おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第九話『最高の畑と、土いじりの相棒』

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最高の露天風呂が完成した翌朝。
俺は、すっかり綺麗になった体で、新たな決意を固めていた。

「(風呂はできた。次は、食生活の改善だ……!)」

森の恵みは豊かで、日々の食料に困っているわけではない。だが、その収穫は天候や運に左右される。何より、フードコーディネーターとして、もっと食材のポテンシャルを引き出してやりたい、という欲求があった。

「よし、シラタマ!俺たち、畑を作るぞ!」
「キュイ?」
「自分たちで、食べるものを育てるんだ。そうすれば、毎日、安定して美味しいものが食べられるようになる!」

俺の熱弁に、シラタマはまだピンときていないようだったが、「何か楽しいことが始まる」という予感だけは感じ取っているらしく、嬉しそうに尻尾を振っている。

俺はまず、拠点の日当たりが一番良い場所に、畳四畳分ほどの小さなスペースを確保した。
ここに、俺たちの最初の農園を作るのだ。

「(何を植えるか……。まずは、森で見つけた、あの芋みたいな根菜と、甘酸っぱい木の実だな)」

ブッシュクラフトの知識だけでなく、フードコーディネatorとして学んだ食材の知識が、ここでも活きてくる。あの根菜は、乾燥に強そうだ。あの木の実は、日当たりを好むはずだ。
頭の中で、大まかな計画(プランニング)を立てていく。

「(土を耕して、畝(うね)を作って、種を植えて……。ああ、その前に、獣に荒らされないように、簡単な柵も必要か)」

やることは山積みだ。だが、その一つ一つが、未来の美味しい食事に繋がっていると思えば、不思議と笑みがこぼれてくる。
俺は、さっそく畑作りに必要な、基本的な道具を召喚した。

「(『小さなシャベル』と、『移植ごて』!)」

**ポンッ!ポンッ!**

**【創造力:100/100 → 80/100】**

二つともDランク。合わせて20消費。
俺はシャベルを手に取り、固い地面に突き立てた。ザクッ、という確かな手応え。
額に汗を浮かべながら、ひたすら土を耕していく。

「キュ!キュッ!」

すると、俺の様子を見ていたシラタマが、それを真似し始めた。
小さな前足で、一生懸命に土をカキカキしている。その健気な姿は、最高の癒やしだ。
……まあ、掘っているのは俺が作ったばかりの畝のど真ん中で、手伝いというよりは、むしろ邪魔になっているのだが。

「はは、シラタマ、そっちじゃないぞ」

そんな微笑ましいやり取りをしながら、なんとか畑全体の土を耕し終えた。
だが、ここで俺は、フードコーディネーターとして、もう一手間加えることにした。

「(この森の土は栄養がありそうだが、少し粘土質が強いな。水はけを良くして、もっと作物が育ちやすい環境にしてやらないと……)」

最高の食材は、最高の土壌から。料理と同じだ。
俺は、100均の園芸コーナーにあった、「土のサプリメント」とも言えるアイテムを思い描いた。

「(『腐葉土』と、『くん炭』!どちらも大きな袋物だから、コストは高いぞ……!)」

**ポンッ!ポンッ!**

**【創造力:80/100 → 40/100】**

二つともBランク!合わせて40も持っていかれた!
だが、目の前に現れた二つの袋には、未来の美味しい収穫への希望が詰まっている。
俺は、召喚した腐葉土とくん炭を、耕した土にまんべんなく撒き、もう一度丁寧に混ぜ込んでいく。
粘土質だった土が、空気を含んで、ふかふかになっていくのが手にとるように分かった。

「よし、最高の土ができた!」

いよいよ、植え付けだ。
俺は、森で採ってきておいた芋(種芋として使えそうなもの)と、木の実から取り出した種を、一つ一つ、丁寧に土の中に埋めていく。
「大きくなれよ」と、声をかけながら。

最後に、Cランクの『じょうろ』を召喚し、たっぷりと水をやって、全ての作業は完了した。
畑の周りには、小動物が入ってこないように、園芸用の支柱と麻ひもで、ささやかな柵も作っておいた。

夕暮れ時。
俺とシラタマは、完成したばかりの、希望に満ちた畑を、並んで眺めていた。
まだ、ただの土くれと、小さな柵があるだけだ。
だが、俺の目には、青々とした葉が茂り、たくさんの実がなっている、未来の光景が見えていた。

俺は、隣に座るシラタマの、土で少し汚れた頭を撫でながら、満足げに呟いた。

「いいか、シラタマ。これが、俺たちの畑だ」
「キュ?」
「ここから芽が出て、大きく育てば……俺たちの食卓は、もっと、ずーっと豊かになるんだぞ」

その言葉に、シラタマは、今日一番の笑顔で「キュイ!」と、高らかに鳴いた。
まるで、「任せとけ!」とでも言うように。

(つづく)
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