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第十四話『最高の飲み物を探して』
しおりを挟む燻製の、あの暴力的なまでの旨さの余韻は、翌朝になっても俺の舌に残っていた。
朝食をとりながらも、俺の頭の中は、一つのことでいっぱいだった。
「(……やっぱり、飲み物が欲しい)」
ただの喉の渇きを潤す水ではない。
あの濃厚な燻製の味と、完璧なマリアージュを奏でる、特別な一杯が。
「よし!」
俺は、朝食の食器を洗いながら、高らかに宣言した。
「シラタマ!つちのこ!今日は、森に宝探しに行くぞ!」
「キュイッ!」「……♪」
俺の言葉に、シラタマは冒険の予感に尻尾を振り、つちのこは俺の足元で嬉しそうに双葉を揺らした。
宝の名は、野生の果実。以前、森の散策中に偶然見つけた、ルビーのように赤く輝くベリーだ。
「(とはいえ、手ぶらで行くわけにはいかないな)」
俺は、効率よく、そして安全に収穫するための準備を始めた。
まず、どうやって収穫するか。あの果実は、少し高い枝や、トゲのある茂みの中に実っていた。
「(手を伸ばして一つ一つ摘むのは、効率が悪いし、危険だ)」
俺は、ある道具をイメージした。
「(アウトドアコーナーの定番、『レジャーシート』!)」
**ポンッ!**
**【創造力:55/100 → 30/100】**
Bランク。25消費。やはり大きいものはコストがかかる。
だが、これさえあれば、木の下に広げて枝を揺するだけで、果実を傷つけずに大量収穫できるはずだ。
「(次に、運ぶための容器。潰れたら元も子もないからな……)」
**ポンッ!ポンッ!**
**【創造力:30/100 → 10/100】**
Dランクの『プラスチック製のカゴ』を二つ。合計20消費。
これで、準備は万端だ。
「よし、行こうか!」
俺はカゴを背負い、シラタマと、肩の上に乗っかったつちのこと共に、拠点を出発した。
記憶を頼りに、森の少し奥深くへと足を踏み入れていく。
道中、シラタマは先行して蝶を追いかけたり、大きな木の匂いを嗅いでマーキングしたりと、大はしゃぎだ。
俺の肩の上にいるつちのこは、道端の花や木々を見つけるたびに、頭の双葉を「こんにちは」とでも言うように、ぴこぴこと揺らしている。
穏やかで、幸せな時間だった。
半時ほど歩いただろうか。
俺の記憶の通り、日当たりの良い開けた場所に、お目当ての木が群生していた。
高さ3メートルほどの低木に、キラキラと輝く赤い果実が、たわわに実っている。
「あった……!」
まずは、安全確認だ。フードコーディネーターとして、未知の食材に対する警戒は怠らない。
俺は、果実を一つ摘み、潰して、その汁を腕の内側に少量だけ塗布した。サバイバル技術の一つ、「パッチテスト」だ。
しばらく待っても、皮膚に赤みやかゆみが出ないことを確認する。
「(よし、アレルギー反応はなしか。味も……うん、甘酸っぱくて、濃厚だ。これはいける!)」
安全を確認したところで、いよいよ収穫開始だ。
俺は、レジャーシートを木の下いっぱいに広げた。
「シラタ-マ、あの低い幹を、思いっきり揺さぶってくれ!」
「キュイッ!(まかせろ!)」
シラタマは、助走をつけると、得意のタックルを木の幹に「ゴンッ!」とお見舞いした。
その衝撃で、枝が大きくしなり――
ザアアアアアアッ!
まるで、赤い雨だ。
熟した果実が、レジャーシートの上に、滝のように降り注いだ。
その光景は、あまりにも美しく、そして豊かだった。
「すげえ……!」
俺たちは夢中になった。
シラタマが木を揺らし、俺とつちのこが、シートの上に落ちた果実を、傷つけないように優しくカゴへと移していく。
あっという間に、二つのカゴは、宝石のような赤い果実でいっぱいになった。
拠点に帰り、収穫した大量の果実を前に、俺は最高の満足感に浸っていた。
甘酸っぱい、濃厚な香りが、拠点中に満ちている。
「よし、最高の素材は手に入った」
俺は、キラキラと輝く果実を一つ、口に放り込んだ。
じゅわ、と広がる、自然の恵み。
「(問題は、ここからどうやって、最高の飲み物に変えるか、だな……)」
ただジュースにするのか?それとも、発酵させて、お酒に挑戦してみるのか?
そのためには、何が必要だ?『砂糖』は?『酵母』は?そして、保存するための『ガラス瓶』は……?
俺の頭の中に、次なるDIYへの、甘くて、それでいて、とてつもなく奥深い課題が、溢れ始めた瞬間だった。
(つづく)
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