46 / 185
第四十六話『夏の保存食作りと、瓶詰めの宝石』
しおりを挟む夏の盛りを迎え、森と畑の恵みは最高潮に達していた。木々には酸味の強いベリーがたわわに実り、俺たちの畑では、最初の野菜が収穫の時を待っている。
「この夏の味を、冬の間も楽しめるように、宝物に変えましょう」
俺は、来るべき季節に備えるための、大規模な『保存食』作りを宣言した。
最初のプロジェクトは、ジャム作りだ。リディアとシラタマがカゴいっぱいに摘んできてくれたベリーを、鉄の大鍋に入れ、蜂蜜を加えてコトコトと煮詰めていく。拠点中に、めまいがするほど甘く、フルーティーな香りが立ち込めた。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:120/150 → 100/150】
俺はスキルで、大量の『ガラスの保存瓶』と、作業を効率化するための『漏斗』を召喚。
熱いジャムを、漏斗を使って一つ一つの瓶に注いでいく。ルビーのように輝く液体が瓶に満たされていく光景は、まさに「瓶詰めの宝石」を作る作業のようだった。味見係のシラタマは、もちろん白い毛皮を鮮やかな赤色に染めていた。
次のプロジェクトは、ピクルス作り。そのためには、まず『酢』が必要だ。
俺は、以前醸造した果実酒を、召喚した『ステンレス製のバット』にあけた。表面積を広くして空気に触れさせ、酢酸発酵を促すためだ。虫除けに『キッチンクロス』を被せて、数日間寝かせる。
酢が完成するまでの間、俺たちは畑で採れた最初の野菜を、岩塩で『塩漬け』にした。
そして、三つ目のプロジェクトは『乾燥ハーブ』作り。
森で収穫した香り高いハーブを、冬の料理や飲み物のために保存する。
ここで活躍したのが、100均の便利グッズ、『魚干し網』だ。
ポンッ!
【創造力:100/150 → 95/150】
数段に分かれたネット状のカゴを拠点の日当たりの良い軒下に吊るせば、虫からハーブを守りながら、風通し良く完璧に乾燥させることができる。その合理的な構造に、リディアは「なんと無駄のない設計だ…!」といたく感心していた。
数日後。
俺たちの家の棚は、見違えるように豊かになっていた。
西日を浴びてキラキラと輝く、ジャムの瓶の列。
天井から吊るされ、心地よい香りを放つ、乾燥ハーブの束。
そして、じっくりと味が染み込んでいる塩漬け野菜の壺。
それは、俺たちが夏の恵みをただ消費するだけでなく、未来を予測し、計画的に備えるという、新たなステージに進んだ証だった。
俺は、満たされた食糧庫を眺め、最高の笑顔で仲間たちに言った。
「これだけあれば、今年の冬が来ても、怖くありませんね」
51
あなたにおすすめの小説
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様にて、先行公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
【完結】剣の世界に憧れて上京した村人だけど兵士にも冒険者にもなれませんでした。
もる
ファンタジー
剣を扱う職に就こうと田舎から出て来た14歳の少年ユカタは兵役に志願するも断られ、冒険者になろうとするも、15歳の成人になるまでとお預けを食らってしまう。路頭に迷うユカタは生きる為に知恵を絞る。
異世界に転生したら?(改)
まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。
そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。
物語はまさに、その時に起きる!
横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。
そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。
◇
5年前の作品の改稿板になります。
少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。
生暖かい目で見て下されば幸いです。
異世界でのんびり暮らしたいけど、なかなか難しいです。
kakuyuki
ファンタジー
交通事故で死んでしまった、三日月 桜(みかづき さくら)は、何故か異世界に行くことになる。
桜は、目立たず生きることを決意したが・・・
初めての投稿なのでよろしくお願いします。
ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語
Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。
チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。
その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。
さぁ、どん底から這い上がろうか
そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。
少年は英雄への道を歩き始めるのだった。
※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。
オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~
鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。
そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。
そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。
「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」
オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く!
ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。
いざ……はじまり、はじまり……。
※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。
異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)
愛飢男
ファンタジー
最強の攻撃、それ即ち超硬度超質量の物体が超高速で激突する衝撃力である。
ってことは……大型トラックだよね。
21歳大型免許取り立ての久里井戸玲央、彼が仕事を終えて寝て起きたらそこは異世界だった。
勇者として召喚されたがファンタジーな異世界でトラック運転手は伝わらなかったようでやんわりと追放されてしまう。
追放勇者を拾ったのは隣国の聖女、これから久里井戸くんはどうなってしまうのでしょうか?
異世界に転生したので幸せに暮らします、多分
かのこkanoko
ファンタジー
物心ついたら、異世界に転生していた事を思い出した。
前世の分も幸せに暮らします!
平成30年3月26日完結しました。
番外編、書くかもです。
5月9日、番外編追加しました。
小説家になろう様でも公開してます。
エブリスタ様でも公開してます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる