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第十七話『初めての収穫祭と、つちのこのお礼』
しおりを挟むあれから、数週間が過ぎた。
俺たちの畑は、つちのこという、小さくて偉大な神様のおかげで、信じられないほどの成長を遂げていた。
芋の蔓は青々と茂り、地面は俺の想像以上に大きく盛り上がっている。木の実も、枝がしなるほど、たわわに実っていた。
「……よし!」
俺は、太陽が一番高い位置に昇ったのを見計らって、高らかに宣言した。
「シラタマ!つちのこ!今日、俺たちの最初の『収穫祭』を始めるぞ!」
「キュイッ!」「……♪」
俺の言葉に、シラタマは大喜びで飛び跳ね、つちのこはその家の入り口で、頭の双葉を誇らしげに揺らした。
俺は、Dランクの『軍手』を召喚し、両手にはめる。
まずは、芋掘りからだ。
「いくぞ、シラタマ!」
「キュウ!」
俺がシャベルで土を掘り起こすと、シラタマが、その自慢の前足で土をかき分けていく。
宝物を探すような、最高の共同作業だ。
そして、ゴロン、と。
土の中から、丸々と太った、立派な芋が顔を出した。一つじゃない。一つの蔓から、五つも六つも、大家族のように連なっている。
「すげえ……!大豊作だ!」
木の実も、カゴいっぱいに収穫できた。
夕方になる頃には、俺たちの家の前は、採れたての作物で、まるで小さな市場のようになっていた。
「(……さて、と)」
獲れたての新鮮な食材を前に、俺のフードコーディネーターとしての血が騒ぐ。
この最高の食材たちを、最高の形で味わうための、収穫祭の特別フルコース。
メニューは、もう決めていた。
「(まずは、飲み物だな)」
俺は、拠点の中で静かに熟成の時を待っていた、あのガラス瓶を手に取った。
蓋を開けると、ふわり、と甘く、そして芳醇な香りが立ち上る。
中の液体は、美しいルビー色に染まっていた。
俺は、木を削って作ったコップに、その『自家製果実酒』を注ぐ。
「(……うん、完璧な出来だ)」
そして、メインディッシュ。
主役は、もちろん、採れたての芋だ。
最高の素材には、最高の調理法を。俺は、キャンプ料理の王道を選択した。
「(『アルミホイル』!)」
**ポンッ!**
**【創造力:120/120 → 110/120】**
Cランク。10消費(称号効果で割引)。
俺は、芋を丁寧に洗い、濡れた新聞紙(の代わりの、繊維質な大きな葉)で包み、さらにその上からアルミホイルで隙間なく包んでいく。
そして、それを、熾火になった焚き火の中へと、直接放り込んだ。
あとは、じっくりと、甘みが引き出されるのを待つだけだ。
数十分後。
焚き火から、蜜が焼けるような、甘く香ばしい匂いが漂ってきた。
俺は、火ばさみで、熱々の銀色の塊を取り出す。
「よし、できたぞ!」
アルミホイルを開くと、中から湯気と共に、黄金色に輝く、ホクホクの『焼き芋』が姿を現した。
箸でスッと割ると、中から蜜がじゅわ、と溢れ出す。
「さあ、食べよう!」
俺は、熱々の焼き芋をシラタマの前に置いてやる。
シラタマは、そのあまりの甘い香りに、夢中で食らいついた。
「キュフ!キュフゥゥゥ!(あつい!うまい!)」
俺も、一口。
「…………うまい…………」
ねっとりとした食感。そして、口の中に広がる、濃厚で、蜜のような甘み。
これほどの芋は、前世でも食べたことがなかった。
自家製の果実酒を一口飲む。フルーティーな酸味が、芋の甘さをさらに引き立てる。
最高だ。最高の、収穫祭だ。
その時だった。
俺たちが食事に夢中になっているのを、静かに見ていたつちのこが、おもむろに畑の土に、シュルシュルと潜っていった。
「ん?どうした、つちのこ?」
そして、しばらくすると、またひょっこりと顔を出す。
その口には、何か、小さなものがくわえられていた。
つちのこは、俺の足元までやってくると、それを、そっと置いた。
それは、今まで見たこともない、**キラキラと黄金色に輝く、小さな豆のようなもの**だった。
まるで、光そのものを固めたような、不思議な輝きを放っている。
「……これ、くれるのか?」
「……♪」
つちのこが、こくりと頷くように、双葉を揺らした。
俺は、それが、つちのこからの「ありがとう」の贈り物であり、この畑で、つちのこの力によってのみ育つ、特別な作物であることを、直感的に理解した。
最高の焼き芋と、最高の酒。そして、最高の仲間からの、最高の贈り物。
俺は、焚き火を囲みながら、この上ない幸福感に包まれていた。
「(最高の芋が手に入った。次は、この芋と、つちのこがくれた黄金の豆を使って、もっとすごい料理を作ってみたいな……)」
俺の頭の中に、新たな創作意欲が、炎のように燃え上がっていた。
「(例えば、揚げ物とか……?フライドポテトに、コロッケ……!そのためには、大量の油と、もっと安定した調理場が必要か……?)」
俺たちのスローライフは、一つの目標を達成すると、すぐに、また新しい、美味しい目標が見つかる。
それは、なんて幸せなサイクルなんだろう。
(つつく)
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