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第十八話『揚げ物はロマンと、自家製油の挑戦』
しおりを挟む収穫した芋を眺めながら、俺の頭の中は、前世の記憶でいっぱいになっていた。
それは、フードコーディネーターとしてではなく、ただの「食いしん坊」としての記憶だ。
「いいか、シラタマ、つちのこ」
俺は、目をキラキラさせながら、二人の相棒に熱く語り始めた。
「この芋という食材のポテンシャルは、焼き芋だけじゃないんだ。これを細く切って、高温の油で揚げれば『フライドポテト』になる。外はカリカリ、中はホクホク。塩を振って食べるのが最高なんだ」
「キュ?(ぽてと?)」
「……♪」(つちのこが、双葉を揺らす)
「さらにだ!この芋を潰して、ひき肉と混ぜて、衣をつけて揚げれば『コロッケ』になる!サクッとした衣の中から、とろーりとした芋が……ああ!」
想像しただけで、腹の虫が盛大に鳴った。
俺の巧みなプレゼンに、シラタマとつちのこも、食べたこともない「揚げ物」という未知の料理に、すっかり心を奪われているようだった。
「よし、決まりだ!今日のディナーは、最高の揚げ物パーティーだ!」
そう高らかに宣言したはいいものの。
いざ作ろうとして、俺は、文明人として、そして料理人として、あまりにも初歩的で、しかし決定的な問題に直面した。
「(……油が、ない)」
揚げ物をするには、大量の油が必要だ。
俺は、頭の中のカタログを検索する。『サラダ油』。100均の棚には、確かに存在する。だが、せいぜい200ml程度の小さなボトルだ。Dランクだとしても、あの芋を揚げるのに必要な量を揃えるには……
「(ボトル5本で50消費……いや、10本はいるか?だめだ、創造力が空になる!)」
召喚は、非効率すぎる。
俺は、天を仰いだ。そして、覚悟を決めた。
「(……ならば、作るしかない。この森で、俺たちの手で、油を!)」
フードコーディネーターの知識が、解決策を探し始める。
動物の脂を精製するラードか?いや、もっと上品な香りの、植物性のオイルが欲しい。
俺の脳裏に、先日燻製にした、あの木の実が浮かんだ。クルミに似た、栄養価の高い、あいつだ。
「よし、あれなら、良質な油が搾れるはずだ!」
俺は、まず森でその木の実を、カゴいっぱいに集めてきた。
問題は、どうやって油を搾り取るかだ。
「(原始的な圧搾機を作る……!)」
地面に、簡単な設計図を描く。頑丈な丸太でフレームを組み、そこに「ネジの力」を応用して、強い圧力をかける仕組みだ。
俺は、スキルで、その心臓部となる道具を召喚した。
「(DIYコーナーにあった、金属製の『C型クランプ』!こいつが、ネジプレスの代わりになる!)」
**ポンッ!**
**【創造力:120/120 → 105/120】**
Cランク。15消費。
手の中に、ずしりと重い鉄の塊が現れた。
あとは、砕いた木の実を入れる袋と、油の受け皿だ。
「(『だしパック用の布袋』と、『ステンレス製のボウル』!)」
**ポンッ!ポンッ!**
**【創造力:105/120 → 98/120】**
布袋がEランクで2、ボウルがDランクで5(称号効果で割引済)。合わせて7消費。
俺は、現地調達した丸太を組み上げ、そこにC型クランプとボウルを固定していく。
「キュイ!(手伝う!)」
シラタマが、木の実の硬い殻を、器用に前足で割っていく。時々、中身をつまみ食いしているのはご愛嬌だ。つちのこも、小さな手で、殻と実をより分けるのを手伝ってくれている。
三人の、息の合った(?)共同作業。
数時間後。
俺たちの拠点に、不格好だが、力強い手作りの圧搾機が完成した。
「よし、いくぞ……!」
俺は、布袋に詰めた粉々の木の実を圧搾機にセットし、C型クランプのハンドルを、ゆっくりと、しかし力強く締め上げていく。
ギシギシ……と、木と金属がきしむ音が、静かな森に響き渡る。
「(頼む……!出てくれ……!)」
さらに力を込めて、ハンドルを回す。
すると……。
布袋の隙間から、何かが、じわりと滲み出した。
ぽたり。
ステンレスボウルに、黄金色の液体が、一滴、落ちた。
そして、また一滴。
やがてそれは、細い糸となり、キラキラと輝きながら、ボウルの中へと注がれていく。
ナッツの、香ばしくて、豊かな香りが、あたりにふわりと広がった。
「……出た……」
俺と、シラタマと、つちのこは、息をのんで、その光景を見つめていた。
それは、俺たちが、自分たちの手で、この世界の恵みから生み出した、最初の「油」だった。
「よし……!」
俺は、勝利を確信した。
「これさえあれば、俺たちの料理は、次のステージに進めるぞ!」
黄金色の油は、俺たちの新しい食生活の扉を開ける、輝かしい希望の光に見えた。
(つづく)
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