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第十五話『初めての醸造と、レベルアップの祝福』
しおりを挟む収穫した、宝石のように美しい赤い果実。
その甘酸っぱい香りに包まれながら、俺は究極の選択を迫られていた。
「(ジュースにするか、それとも、酒にするか……)」
ジュースなら、すぐに最高の飲み物が手に入る。だが、保存がきかない。この大量の果実、すぐに飲みきれるはずもなかった。
一方、果実酒にすれば、長期保存が可能になるどころか、熟成によって、さらに深い味わいが生まれる。最高の燻製には、最高の酒が合うに決まっている。
「……よし」
挑戦しよう。この世界で、初めての「醸造」に。
フードコーディネーターとして、発酵の知識も一通りは学んでいる。
問題は、材料だ。酵母が糖分を分解して、アルコールと二酸化炭素を生み出す。そのためには、発酵を安定させるための、追加の「糖分」が不可欠だ。
「(だが……1kgの上白糖なんて、100均にあるわけがない。せいぜい200gの小袋がいいところ。それを何袋も召喚するのは、コストがかかりすぎる……)」
俺は、プロとしての知識を総動員し、代替案を探す。
「(待てよ。上白糖にこだわる必要はない。果実酒なら、ゆっくり溶けて、味をまろやかにする……そうだ、あれだ!)」
俺は、必要な道具と材料を、順番に召喚していく。
まずは、醸造の器。
「(『大きなガラス瓶(果実酒用)』!これはBランクは覚悟しないと……!)」
**ポンッ!**
**【創造力:100/100 → 75/100】**
Bランク。25消費。やはりデカい。目の前に、4リットルは入りそうな、立派なガラス瓶が現れた。
次に、糖分。
「(『氷砂糖』!これなら、500gくらいで100均にあったはずだ!)」
**ポンッ!**
**【創造力:75/100 → 55/100】**
これもBランク。20消費。ずっしりと重い氷砂糖の袋。
最後に、命の素。
「(パン作り用の、『ドライイースト』!)」
**ポンッ!**
**【創造力:55/100 → 45/100】**
Dランク。10消費。
これで、役者は揃った。
俺はまず、収穫した果実を丁寧に洗い、水気を切ってから、大きなガラス瓶の中に投入していく。
そして、その上から、氷砂糖をザラザラと加えた。
最後に、ぬるま湯で活性化させたドライイーストを、そっと注ぎ入れる。
「(よし……。これで、酵母が果実と氷砂糖の糖分を食べて、アルコールと二酸化炭素を出してくれるはずだ。温度管理が重要だな……)」
俺は、瓶の中身を木の棒で優しくかき混ぜ、布で軽く蓋をした。完全密閉すると、発酵で発生するガスで瓶が爆発する危険があるからだ。
全ての準備を終え、俺が「ふぅ」と息をついた、その瞬間だった。
ピカッ!
脳内に、今まで経験したことのない、鮮やかで、温かい光が溢れた。
そして、直接、声が響き渡る。
**【――創造レベルが 2 に上がりました!――】**
**【――『創造力』の最大値が 100 → 120 に上昇しました!――】**
**【――称号:『キャンプシェフ』を獲得しました!――】**
**【――称号効果:調理器具・調味料の召喚コストが、常に5%軽減されます!――】**
「な、なんだ!?」
突然の情報奔流に、俺は思わず尻餅をついた。
レベルアップ……?称号……?コスト軽減!?
「(モンスターも倒してないのに……なぜ……?)」
そして、俺は気づいた。
ただ100均グッズを召喚するだけではない。家を作り、風呂を作り、畑を作り、そして今、酒を造る。
この世界で、**新しい何かを「創造」する行為そのもの**が、俺を成長させているのだ、と。
このレベルアップは、俺が「初めての醸造」という、極めて高度で創造的な行為を成し遂げたことへの、この世界からの「祝福」なのだ。
「すげえ……」
興奮が冷めやらぬ中、さらに、俺の脳内に新たな「ひらめき」が流れ込んできた。
**【――新しいDIYレシピを習得しました:『簡易エアロック』――】**
**【――必要な素材:『ゴム栓』+『ビニールチューブ』――】**
その設計図が、頭の中に浮かび上がる。
瓶にゴム栓をし、そこにチューブを刺す。チューブのもう片方を、水の入ったコップなどに入れる。
「(そうか!これがあれば、瓶の中のガス(二酸化炭素)だけを外に逃がして、外の雑菌は中に入れないようにできる!これなら、もっと安全に、完璧な果実酒が作れるじゃないか!)」
レベルアップによって、新たな知識と、さらなる可能性を手に入れた。
俺は、興奮と期待に胸を膨らませながら、発酵を始めたばかりのガラス瓶を、愛おしそうに見つめていた。
この一本の瓶の中には、俺たちの未来の、甘い喜びが詰まっている。
(つづく)
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