どうだ?って、聞くまでもないか」
「うん、たぶん、火系統だけだね」
「そうだな…他にも確認したいが…炎の神龍だからだな…」
「そうだね」
「それじゃ今日は帰るか、明日の朝もここへ来て、今度はドラゴニュートの姿も見せてもらおうか」
「うん、わかった!」
二人は家に帰り、夕食しながら母親に報告をした
翌朝…
「ユカー!行こうか!」
「はーい!」
ユカは部屋から大きなバスタオルと着替を持ってきた
「どうしたんだ?それ」
「服が破れたら恥ずかしいからね」
「そっか、でも救助したときは破れてなかったぞ」
「たぶんそれはエンバークスが修復したんだと思う」
「そういうことか」
「それじゃやってみてくれ」
「うん!」
上着と靴を脱ぎ、スポーツブラの様なもの1枚になる
肩甲骨辺りが細くなっているやつだ
目を閉じ意識を集中する
腕の痣が輝き鱗が生えてくる
腕から生え…何かが違う
体格はドラゴニュートの時とは違い細マッチョのようになっている
爪も少しは長くなるがあの時程ではない
顔の変化も鱗で覆われて瞳孔が縦になるが人の顔の造りのままだ
バサッ
肩甲骨辺りから翼が生える
変身が完了した
「こんな人間っぽいのか?」
「ううん、初めてなった時はもっとドラゴンぽかったよ」
例えるならセガのゲーム「獣王記」のステージ2で変身するドラゴンの様だった
試しに手が回せない程の大木へパンチしてみる
バキッ!バサバサバサッ…ドドン!
簡単に折れてしまった
「凄いなこりゃ…」
父親が驚く
細いながらも筋力は数百倍になっている
もちろん骨もそれに合わせて強度が上がっている
ちなみにしっぽは…スボンを突き破ってしまった…
そして…口から軽くブレスを吐く。火事にならないように
ボボッ!
「もうなんでもありだな…」
「自分の意志で戻れるのか?」
「たぶんね、やってみる」
また意識を集中する
しっぽが縮みだした
鱗も腕へ集まっていく
顔をもとに戻る
全てが元通りになった
「やーん、破れてる…」
ズボン以外は…
家に帰り母親へ報告する
「あらまぁ!それじゃ次からはスカートにした方がいいんじゃないかしら」
母親らしい
次の日からは変身と魔術の練習を始めた
段々と思い通りに変身ができるようになってきた
魔術の方も火以外もスキルが上がってきた
火に関しては勝手にカンストしてしまっている
詠唱無しで最大レベルの魔術が使える様になっている
「ドラゴニュートの時は火魔術の威力が数倍になるみたいだね」
人間が出せる威力を超えてしまっている
人前で使うときは気をつけないと
夏休みの残りの日数はまだある
どこか腕試しでダンジョンに潜ろうと考えた
「ハリィを誘ってみようかな」
そう思い、明日ハリィの住む街へ出かける事にした
夏休みと言えば冒険って事で
家族で魔法石の採掘旅行へ行くことになった
行き先は火山の街"ラーヴァーク"
ここは採掘で栄えた街で、ここで取れた鉱石を加工した装飾品も売ってたりするみたい
街から少し離れた所に"ヴェザラス山"という活火山があり、魔法石や鉱石の宝庫らしい
魔法石は火山の力でうんたらかんたらで活火山の洞窟だと沢山取れるみたい
難しい事はよくわからないや
でも、危険だから入れる範囲が決まっていて、あまり奥へは行けないそうだ
下層も2階までしかないみたい
浅いから初心者にも人気があるダンジョンで、もちろんモンスターも居る
「ユカ…おいユカ!」
「あっ、えっ?なに?」
「寝てたのか?もう着いたから降りるぞ」
「はーい」
ついにラーヴァークの街に着いたぞ!
「まずは宿探しからだな」
「そうだね!飯より宿!」
「あらあら、はしゃいじゃって」
辺りを見回すと色々な店が出ている
屈強な男が多いのかご飯屋さんもステーキ等の肉類が多い
中にはオシャレな喫茶店もあるけどね
「お、ここだな」
「火の玉亭?」
「変わった名前だけどシンプルで分かりやすいわね」
「こんにちは!」
「こんにちは!いらっしゃいませ!酒場ですか?宿ですか?」
「宿を頼むよ」
「かしこまりました!ではこちらに…」
ここは宿屋と酒場がセットになっている様だ
見た目が荒くれ者みたいな人たちがお酒を飲んでワイワイ騒いでいる
「よし、受付が済んだぞ、まずは部屋に行って荷物を置いてこよう」
「はーい」
広い階段を登り角を曲がると客室が見えてきた
この辺りまで来ると酒場の騒ぎ声は聞こえなくなる
「お、ここだな」
鍵を開けるとなかなか広い部屋が広がる
「すごい!広い!キレイ!」
よく清掃されていて、広い部屋だ
窓から火山が見える
山肌には血管の様に溶岩が流れている
「今から行くのがあの山だな、確かヴェザラス山だったかな」
「凄い近いところに街を作ったんだね!」
「そうだな、風向きとか色々考えてここに街を作ったんだろうな」
「中は暑いのかしらね?」
「多分な、中にも溶岩が流れてるから暑そうだ」
「ね、ね、何時頃に行くの?」
「そうだな、昼飯を食ったら行くか」
「はーい!ここのご飯も美味しそう!」
「あらあら」
「じゃ、それまで街を見てきて良い?」
「いいけど迷子になるんじゃないぞ」
「はーい!行ってきます!」
火の玉亭を飛び出し装飾品売り場へ向かう
「へー、色んなものが売ってるなあ」
雑貨も扱っている店の様だ
水?が入った小さな小瓶がある
「すみません、これは何の瓶ですか?」
店主が答える
「これはアイスポーションだよ、飲めばしばらく暑さに耐えられるぞ」
「あまり暑すぎる所では効果は無いがな、ヴェザラス山で採掘するのなら必需品だな」
「なるほど、ちなみにおいくらですか?」
「こいつは一つ300ルクだ、買うかい?」
「う~ん、後でパパを連れてきます!」
「はっは!そうかい、それじゃまた後でな!」
「はーい!バイバイ!」
次は…道具屋かな!
ツルハシの看板がかかってる建物がある
「ここか、ごめんくださーい」
「はいよ、いらっしゃい」
物凄く腕が太い店主だ
「お嬢ちゃん採掘かい?」
「うん、欲しいのがあったら後でパパを連れてきます」
「そうかい、ゆっくり見ていってな」
いろんな種類のツルハシが置いてある
よく見る両側が尖ってるものや、片方が平たいやつや、斧みたいになってるやつもある
それも大小様々だ
「すみません、私が魔法石を掘るにはどれぐらいが良いんですか?」
「お嬢ちゃんの身長ならこれぐらいが丁度いいんじゃないかな」
出されたのは地面から腰ぐらいの長さのツルハシだ
「魔法石は地面に顔を出してるやつが多いからな、大きくてもこれぐらいあれば負担なく掘れると思うぞ」
「なるほど~」
すると、ドアが開いた
「こんにちは」
「あれ?パパ!」
「おぉユカ、ここに居たのか」
「いらっしゃい!この子の父さんかい?良いの買ってやりなよ!」
「あぁ、はは」
「ユカ、何か良いものあったか?」
「うん、お店の人に教えてもらったこのツルハシなんてどうかな?」
さっきのツルハシを見せる
「おお、丁度良さそうだな」
「でしょ、私はこれと…あぁこれこれ!」
先が尖った小型のハンマーだ
こがあれば、浅く埋まっていて頭を出している鉱石が彫りやすい
「よく考えたな、その2セットがあれば十分だろう」
「うん!」
「でもツルハシの予備は持っていかないからな?装備が重くなるし」
「わかってるって!それと、他の店なんだけど、アイスポーションが欲しい」
「さすがユカだ、よく分かってる、すごいぞ」
「えへへ」
まぁ、殆ど偶然なんだけどね
それから食料など色々買い込み、いざダンジョンへ
入り口に受付がある
これは登山届けの様なもので、営業時間が過ぎても帰って来ない冒険者等を探したりするときにと使うものだ
「へー、しっかり管理されてるんだね」
「これなら安心して入れるだろ?こういった商用利用で管理されているダンジョンは初心者とか関係なく入れるからな」
「鉱石堀のアルバイトもできるぞ」
「なるほどねぇ、素晴らしいわ!」
出口には鑑定所もある
結構並んでいるが、一番高く買い取ってくれるらしい
出口と言っても入口と出口は同じ場所だ
向かって左が入り口、右が出口だ
「よし、そろそろ行くか」
「はい」
「はーい!楽しみ!」
受け付けで記入して入場料を払う
入場料があるとこにびっくりしたが、年齢関係無く1000ルクなのでそれほど高くない
これは掛け捨ての保険料と救助料も含まれているので、そう考えると安い
ちなみに日本円で換算すると、ほぼほぼ1ルク=1円だ
おっと、脱線しすぎたかな
早くダンジョンへ入ろう
明かりが無くても流れている溶岩でほんのり明るい
逆に明かりを点けると溶岩の明かりが目立たなくなり、踏む危険がある
「それじゃ、だいたい1時間後にここに集まろう、成果報告と休憩だ」
「はーい!」
「じゃあ、私はお父さんと一緒にゆっくり掘ってるからね」
「え~ラブラブじゃん」
「そうよ、羨ましい?」
「うっ、そんな返しをされるとは…」
「ははは!ユカは好きなところで掘ってみなさい、ユカならどういった場所が成果がでるかすぐ分かると思うから」
「はーい!」
「じゃあ、いってきま~す!」
アイスポーションのおかげでそんなに熱くない
すぐ足元に溶岩が流れていてもだ
これはこれで踏む危険があるかも…
ふと溶岩が溢れている壁に目が行った
「ん?んんん?」
よく見ると何か光っている
「お!早速ゲットかな?」
近付くと、まさしく魔法石だ
黄色の魔法石が少しだけ壁から出ている
まずは小さなハンマーで周りを掘ってみる
カン、カン、カン
「なるほど、こうやって埋まってるのか、それなら…」
周りを掘ると結構深いところまで入っているようだ
ツルハシを出し、振り下ろす
カンッ!カンッ!カンッ!
ガラッ、ボロボロッ
だいぶ出てきた
これは結構大きいぞ!
カンッ!カンッ!パキンッ!
「あっ!割れちゃった!」
そう、黄色の魔法石は割れやすいので、石の近くをツルハシで掘るとツルハシと石の衝撃で割れるのだ
「うーん、近すぎたかな?そうか、先に岩ごと掘り出して、そっからハンマーで余分な岩を落とせば良いのか」
ひらめいてからは早かった
早々にコツを掴んで次々と掘り出す
「結構たまったな、先に戻って待ってようかな」
そう思い、待ち合わせ場所まで戻る
「あれ?パパとママ早いね」
ユカよりも先に戻っていた両親が答える
「ちょっと疲れちゃってね、先に戻って来たの」
と、ママ
「お疲れさん、ユカはどれだけ掘れたんだ?」
「リュックいっぱいにはなったよ」
リュックを下ろし中を見せる
「おぉ、結構掘れたな、しかも早い」
「うん、ちょっとコツを掴んだからね」
「そうか、相変わらずそういうの得意だな」
「まあね!」
台車へ魔法石を移し休憩を始める
「パパ達はどれだけ掘れたの?」
「二人でユカと同じぐらいかな、小休憩挟みながらやってたし、ユカほど体力無いからな」
さすがに子供の体力には勝てない
「パパは魔法石をどうするの?」
「最初はユカに分けてあげようと思ったけど、それだけ掘ってるなら全部売って豪華な夜食にでもするかな」
「やった!賛成!」
子供はげんきんである
休憩も終わり、持ち場へ戻る
「じゃ、これで終わりにするから次も1時間後にここへ集合な」
「りょーかい!」
戻ったは良いが、あらかた掘り尽くしたので、ちょっと移動する
「お?ここなら良いかな」
新たな魔法石がたくさん顔を出している
ツルハシで叩くとコーン!と響く
「さっきと何か違うような…ま、いっか」
違和感を感じながらも採掘をすすめる
コーン!コーン!コーン!
ボロっ
「これはなかなか…」
大きめの魔法石が掘れた
コーン!コーン!コーン!
「よし、いい感じに掘れるぞ」
柔らかく感じたのか、休憩で体力が回復したのか
ボロボロと魔法石が掘れる
「私も売ってお小遣いにしよっかな?」
ウキウキしながら掘っているが
足元にヒビが入っているのを見過ごしてしまっていた
コーン!
ボロボロボロ!ガラガラガラ!!
「あっ」
声にならない声を上げて体が宙に浮く
なんと床が崩れて下へ下へ落ちているのだ
ウソウソウソ!なんで???
そう思ったのか思っている途中なのか鈍い音が響く
ゴチッ
頭から落ち頭蓋骨が割れた
幸い?脳は崩れていない
視界がグワングワンする
「死ぬのか」
声に出ていないが口は動いた
溶岩溜まりに何かいるのに気付いた
「これは…ニンゲンの子か…」
声はするがよく聞き取れない
「もう長くは持たないな…ならばひとおもいに…」
「え?あ、はい。えっ、そうなんですか…あ、はぁ、わかりました、でも本当に良いのですか?はぁ、わかりました、では…」
誰かと喋っているみたいだ
「ニンゲンの子よ…女神様よりお前を救えとの事だ少し痛いが我慢しろ」
自身の大きな翼を噛み血が流れる
そう、この影は炎の神龍「エンバークス」なのだ
エンバークスは活火山を拠点とし巡回をしている
そして"たまたま"この火山を巡回中だったのだ
翼から流れる血がユカに降り注ぐ
割れた傷口からエンバークスの血が混ざり体内へ流れる
そのとき脳にも直接かかっていた
次の瞬間体が跳ね上がる
ドクン!
「がっ!」
それまではアドレナリンやエンドルフィンのせいか痛みが無かったが
急に頭が割れるように痛い感覚がある(実際に割れているが)
体が痺れ手足の指先からジワジワと強烈な痛みが全身に広がる
「あ、あ、あ…」
なんと、指先に鱗が現れ始めた
それが徐々に全身に広がる
「が…あ…あ…」
苦しそうなユカ…ユカだった者
爪は長く尖り
服を突き破り翼が広がる
目は瞳孔が縦長になり、顔も鱗で覆われる
もはや人間には見えず、ドラゴニュートになってしまった
口から炎を吐き
壁に頭を打ち付けながら殴り
暴れまわっている
「ガアアア!」
「こら!暴れるな!」
エンバークスがなだめるも聞こえてはいない
赤い炎が段々と青色に変わり光として吐き出される
それはレーザーの様に
口元が光った瞬間、射線にある自然にできた柱や壁を一瞬で溶かす
これはたまったもんじゃないとエンバークスが怒る
「いい加減にせんか!」
バチコン!
尻尾を振りユカに叩きつける
ユカは飛ばされ壁に激突し、大人しくなった
「せっかくの住処がだいなしだ…」
「それとブレスが強力すぎるな…普通のドラゴンブレスまでに封印しておくか…」
爪を頭に当てると一瞬光ったかと思うとすぐに消えた
「これでよし」
ユカの体の鱗が両腕(二の腕)に収束していく
そして人の姿に戻ったが、両腕には赤い鱗状の痣が残った
その時、大きな声がし始めた
「ニンゲン達が来たな、俺はもう行くが、達者でな」
そういうとエンバークスは行ってしまった
「ユカー!!!ユカ!!どこなのーー?!!」
母親の声がする
「おーい!ユカ!居たら返事しろーー!!!」
父親も叫ぶ
その他救助隊も居る
ユカは少しずつ意識を取り戻した
あれ?ここは?私はどうなったの??
朦朧として考えがまとまらない
たしか落っこちて大きな龍に出会って…
龍の事は微かに覚えている様だ
「ユカーー!!!」
ママの声が聞こえる
「ユカ!!どこだ!!」
パパの声もする
ハッと気が付く
「パパー!ママー!!ここだよー!!!」
ユカは起き上がり手をふる
「ユカ!」
駆け寄る二人
「パパ!ママ!」
遅れて救助隊もやってくる
「大丈夫ですか?怪我は?」
「うん大丈夫!ありがとうございます!」
1つ上の階といえどこの溶岩洞窟は高さがある
普通なら死んでいる高さだ
「よく無事だったな」
「うん!…よくわからないけど大丈夫だよ」
龍に会った事は今は伏せておこう
一時は大騒ぎになったが無事に救出され、念の為にと1日入院する事になった
「はぁ~心配したぞ」
父親が安堵のため息をつく
「本当に、無事で良かったわ」
母親も安堵する
「ごめんなさい、床が抜けるとは思わなかったの」
「そうだよな…次から気をつけないとな」
「そうそう、落ちたときに大きな龍に会ったの」
声を小さくして言う
「なに?!本当か?!」
「あらまあ」
「それでどこに?!」
「わからない、気がついたら居なくなってた」
「それこそ良く無事だったな」
「本当にねぇ」
「何か言ってたような気がするんだけどね…」
「人の言葉を話す龍か…火山ということはもしかして炎の神龍エンバークスかもな」
「エンバークス?」
「あぁ、めったに人前に姿を表さないとか」
「そうなんだ」
「収穫祭などで稀に上空を旋回しているのが目撃されたりな」
「ツイてたな、そんなに希少な龍に会えたんだ。何か良いことがあるかもしれないな」
それから少し会話したあとゆっくりと休んだ
次の日
検査も終わり、無事退院できた
当たり前だがドラゴニュートになった際に怪我は全て完治している
両親はユカが寝ている時に鉱石を売りに行っていた
「結構な額で売れたからここで良いもの食べてから帰るか」
「さんせーい!」
ステーキハウスでジューシーな肉を食べ、買い物を済ませ帰路につく
馬車の中
「ユカは何を買ったんだ?」
「青色の魔法石があったから買っちゃった!」
「早速ツイてたな!」
「パパ達は何を買ったの?」
「ユカこれ」
母親が指輪を見せる
「これは?」
「それはな、魔力の自動回復ができる魔石だ」
「えっ?魔石も売ってたの?」
「そうよ、パパと探し回ってやっと見つけたのよ」
「ママは昔から欲しがってたからな」
「魔術師にとって神アイテムなのよね」
そういって微笑む
「私も魔石を探せば良かったな」
「ちなみに何の魔石なんだ?」
「う~ん…特にないかな、あはは」
「なんだそれ」
ふと、母親が気付く
「ユカ、その腕…」
「あ、見えちゃった?」
「そんな痣あったか?」
「寝てる間に思い出したの。言おうかどうしようか迷ってたんだけど…」
「何を思い出したんだ?」
両親が神妙な顔をする
声を小さくしてユカが言う
「実はね、落ちたときに頭を強く打って死にかけてたの」
母親がギョッとする
「それでね、エンバークスが現れて誰かと話してたの」
「うん、それで?」
「それで、急に血が降ってきたと思ったら体がドラゴンになって…」
「ちょっとまって!それって…」
「まさか…」
両親が顔を見合わせる
「その時に体中が痛くて痛くて…ちょっと暴れちゃったのね」
「それでエンバークスに怒られて元の体に戻ったの」
「えぇ…そんな事が…」
「はぁ…お前には驚かされてばかりだな…」
「家についたらちょっと裏山で確認させてくれ」
「うん、わかった」
「それにしても、うちの子が神の子になるなんて…」
「そうだな…またお祝いしなくちゃな…」
「そんなに凄いことなの?」
「あぁ、人と龍の子はドラゴニュートって言ってな
、希少も希少で、その存在も文献にあるだけなんだ」
「そうよ、だから研究機関とかにも狙われやすいの」
「その事は誰にも言っちゃ駄目だぞ、ドラゴニュートの姿もな」
「ほぇ~、わかった!気をつけるね!」
そして裏山で…
「それじゃまず何が変わったか確認させてくれ」
「うん、どうすれば良い?」
「そうだな、普通の魔術を使ってくれ」
「わかった、じゃあまずは普通のファイアね」
「あぁ」
「ファイア!」
ボウっ!ゴオオオオ!
手のひらから凄い炎が立ち上る
「おいおい、どうなってんだ?」
「えっ、ちょっと、おしまい!」
炎が消える
「なんだその出力は…」
「わかんない、自分でもびっくりした」
「それじゃ、素材の変化は?」
「ん~…あれ…何も減ってないや…」
「はあ?それじゃ魔力は?」
「全然平気…」
「素材が減ってないのは気になるが…魔力はまぁ、ファイアだしな…」
「じゃあ次はファイアボールをやってみるね」
「あぁ、あ、カバンを俺に預けてくれ」
「はい」
「ファイアボール!」
シュッ!ドーン!!!!
「やっぱりできた…」
「なんだ…?詠唱は…?素材は…?」
「なんか出来そうだからやってみたら出来た」
「なんか…もうむちゃくちゃだな…はは」
もう笑うしかない感じだ
「それじゃ次は水やってみるね」
「あぁ」
「ウォーター!」
プシュ~
「あれ?……パパカバンちょうだい」
「ウォーター!」
チョロロロロ…
「どうだ?って、聞くまでもないか」
「うん、たぶん、火系統だけだね」
「そうだな…他にも確認したいが…炎の神龍だからだな…」
「そうだね」
「それじゃ今日は帰るか、明日の朝もここへ来て、今度はドラゴニュートの姿も見せてもらおうか」
「うん、わかった!」
二人は家に帰り、夕食しながら母親に報告をした
翌朝…
「ユカー!行こうか!」
「はーい!」
ユカは部屋から大きなバスタオルと着替を持ってきた
「どうしたんだ?それ」
「服が破れたら恥ずかしいからね」
「そっか、でも救助したときは破れてなかったぞ」
「たぶんそれはエンバークスが修復したんだと思う」
「そういうことか」
「それじゃやってみてくれ」
「うん!」
上着と靴を脱ぎ、スポーツブラの様なもの1枚になる
肩甲骨辺りが細くなっているやつだ
目を閉じ意識を集中する
腕の痣が輝き鱗が生えてくる
腕から生え…何かが違う
体格はドラゴニュートの時とは違い細マッチョのようになっている
爪も少しは長くなるがあの時程ではない
顔の変化も鱗で覆われて瞳孔が縦になるが人の顔の造りのままだ
バサッ
肩甲骨辺りから翼が生える
変身が完了した
「こんな人間っぽいのか?」
「ううん、初めてなった時はもっとドラゴンぽかったよ」
例えるならセガのゲーム「獣王記」のステージ2で変身するドラゴンの様だった
試しに手が回せない程の大木へパンチしてみる
バキッ!バサバサバサッ…ドドン!
簡単に折れてしまった
「凄いなこりゃ…」
父親が驚く
細いながらも筋力は数百倍になっている
もちろん骨もそれに合わせて強度が上がっている
ちなみにしっぽは…スボンを突き破ってしまった…
そして…口から軽くブレスを吐く。火事にならないように
ボボッ!
「もうなんでもありだな…」
「自分の意志で戻れるのか?」
「たぶんね、やってみる」
また意識を集中する
しっぽが縮みだした
鱗も腕へ集まっていく
顔をもとに戻る
全てが元通りになった
「やーん、破れてる…」
ズボン以外は…
家に帰り母親へ報告する
「あらまぁ!それじゃ次からはスカートにした方がいいんじゃないかしら」
母親らしい
次の日からは変身と魔術の練習を始めた
段々と思い通りに変身ができるようになってきた
魔術の方も火以外もスキルが上がってきた
火に関しては勝手にカンストしてしまっている
詠唱無しで最大レベルの魔術が使える様になっている
「ドラゴニュートの時は火魔術の威力が数倍になるみたいだね」
人間が出せる威力を超えてしまっている
人前で使うときは気をつけないと
夏休みの残りの日数はまだある
どこか腕試しでダンジョンに潜ろうと考えた
「ハリィを誘ってみようかな」
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