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第四十四話『畑の小さな敵と、木酢液』
しおりを挟む夏の太陽を浴びて、俺たちの畑の作物はすくすくと育っていた。青々とした小麦の穂が風に揺れ、野菜の葉が力強く広がっている。その光景は、何時間見ていても飽きない、俺たちの努力の結晶だ。
だが、その穏やかな風景の中に、俺は小さな異変を見つけた。瑞々しい葉の裏に、びっしりと群がる、小さな虫の影。
「ユキ殿、許せん!私が一匹残らず指で潰してくれよう!」
リディアが憤慨し、腕まくりをする。だが、それではキリがない。
「もっとスマートな方法で、野菜にも優しいやり方で解決しましょう」
俺は、化学薬品に頼らない、自然の力を使った防虫対策を提案した。
まず、木炭を作る過程で生まれる『木酢液』。
俺はスキルで100均の『蓋付きのオイルポット』を召喚すると、中に乾燥させた木のチップを詰め、蓋の隙間を粘土で軽く塞いだ。この金属ポットごと焚き火に入れることで、中を蒸し焼きにし、簡易的に木炭を作るのだ。
ポットが熱されている間に、二の矢を準備する。虫が嫌う刺激成分を持つ、特製のスプレー作りだ。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:128/150 → 125/150】
俺は『すり鉢』と『コーヒーフィルター』を召喚。森で採ってきたニンニクに似た香草と、ピリリと辛い木の実をすり鉢で念入りにすり潰し、水に漬けて成分を抽出する。そして、それをコーヒーフィルターで丁寧に濾して、濃縮液を完成させた。
やがて、火から下ろしたオイルポットが冷め、蓋を開ける。中には、見事な黒色の『木炭』ができていた。そして、蓋の裏には、煙が冷えて液体になった、黒褐色の雫が付着している。これこそが、貴重な『木酢液』だ。
俺は召喚した『スプレーボトル』に、この木酢液と辛味濃縮液を混ぜ、特製防虫スプレーを完成させた。
「さあ、試してみましょう」
畑に戻り、虫が群がる葉の裏にシュッシュッと吹きかける。途端に、燻製のような香りと、ツンと鼻を突く辛い匂いが広がった。その強烈な匂いに、虫たちはたまらず、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。
「おお…!一匹残らずいなくなった…!」
リディアが、魔法でも見るような目で、その光景に驚いていた。
その日の夕食。
俺は、防虫対策の副産物である『木炭』を、レンガで作った火室にくべた。
薪と違い、煙が少なく、安定した高い火力を保つ、最高の燃料だ。
その上で、先日作ったばかりの、最高の燻製肉を炙る。炭火で熱せられた燻製肉から、極上の脂が滴り落ち、ジュウッという音と共に、天国のような香りが立ち上った。
「うまい…!薪で焼いた時とは、火の通り方が全く違う…!外はカリッとしているのに、中は驚くほどジューシーだ!」
リディアが、感動に打ち震えている。
俺は、してやったりと笑った。害虫対策さえも、俺たちの食生活を豊かにする、最高のスパイスなのだから。
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