48 / 185
第四十八話『真夏の氷室と、テラコッタの知恵』
しおりを挟むうだるような暑さが続く、夏の盛り。俺は、日陰でぐったりしているシラタマと、額の汗を拭うリディアを見て、この季節ならではの課題に直面していた。
「せっかく釣った魚も、この暑さだとすぐに傷んでしまいますね。ああ…冷たい飲み物が飲みたい…」
その言葉に、リディアは「夏に涼を得るのは、王侯貴族でもなければ難しいからな」と肩をすくめる。だが、俺の頭の中には、電気も氷も使わずに涼を生み出す、古代の知恵が眠っていた。
「リディアさん。今日は、食べ物を冷やす魔法をお見せします」
俺が作るのは、『気化熱式冷蔵庫』。その心臓部となる材料を、スキルで召喚した。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:123/150 → 115/150】
現れたのは、園芸コーナーでお馴染みの、『素焼きの植木鉢』の大と中。
俺は、大きな鉢の中に小さな鉢を入れ子のようにセットし、その隙間に川砂をぎっしりと詰めていく。
「ユキ殿、これは一体…?」
「水が蒸発する時、周りの熱を奪うんです。その力を利用して、中の物を冷やすんですよ」
俺は砂がひたひたになるまで水を注ぎ、最後に濡らした『綿のふきん』を蓋のように被せた。
「よし、完成です。これを、家の北側にある、一番風通しの良い日陰に置きましょう」
俺が装置を慎重に運ぶと、リディアは「日陰にか?てっきり、太陽で水を乾かすのかと思っていたが」と不思議そうな顔をした。
「逆です。この装置は水分が蒸発する力で冷えるので、直射日光を避けた方が効率がいいんです。風通しが良いほど、効果も上がりますしね」
俺は、完成した冷蔵庫を設置しながら続けた。
「この森の夏は湿度が高いので、そこまで劇的には下がりませんが、この条件なら外の気温より5℃から7℃は低くなるはずです。それだけでも、食べ物の鮮度は、数日から数週間へと延ばせるんですよ」
「数週間…!それは、もはや魔法ではなく、実用的な戦術だな…!」
リディアは、俺の知識に改めて感嘆していた。
性能を試すため、俺はとっておきのご褒美を用意した。キバいのししの骨から煮出したゼラチンと、ベリーの搾り汁、蜂蜜を混ぜて作った『森のベリーゼリー』だ。まだ温かい、液体のゼリーを陶器の器に入れ、俺たちの新しい冷蔵庫の中にそっと収める。
数時間後。一番暑い時間帯に、俺たちは再び冷蔵庫の元へ。
外側の鉢は生暖かく、砂は少し乾いている。だが、濡れたふきんを取って、中の鉢に手を入れると、ひんやりとした空気がそこにはあった。そして、中に入れたゼリーは、ぷるぷると完璧に冷え固まっている。
俺たちは木陰に座り、ひんやりと冷たいベリーゼリーを味わった。
夏の暑さの中で、冷たいデザートを食べるという初体験。その、舌の上でとろける甘酸っぱさと涼やかさは、まさに奇跡の味だった。
シラタマは、冷たさに驚きながらも、夢中でゼリーを舐めている。
リディアは、その未知の感覚に衝撃を受け、畏敬の念を込めて、ぽつりと呟いた。
「ユキ殿…貴殿は、夏さえも支配するのか…」
50
あなたにおすすめの小説
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート
みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。
唯一の武器は、腰につけた工具袋——
…って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!?
戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。
土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!?
「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」
今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY!
建築×育児×チート×ギャル
“腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる!
腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~
舞
ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。
異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。
夢は優しい国づくり。
『くに、つくりますか?』
『あめのぬぼこ、ぐるぐる』
『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』
いや、それはもう過ぎてますから。
子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~
九頭七尾
ファンタジー
子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。
女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。
「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」
「その願い叶えて差し上げましょう!」
「えっ、いいの?」
転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。
「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」
思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!
ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。
一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて?
主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍?
「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」
『わふっ』
もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる