おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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第四十九話『ゲリラ豪雨と、全天候型の知恵』

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夏の盛り。空には巨大な入道雲がもくもくとそびえ立ち、空気は肌にまとわりつくようにねっとりと湿っていた。ぴたりと風が止み、森の蝉の声だけが、じりじりと世界を焦がしている。この、嵐の前の静けさは、嫌な予感しかしない。

案の定、予感はすぐに現実のものとなった。
空が瞬く間に暗転し、大粒の雨が地面を容赦なく叩きつけ始める。それはあっという間に、バケツをひっくり返したようなゲリラ豪雨へと姿を変えた。

「うわっ!」

ちょうど燻製小屋の様子を見に行こうとした俺は、母屋から数歩踏み出しただけで、ぬかるんだ地面に足を取られた。跳ね上がった泥が、先日きれいにしたばかりのズボンを無残に汚す。これでは、どこへ行くにも一苦労だ。

「む……これでは騎士としての機動力が著しく削がれる。由々しき事態だ」

拠点に戻った俺の惨状を見て、リディアも深刻な顔で眉をひそめている。彼女の言う通り、せっかく整備した施設も、このぬかるみのせいで宝の持ち腐れになりかねない。

雨が上がり、強烈な太陽が再び顔を出すと、俺は次なるインフラ整備計画を皆に発表した。
雨でもぬかるまない**『石畳の道』と、濡れずに移動できる『屋根付きの通路』**の建設だ。

「長持ちする石畳を作るには、まず地面を掘って水はけを良くする基礎から作るんです。古代ローマ時代から続く、道作りの基本ですよ」

俺は物置から、以前魔改造した『シャベル』と、頑丈な『金槌』を持ち出してきた。リディアがその怪力で効率よく土を掻き出し、俺が後から小石や砂利を敷き詰め、金槌の背でトントンと叩き固めていく。一度召喚した道具が、こうして俺たちの生活に根付いていることが、なんだか少し誇らしい。

土台ができたところで、俺は雑草対策の切り札を召喚した。

ポンッ!
【創造力:150/150 → 131/150】

100均の園芸コーナーで売られている『防草シート』だ。Bランクのアイテムらしくコストは20だが、称号『クラフトマスター』の効果で19に軽減されている。
「この黒い布を一枚敷くだけで、面倒な草むしりの手間がなくなるんですよ」
「……なんと。魔法の布か?」

俺の説明に半信半疑のリディアを横目に、俺たちはシートの上に砂を敷き、近くで集めてきた平たい石を、一つ一つパズルのように組み合わせて並べていった。

道作りと並行して、通路の骨組みも建てていく。リディアが軽々と運んできた柱を立て、俺が梁を渡す。問題は、屋根材だ。広範囲を覆うには、それなりの大きさと防水性がいる。

俺は、防水性と広さ、そして何よりコストパフォーマンスを兼ね備えた、意外なアイテムを召喚することにした。まずは屋根材だ。

ポンッ!
【創造力:131/150 → 117/150】

バス用品コーナーの『シャワーカーテン』。Cランクで消費は15。これも素材扱いになるのか、称号効果で14になった。続いて、固定用の工具も。

ポンッ!
【創造力:117/150 → 112/150】

Dランクの工具『タッカー』だ。消費は5。軽減されて実質5弱だな。

青地に可愛らしい魚の模様がプリントされた半透明のシート。俺がこれを骨組みにタッカーでバチン、バチンと張り付けていくと、シラタマは魚の絵に大喜びで、下からジャンプしてタッチしようとじゃれている。だが、リディアは、そのあまりにも場違いなデザインに、静かに内心で葛藤していた。

(……なんと合理的な屋根材だ。実用性は認める。軽くて防水性も高い。認めるが……なぜ、魚なのだ……? 我らが聖域(サンクチュアリ)の景観として、これは正しい選択なのだろうか……?いや、しかし実用性は……)

数日後、全ての工事が完了した日に、またあのゲリラ豪雨がやってきた。
だが、もう慌てることはない。俺たちは、魚模様の屋根の下、ぬかるむことのない石畳の上を歩いて、燻製小屋から今日の分の食料を運んでくる。

通路の途中で足を止め、屋根を叩くリズミカルな雨音を聞く。数日前までは悩みの種だった自然の脅威は、今や心地よいBGMに変わっていた。

「すごいな、ユウキ殿。これなら、どんな雨でも快適だ」
感心しきった様子のリディアに、俺は乾燥ハーブで作った温かいお茶を手渡しながら、頷いた。

俺たちの拠点は、ただの建物の集まりから、雨の日さえも、その音を楽しみながら温かいお茶を飲める、全天候型の『村』へと、また一歩進化したのだった。
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