おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第十六話『新しい道具と、招かれざる客』

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レベルアップの興奮から一夜明け、俺はさっそく、昨日ひらめいた新しい知識を試してみることにした。

「(『簡易エアロック』……これがあれば、もっと安全に、完璧な果実酒が作れるはずだ)」

俺は、果実酒の瓶の口のサイズに合う、円錐形の『ゴム栓』と、細長い『ビニールチューブ』をイメージする。
そして、スキルを発動した。

**ポンッ!ポンッ!**

**【創造力:120/120 → 110/120】**

二つともEランク。合わせて10消費。
だが、その時、俺は自分の感覚に、明らかな変化が起きていることに気づいた。

「(お……?ほんの少しだけど、確かに『創造力』の消費が軽い……!これが、称号『キャンプシェフ』の効果か!)」

本来なら、合わせて12~13は消費していただろう感覚だ。たった5%の軽減。しかし、この積み重ねが、今後の生活を大きく左右することは間違いない。
俺は、ゴム栓にナイフで穴を開け、そこにビニールチューブを差し込む。そして、完成したエアロックを、果実酒の瓶にしっかりと取り付けた。チューブのもう片方の端を、水の入ったコップに入れる。

ポコッ……。

しばらくすると、チューブの先から、小さな気泡が一つ、静かに現れた。
酵母が元気に働き、二酸化炭素を排出している証拠だ。これなら、外の雑菌が入ることなく、安全に発酵を進められる。

「よし、完璧だ」

その様子を、シラタマが「キュ?」と不思議そうに首を傾げて見つめている。
「これはな、シラタマ。美味しいお酒になれー、っていう、おまじないみたいなもんだ」

新しい道具の性能に満足し、俺は鼻歌交じりで、日課である畑の様子を見に向かった。
つちのこに挨拶をし、作物の成長具合を確認する。
だが、そこで俺は、信じられない光景を目にすることになる。

「……は?」

大切に育てている芋の葉が、何枚か、無残にかじられているのだ。
それだけではない。ふかふかにしたはずの畑の土には、小さな、見慣れない足跡が無数に残されていた。

「な、なんだこれ!?誰の仕業だ!?」

凶暴なモンスターの仕業ではない。足跡が、あまりにも小さい。
俺は、シラタマと一緒に「名探偵」となって、犯人探しを開始した。
足跡は、畑の隅にある、俺たちが作った柵の下の、わずかな隙間へと続いていた。そして、その先には、小さな巣穴が一つ。

「(こいつか……!)」

俺は、巣穴の前で息を殺して待ち伏せた。
しばらくすると、巣穴から、ひょっこりと犯人が顔を出す。
それは、ウサギのような長い耳と、モルモットのようなずんぐりとした体を持つ、灰色の毛玉のような生き物だった。

「(……かわいいな、おい)」

思わず、力が抜ける。
犯人は、俺たちの存在に気づかず、また畑に侵入しようと、短い前足で土を掘り返し始めた。

「こらっ!」

俺が声を上げると、その生き物は「ピクッ!」と全身を震わせ、脱兎のごとく森の奥へと逃げていった。

「はぁ……どうしたものか」

怒る気には、なれなかった。
美味しいものを食べたい、という気持ちは、俺も、シラタマも、そして、あの子も同じなのだ。
かといって、このまま畑を荒らされ続けるわけにもいかない。

「(……そうだ。あの子を傷つけずに、畑に入ってこないように、優しく教えてあげよう)」

俺は、100均の園芸コーナーや防犯コーナーにあった、ある商品を思い出した。
平和的かつ、知的な防犯システムだ。

俺は、スキルで必要なものを召喚した。

「(鳥よけの**『キラキラ反射テープ』**と、ドアベル用の**『小さな鈴』**。それから、見えにくい**『釣り糸』**!)」

**ポンッ!ポンッ!ポンッ!**

**【創造力:110/120 → 95/120】**

全てEランク。合わせて15消費。
俺はまず、畑を囲う柵の、地面すれすれの高さに、見えにくい釣り糸を二重、三重に張り巡らせた。
そして、その糸のところどころに、小さな鈴と、短く切った反射テープを結びつけていく。

「よし、完成だ。『びっくりトラップ』」

これなら、あの灰色の毛玉が畑に侵入しようとして糸に触れると、「チリンチリン!」という音と、太陽の光を反射するキラキラした光で、びっくりして逃げていくはずだ。
動物は、未知の音と光を極端に嫌う。

俺は、完成した畑の防犯システムを眺め、満足げに呟いた。
「これで、あの子も、俺たちの畑も、お互い平和に暮らせるな」

シラタマも、チリン、と鳴る鈴の音に興味津々で、前足でちょいちょいと触って遊んでいる。
俺たちのスローライフは、毎日が、小さな問題と、それを解決する小さな知恵の繰り返しだ。
そして、それが、どうしようもなく楽しかった。

(つづく)
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