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第十一話『キミの名は、つちのこ』
しおりを挟むキラキラと輝く、二つの瞳。
土の中から顔を覗かせた小さな生き物は、俺とシラタマの様子を、じっと、固唾をのんでうかがっているようだった。
「(……かわいいな)」
それが、俺の最初の感想だった。
手のひらに乗るほどの大きさ。土でできた、丸みを帯びた体。頭のてっぺんから、ぴょこんと生えた双葉。
その姿には、キバいのししのような凶暴さも、ゴブリンのような狡猾さも、一切感じられない。
「(土の人形……?いや、生きてる。じゃあ、モンスターの一種か?……でも、モンスターっていうには、あまりにも小さくて、か弱いな……)」
前世の知識を総動員してみる。
おとぎ話に出てくる、コロポックルとか、ノームとか、そういうのに近い存在だろうか。
いや、ここは日本じゃないんだしな。もっと、シンプルだ。
「(土から生まれて、土に生きる、土の子……みたいな感じか)」
その時、俺の脳裏に、前世で見たテレビのUMA特集が、ふと蘇った。
「つちの、こ……」
思わず、口の中でその響きを転がす。日本の有名な未確認生物。ずんぐりむっくりした、蛇のようなやつ。
目の前の、この可愛らしい生き物とは似ても似つかないが、その音の響きが、妙にしっくりきた。
「よし」
俺は、いつまでも「あいつ」と呼ぶわけにはいかないと思い、意を決した。名前は、関係性を築くための、最初の贈り物だ。
俺は、できるだけ優しい声で、その小さな生き物に向かって語りかけた。
「君、名前はあるのか?もし、ないなら……俺が、つけてもいいかな?」
小さな生き物は、こてん、と首を傾げた。
「君の名前は、今日から**『つちのこ』**だ。どうかな?」
その言葉に反応するように、つちのこの頭の双葉が、ぴこん、と嬉しそうに揺れた。肯定、と受け取っていいのだろうか。
こうして、俺たちの畑の小さな神様は、「つちのこ」という、ちょっと変わった名前を持つことになった。
つちのこという仲間はできたものの、その臆病な性格は相変わらずだった。
俺たちが畑にいる間は、土の中から顔を半分だけのぞかせているだけで、なかなか全身を見せてはくれない。
夜、俺たちが拠点で眠っている間に、こっそりと出てきて、植物の成長を手伝ってくれているようだった。
「(……もっと、安心して過ごせる場所があれば、心を開いてくれるかもしれないな)」
そうだ、と俺は思いついた。
つちのこ専用の、「家」を作ってあげよう。
俺はスキルを発動し、100均の園芸コーナーにあった、ある商品をイメージした。
「(一番小さいサイズの、『素焼きの植木鉢』と……ふかふかのベッドになる、『水苔』!)」
**ポンッ!ポンッ!**
**【創造力:30/100 → 15/100】**
植木鉢がDランクで10、水苔がEランクで5。合わせて15消費。
手の中に現れた、温かみのあるオレンジ色の植木鉢と、乾燥した水苔の束。
俺は、畑の隅にある、雨が直接当たらない木の根元を選んだ。
そして、植木鉢をそっと横向きに置き、水で戻した水苔を、中にふかふかに敷き詰めてやる。
「よし、完成だ!つちのこ専用・テラコッタハウス!」
シラタマが「キュ?」と、不思議そうにその小さな家を覗き込んでいる。
「しーっ。気に入ってくれるといいんだが」
俺とシラタマは、少し離れた場所から、息を殺してその様子を見守った。
しばらくすると、畑の土がもぞもぞと動き、つちのこが、おそるおそる顔を出した。
そして、自分のテリトリーに、見慣れないオレンジ色の物体があることに気づく。
つちのこは、警戒しながらも、ゆっくり、ゆっくりと、新しい家に近づいていった。
入り口の匂いをクンクンと嗅ぎ、中のふかふかな苔を、小さな手でちょいちょいと触っている。
そして……。
すぽん、と、まるで最初からそこが自分の場所だったかのように、心地よさそうに収まった。
中で丸くなると、頭の双葉だけを、満足げにぴこぴこと揺らしている。
「(……よかった。気に入ってくれたみたいだ)」
その日の夕方。
俺とシラタマが拠点からそっと畑の様子をうかがうと、つちのこは、その小さな家の中で、幸せそうに丸くなって眠っていた。
その姿を見て、俺の心は、温かいもので満たされた。
翌朝、俺は、信じられない光景を目にすることになる。
つちのこの家の周りだけ、昨日よりも、さらに植物の成長が早まっているのだ。まるで、つちのこの安らかな眠りが、大地に力を与えているかのように。
新しい仲間との、確かな絆の始まり。
俺たちのスローライフは、もっと、ずっと、豊かで、優しくなっていきそうだった。
(つづく)
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