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第四十七話『川の主と、初めての魚釣り』
しおりを挟む燻製にパン、パスタとうどん。俺たちの食生活は、肉と小麦を中心に、驚くほど豊かになった。だが、夏の盛りのある日、俺はふと思った。
「たまには、さっぱりとした魚も食べたくなりますね」
ハードな作業が続いていたことへの息抜きも兼ねて、俺はみんなで『魚釣り』に行くことを提案した。
「魚を…釣るのか?私の任務は、魚を槍で狩ることだったが…」
リディアは、未知の体験に目を輝かせている。
まずは、道具作りからだ。俺は、森で手に入れた、しなやかで丈夫な木の枝を竿にする。そして、スキルで釣りに必要な小物を召喚した。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:128/150 → 123/150】
『釣り糸』と、『釣り針とオモリのセット』。さらに、100均の『発泡スチロールブロック』をナイフで削り、手作りの可愛らしい『浮き』も作った。
それぞれの身長に合わせた三本の釣り竿が完成し、俺たちは餌のミミズを掘って、川辺の穏やかな淵へと向かった。
しかし、魚釣りは、三者三様の性格を浮き彫りにした。
俺は、慣れた手つきでのんびりと糸を垂れる。
一方、リディアは「待つ」という行為が苦手らしい。「ええい、なぜ食いつかんのだ!」と、竿をピシピシと動かしてしまい、逆に魚を逃してしまう。
そして、そんな俺たちに早々に見切りをつけたのが、シラタマだった。彼は竿を置くと、川の浅瀬に立ちこみ、水面をじっと凝視。次の瞬間、**バシャッ!**という水音と共に、見事にその前足で一匹の魚を叩き落としてみせた。白熊の本能が、ここに開花した。
「おお…!見事だ、シラタマ!」
シラタマの活躍に刺激されたのか、リディアもようやく落ち着きを取り戻し、俺の教え通りに、じっと浮きを見つめ始めた。
その、時だった。
彼女の浮きが、今までとは比較にならない勢いで、水中に引きずり込まれた。
「きたっ…!大きいぞ、これは!」
竿が、ありえないほどにしなっている。相手は、この辺りの川の主とでも言うべき大物だ。
「リディアさん、落ち着いて!」
俺の声を合図に、リディアの目つきが変わった。それは、もはや遊びではない。騎士の、獲物を仕留める目だ。彼女は驚異的な体幹と腕力で竿をさばき、数分にわたる死闘の末、水面に巨大な銀色の魚体を躍らせた。
その日の夕食は、もちろん魚のフルコースだった。シラタマが獲った小魚は唐揚げに。そして、リディアが釣り上げた川の主は、岩塩を振って、最高の木炭でじっくりと『塩焼き』にした。
炭火で焼かれた皮はパリパリと香ばしく、その下の身は、驚くほどふっくらとして、上質な脂が乗っていた。
リディアは、自分が釣り上げた一匹を、誰よりも誇らしげに、そして夢中で頬張る。
それは、戦場での勝利とは全く違う、穏やかで、満ち足りた味がした。
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