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シフォンケーキと紅茶
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柚月と惣一、そして玉藻はちゃぶ台を囲んで座っていた。
玉藻は尻尾をゆらゆら揺らしながら語る。
「君たちへのお願いは3つ
1つ目のお願いは、『とある書物を探して』ほしい
2つ目は『とあるものを壊して』ほしい
3つ目は『私を解放して』ほしい」
「確認したいことが、いくつかあります」
柚月はすっと手を挙げる。
「書物とはどんな見た目ですか?
大きさや色は?何について書かれたものなのでしょうか?
2つ目のお願いの”とあるもの“とは?
3つ目の“解放”は、他の2つをクリアすることが条件ですか?」
矢継ぎ早の質問を、玉藻は頷きながら聞いていた。
動くたびに首元の鈴が、チリンチリンと鳴る。
「順を追って説明しよう…」
コホン、と玉藻は狐らしからぬ咳払いをした。
惣一はその様子を興味深そうにまじまじと観察している。
話の内容に集中しているというよりも、狐が人間のように振る舞うことを面白がっているようだ。
(本当に、緊張感がない)
柚月はこめかみを押さえてため息をつく。
玉藻はそんな視線に気づいているのかいないのか、構わず続ける。
「書物の見た目だが、色は赤色だ。
大きさは6~7寸(18~21cm)くらい。
200年ほど前のものだからボロボロだろう。
そこには、白峰狐伝説の真実が記されている」
「真実…?」
柚月と惣一は訝しげに首を傾げ、目配せをした。
子狐はなおも続ける。
「2つ目のお願いの『とあるもの』とは、書物に記されているものだ。
それがどんなものなのか、どこにあるのかを、私は知らない。
だが、その『とあるもの』こそ、私をこの場に縛り付けている原因だ」
抽象的でいまいち要領を得ない玉藻の話に、柚月は顔をしかめた。
惣一は薄く笑みを浮かべるだけで、内心を推し量れない。
ただ、今の状況を楽しんでいるように見えた。
「3つ目は、わからない」
柚月はわずかに目を見開いた。
「どういうことですか?」
「解放される、と推測はできるけど、確証はない…」
玉藻は歯切れが悪かった。
柚月はテーブルに身を乗り出す。
「それではもし期待通りの結果にならなかった際、私たちは手伝い損になりませんか?」
玉藻を見る目は、まるで胡散臭いものを見る目に変わった。
ずっと黙って成り行きを見守っていた惣一が口を挟む。
「僕はいいと思うけどな。探検みたいで面白そうだし」
飄々と言った。
柚月は惣一に冷たい視線を送る。
そして、座布団の上にちょこんと座っている玉藻に視線を戻す。
そもそも、この狐は本当に白峰狐伝説の狐なのだろうか。
実は悪霊が何かで、言う通りにしたら封印されていたとんでもないものを解放してしまったり、取り返しのつかないことが起こってしまうのではないか。
不穏な考えがぐるぐると柚月の頭を駆け巡る。
すると、玉藻がすっと頭を下げた。
「頼む。私には、自分を解放できない。
だから君たちに頼むしかないんだ」
「何故、自分ではできないのですか…?」
「大昔にこの神社の主と、そういう契約をしたんだよ」
「今まで他の誰かに頼んだことはないのですか…?」
「ないよ。ここまで力が弱まったのは本当に最近のことだからね」
玉藻は、しゅんと肩を落とし、俯く。
淋しげに、チリンと鈴が鳴った。
柚月はため息をつくと、玉藻と惣一を交互に見て天を仰いだ。
惣一がそんな柚月を横目に見ながら、口を開いた。
「玉藻様、大丈夫だよ。
柚月はこう見えて、情に厚いんだ」
彼は爽やかな笑みを浮かべながら、肩を落とす玉藻に耳打ちする。
これで断ったら、柚月が悪者のようではないか。
惣一は絶対に今の状況を面白がっている。
柚月は渋々、というふうに言った。
「仕方ありませんね…
ひとまず、玉藻様のお願いを叶えることにしましょう」
その言葉を聞いた玉藻の顔が、ぱあっと明るくなる。
「よかった!
神様なのに、君たちに願いを叶えて貰うことになってすまないね」
本当に、やけに人間味のある狐だ。
***
「まずは書物を探すところからでしょうか」
誰か心当たりがあればいいのだが。
この村の人には聞けないし、所在を知っていそうな祖母は、すでにこの世を去り、残留思念だけが残っている。
残留思念は言葉を発さない。
祖母の息子である父は、この村が苦手で、祖母の家には泊まらずに、少し離れた街のホテルに宿泊している。
今この家にいるのは柚月だけだ。
「柚月、手当たり次第に探すのは難しいんじゃないかな」
惣一が静かな声で言う。
「とりあえず、お茶でも飲みながら作戦会議しよう」
惣一はケーキの箱を掲げて、にこりと笑いながら言った。
「それは…?」
「シフォンケーキ。
父さんが持っていけって。少し多かったから、玉藻様がいてちょうどよかった」
「狐はケーキを食べても大丈夫なのですか…?」
柚月は素朴な疑問を口にする。
「私は神様だから平気だよ」
玉藻は当たり前のように柚月と惣一に混ざってちゃぶ台を囲んでいた。
ケーキを食べる気満々のようだ。
「開けてみるね」
惣一がケーキの箱を開けると、真ん中に生クリームが詰まったふわふわのシフォンケーキがワンホール入っていた。
柚月は鼻腔をくすぐるバニラの甘い香りに思わず口元が綻んだ。
「美味しそう…
でもたしかに2人で食べるには多いですね」
「だろ?父さん張り切っちゃってさ」
一体なにを張り切ったのかは分からないが、ケーキには紅茶が合いそうだ。
たしか台所に茶葉があったはず。
「では、お茶を入れてきます」
柚月が立ち上がりかけたところで、
「柚月、私のぶんも」
玉藻が尻尾を揺らしながら主張した。
「玉藻様はお茶も飲めるのですか…?」
一体どうやって飲むのだろうか。
***
台所に立ってお湯を沸かしていると、惣一がふらりと入ってきた。
すると柚月を見るなり、くすりと笑った。
「君、台所が似合わないね」
この男はいつも失礼なことを言う。
「いかにも料理をしなさそうで悪かったですね。
なにを探しに来たのですか?」
「シフォンケーキを切るための包丁と取り分けるお皿」
それならば、と柚月は頭上の収納棚に手を伸ばす。
「たしか、ちょうどいいお皿がこのあたりに…」
めいいっぱい伸びをして、ぎりぎり届くくらいだ。
伸ばした手がぷるぷると震える。
「危ないなあ。僕が取るよ」
惣一が後ろから手を伸ばす。
柚月の背に惣一の体が密着する。
背中に惣一の体温が伝わる。
今まであまり気にしたことはなかったが、柚月よりも背が高く、細身ながらも筋肉がついている。
「取れたよ」
(…顔が近い)
振り向くと惣一の顔が柚月の直ぐそばにあった。
惣一はにっこりと微笑む。
「どうしたの?」
「…よくパーソナルスペースが近いと言われませんか?」
「言われたことないなあ」
惣一は嘯く。
「―――もしかして、意識してる?」
―――ピィイイイーー!!
やかんで沸かしていた湯が沸騰し、けたたましい音を立てた。
まるで、この男に気を許してはならないという警鐘のようだった。
「してません」
柚月は惣一を押しのけながら、カップに紅茶を注いだ。
「残念」
惣一は、これっぽっちも応えていなさそうな様子で言う。
「柚月」
不意に惣一の声が低くなる。
その瞳は、からかいの色を失っていた。
真っ直ぐな瞳で柚月を見る。
柚月の鼓動が跳ねる。
「紅茶、溢れてるよ」
「あ…」
注いでいた紅茶がカップから溢れ、テーブルに広がっていた。
惣一はくすくすと笑いながら、意味ありげに柚月を見た。
「あふれる前に言ってください」
これではまるで惣一の言動に動揺したようではないか。
腹立たしい。
いつもこの男のペースに飲まれてばかりだ。
柚月は頬が熱くなるのを感じながら、惣一に背を向け、テーブルを布巾で拭いた。
***
こぼれた紅茶を拭き、ケーキを取り分け、玉藻のもとに戻ると、玉藻は待っていましたとばかりに駆け寄ってくる。
「美味しそう!」
「あれ、紅茶淹れてくるんじゃなかったっけ?」
玉藻がきょとんと小首をかしげた。
「ふふ、柚月が溢しちゃったんだ」
惣一が愉快そうに笑う。
「…今、お湯を沸かしています」
柚月は惣一に恨みがましい視線を送りながら、呟いた。
玉藻は尻尾をゆらゆら揺らしながら語る。
「君たちへのお願いは3つ
1つ目のお願いは、『とある書物を探して』ほしい
2つ目は『とあるものを壊して』ほしい
3つ目は『私を解放して』ほしい」
「確認したいことが、いくつかあります」
柚月はすっと手を挙げる。
「書物とはどんな見た目ですか?
大きさや色は?何について書かれたものなのでしょうか?
2つ目のお願いの”とあるもの“とは?
3つ目の“解放”は、他の2つをクリアすることが条件ですか?」
矢継ぎ早の質問を、玉藻は頷きながら聞いていた。
動くたびに首元の鈴が、チリンチリンと鳴る。
「順を追って説明しよう…」
コホン、と玉藻は狐らしからぬ咳払いをした。
惣一はその様子を興味深そうにまじまじと観察している。
話の内容に集中しているというよりも、狐が人間のように振る舞うことを面白がっているようだ。
(本当に、緊張感がない)
柚月はこめかみを押さえてため息をつく。
玉藻はそんな視線に気づいているのかいないのか、構わず続ける。
「書物の見た目だが、色は赤色だ。
大きさは6~7寸(18~21cm)くらい。
200年ほど前のものだからボロボロだろう。
そこには、白峰狐伝説の真実が記されている」
「真実…?」
柚月と惣一は訝しげに首を傾げ、目配せをした。
子狐はなおも続ける。
「2つ目のお願いの『とあるもの』とは、書物に記されているものだ。
それがどんなものなのか、どこにあるのかを、私は知らない。
だが、その『とあるもの』こそ、私をこの場に縛り付けている原因だ」
抽象的でいまいち要領を得ない玉藻の話に、柚月は顔をしかめた。
惣一は薄く笑みを浮かべるだけで、内心を推し量れない。
ただ、今の状況を楽しんでいるように見えた。
「3つ目は、わからない」
柚月はわずかに目を見開いた。
「どういうことですか?」
「解放される、と推測はできるけど、確証はない…」
玉藻は歯切れが悪かった。
柚月はテーブルに身を乗り出す。
「それではもし期待通りの結果にならなかった際、私たちは手伝い損になりませんか?」
玉藻を見る目は、まるで胡散臭いものを見る目に変わった。
ずっと黙って成り行きを見守っていた惣一が口を挟む。
「僕はいいと思うけどな。探検みたいで面白そうだし」
飄々と言った。
柚月は惣一に冷たい視線を送る。
そして、座布団の上にちょこんと座っている玉藻に視線を戻す。
そもそも、この狐は本当に白峰狐伝説の狐なのだろうか。
実は悪霊が何かで、言う通りにしたら封印されていたとんでもないものを解放してしまったり、取り返しのつかないことが起こってしまうのではないか。
不穏な考えがぐるぐると柚月の頭を駆け巡る。
すると、玉藻がすっと頭を下げた。
「頼む。私には、自分を解放できない。
だから君たちに頼むしかないんだ」
「何故、自分ではできないのですか…?」
「大昔にこの神社の主と、そういう契約をしたんだよ」
「今まで他の誰かに頼んだことはないのですか…?」
「ないよ。ここまで力が弱まったのは本当に最近のことだからね」
玉藻は、しゅんと肩を落とし、俯く。
淋しげに、チリンと鈴が鳴った。
柚月はため息をつくと、玉藻と惣一を交互に見て天を仰いだ。
惣一がそんな柚月を横目に見ながら、口を開いた。
「玉藻様、大丈夫だよ。
柚月はこう見えて、情に厚いんだ」
彼は爽やかな笑みを浮かべながら、肩を落とす玉藻に耳打ちする。
これで断ったら、柚月が悪者のようではないか。
惣一は絶対に今の状況を面白がっている。
柚月は渋々、というふうに言った。
「仕方ありませんね…
ひとまず、玉藻様のお願いを叶えることにしましょう」
その言葉を聞いた玉藻の顔が、ぱあっと明るくなる。
「よかった!
神様なのに、君たちに願いを叶えて貰うことになってすまないね」
本当に、やけに人間味のある狐だ。
***
「まずは書物を探すところからでしょうか」
誰か心当たりがあればいいのだが。
この村の人には聞けないし、所在を知っていそうな祖母は、すでにこの世を去り、残留思念だけが残っている。
残留思念は言葉を発さない。
祖母の息子である父は、この村が苦手で、祖母の家には泊まらずに、少し離れた街のホテルに宿泊している。
今この家にいるのは柚月だけだ。
「柚月、手当たり次第に探すのは難しいんじゃないかな」
惣一が静かな声で言う。
「とりあえず、お茶でも飲みながら作戦会議しよう」
惣一はケーキの箱を掲げて、にこりと笑いながら言った。
「それは…?」
「シフォンケーキ。
父さんが持っていけって。少し多かったから、玉藻様がいてちょうどよかった」
「狐はケーキを食べても大丈夫なのですか…?」
柚月は素朴な疑問を口にする。
「私は神様だから平気だよ」
玉藻は当たり前のように柚月と惣一に混ざってちゃぶ台を囲んでいた。
ケーキを食べる気満々のようだ。
「開けてみるね」
惣一がケーキの箱を開けると、真ん中に生クリームが詰まったふわふわのシフォンケーキがワンホール入っていた。
柚月は鼻腔をくすぐるバニラの甘い香りに思わず口元が綻んだ。
「美味しそう…
でもたしかに2人で食べるには多いですね」
「だろ?父さん張り切っちゃってさ」
一体なにを張り切ったのかは分からないが、ケーキには紅茶が合いそうだ。
たしか台所に茶葉があったはず。
「では、お茶を入れてきます」
柚月が立ち上がりかけたところで、
「柚月、私のぶんも」
玉藻が尻尾を揺らしながら主張した。
「玉藻様はお茶も飲めるのですか…?」
一体どうやって飲むのだろうか。
***
台所に立ってお湯を沸かしていると、惣一がふらりと入ってきた。
すると柚月を見るなり、くすりと笑った。
「君、台所が似合わないね」
この男はいつも失礼なことを言う。
「いかにも料理をしなさそうで悪かったですね。
なにを探しに来たのですか?」
「シフォンケーキを切るための包丁と取り分けるお皿」
それならば、と柚月は頭上の収納棚に手を伸ばす。
「たしか、ちょうどいいお皿がこのあたりに…」
めいいっぱい伸びをして、ぎりぎり届くくらいだ。
伸ばした手がぷるぷると震える。
「危ないなあ。僕が取るよ」
惣一が後ろから手を伸ばす。
柚月の背に惣一の体が密着する。
背中に惣一の体温が伝わる。
今まであまり気にしたことはなかったが、柚月よりも背が高く、細身ながらも筋肉がついている。
「取れたよ」
(…顔が近い)
振り向くと惣一の顔が柚月の直ぐそばにあった。
惣一はにっこりと微笑む。
「どうしたの?」
「…よくパーソナルスペースが近いと言われませんか?」
「言われたことないなあ」
惣一は嘯く。
「―――もしかして、意識してる?」
―――ピィイイイーー!!
やかんで沸かしていた湯が沸騰し、けたたましい音を立てた。
まるで、この男に気を許してはならないという警鐘のようだった。
「してません」
柚月は惣一を押しのけながら、カップに紅茶を注いだ。
「残念」
惣一は、これっぽっちも応えていなさそうな様子で言う。
「柚月」
不意に惣一の声が低くなる。
その瞳は、からかいの色を失っていた。
真っ直ぐな瞳で柚月を見る。
柚月の鼓動が跳ねる。
「紅茶、溢れてるよ」
「あ…」
注いでいた紅茶がカップから溢れ、テーブルに広がっていた。
惣一はくすくすと笑いながら、意味ありげに柚月を見た。
「あふれる前に言ってください」
これではまるで惣一の言動に動揺したようではないか。
腹立たしい。
いつもこの男のペースに飲まれてばかりだ。
柚月は頬が熱くなるのを感じながら、惣一に背を向け、テーブルを布巾で拭いた。
***
こぼれた紅茶を拭き、ケーキを取り分け、玉藻のもとに戻ると、玉藻は待っていましたとばかりに駆け寄ってくる。
「美味しそう!」
「あれ、紅茶淹れてくるんじゃなかったっけ?」
玉藻がきょとんと小首をかしげた。
「ふふ、柚月が溢しちゃったんだ」
惣一が愉快そうに笑う。
「…今、お湯を沸かしています」
柚月は惣一に恨みがましい視線を送りながら、呟いた。
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