おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第十二話『燻製(くんせい)の香りは、最高のスパイス』

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あれから、一週間が過ぎた。
俺たちの生活は、驚くほど穏やかで、そして豊かだった。
その豊かさの中心にいたのは、間違いなく、畑の小さな住人『つちのこ』だ。

「……信じられないな」

朝一番に畑の様子を見に行った俺は、思わず感嘆の声を漏らした。
たった一週間で、植えた芋は力強い葉を茂らせ、木の実の種は可愛らしい双葉を元気に広げている。つちのこが住み着いた家の周りは、特に成長が著しい。

その家の入り口から、つちのこがひょっこりと顔を出した。
俺の姿を認めると、以前のような怯えは見せず、頭の双葉を嬉しそうに「ぴこん」と揺らす。
俺は、お礼として森で採ってきた一番甘い木の実を、そっと家の前に置いてやる。
つちのこは、その実を小さな両手で抱え、幸せそうに齧り始めた。

「いつもありがとうな、つちのこ」
「キュ!」

俺の肩の上から、シラタマも挨拶をする。すっかり、三人の間には確かな友情が芽生えていた。

畑の作物が育てば、食生活はさらに安定する。
だが、今の俺たちの主食は、やはり森で獲れる獣の肉だ。数日前に、幸運にも再びキバいのししを狩ることができ、食料には当分困らない。
問題は、その「保存」だった。

「(塩漬けだけだと、どうしても味が単調になる。もっと、こう……長期保存ができて、なおかつ、最高のツマミになるような……)」

フードコーディネーターとしての血が騒ぐ。
俺は、決意した。
人類の食の歴史が生んだ、偉大な発明。**『燻製』**に、挑戦しようと。

「よし、シラタマ、つちのこ!今日は、最高の保存食を作るための、最高の道具を作るぞ!」
「キュイ!」
「……♪」(つちのこが、双葉を揺らす)

大掛かりな燻製小屋はまだ無理だ。まずは、手軽に燻製作りができる、簡易的なスモーカーをDIYする。
俺は、スキルを発動し、必要な素材をイメージした。

「(本体は、あの四角い金属の箱……『一斗缶』!これはデカいぞ、Bランクは覚悟しないと!)」

**ポンッ!**

**【創造力:100/100 → 80/100】**

Bランク!20消費。目の前に、業務用の油などが入っている、おなじみの銀色の缶が現れた。
次に、食材を乗せるための網と、吊るすためのフック。

「(『バーベキュー網』を二枚と、『S字フック』のセット!)」

**ポンッ!ポンッ!**

**【創造力:80/100 → 65/100】**

網がDランクで10、フックがEランクで5。合わせて15消費。
最後に、香りの要。

「(初めての燻製だし、香りがマイルドで、何にでも合う『燻製チップ(サクラ)』でいこう!)」

**ポンッ!**

**【創造力:65/100 → 55/100】**

Dランク。10消費。
これで、材料は全て揃った。

俺は、まず『金槌』と太い『釘』を使い、一斗缶の側面に対流用の空気穴と、網を差し込むための穴を、カンカンと開けていく。
その金属音に興味を引かれたのか、シラタマが俺の周りをうろちょろし始めた。

「キュ?キュイ!(何してるの?)」
「ん?これはな、燻製っていう、肉をもっと美味しくする魔法の箱を作る作業だ」

俺がS字フックの袋を開けると、シラタマは、その銀色に輝くフックがいたく気に入ったらしい。
一つくわえて、自分の宝物にするつもりなのか、てちてちと拠点の方へ持って行こうとする。

「あ、こらシラタマ!それは後で使うんだから!」

そんなコミカルなやり取りを挟みながらも、作業は順調に進んだ。
一斗缶の内部に、二段になるようにBBQ網を設置し、上部にはS字フックをぶら下げるための針金を通す。
これで、**「お手製・一斗缶スモーカー」**の完成だ。

「よし、早速試してみるか」

俺は、塩漬けにしておいたキバいのししの肉の塊をS字フックに吊るし、薄切りにした肉と、森で拾った木の実を網の上に並べた。
そして、スモーカーの底に燻製チップを敷き詰め、熾火を数個、その上に置く。
蓋を閉めると、缶の隙間から、細く、白い煙が立ち上り始めた。

最初は、ただの焚き火のような匂いだった。
だが、10分、20分と経つうちに、その香りは、劇的に変化していく。
サクラチップの、甘く、そしてどこか懐かしい、スモーキーな香り。
それが、肉の脂の焼ける香ばしい匂いと混じり合い、今までこの森で経験したことのない、深く、複雑で、そして猛烈に食欲をそそる芳香となって、拠点一体に漂い始めた。

「……キュゥゥゥ……クンクン……」

昼寝をしていたはずのシラタマが、その匂いに誘われて、スモーカーの周りをソワソワと歩き回っている。
畑にいた、つちのこまでもが、その香りに気づいたのか、おずおずと家の外まで出てきて、鼻をひくつかせていた。

俺は、三人の期待に満ちた視線を感じながら、立ち上る煙を見つめていた。
それは、ただの煙ではない。食材を、ただの保存食から、至高のご馳走へと昇華させる、魔法の煙だ。

「(さて、どんな味になるかな……最高の傑作か、それとも、ただの煙たい塊か……)」

俺の期待と、腹の虫の音は、燻製の香りと共に、どこまでも膨らんでいく。

(つづく)
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