おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

文字の大きさ
103 / 185

【第百二話】種まきと、大地の設計図

しおりを挟む

完璧に耕され、春の柔らかな光を浴びて黒々と広がる『シラタマ農園』。その、無限の可能性を秘めた大地を前に、リディアは目を輝かせていた。
「ユキ殿!いつでも種を蒔けるぞ!何を、どこに植えるのだ!」
今にも駆け出しそうな彼女を、俺は「まあ、待ってください」と、いつものように穏やかに制した。
「最高の農園を作るには、最高の『設計図』が必要なんです」
俺は、ただ闇雲に種を蒔くことの非効率性を、リディアに分かりやすく解説し始めた。
「野菜にも、人間と同じように『相性』があるんですよ。隣に植えることで、互いの成長を助けたり、害虫を遠ざけたりする、最高の『戦友』になる組み合わせがあるんです」
俺は、トマトの隣にバジルを、ニンジンの隣にタマネギを植えるといった、『コンパニオンプランツ』の知識を披露する。
さらに、「毎年同じ場所に同じ野菜を植えると、土が疲れて病気になりやすくなります。来年、再来年のことまで考えて、畑をブロック分けし、毎年植える場所を変える『輪作』を行うんです」と、持続可能な農業の重要性を説いた。
その、数年先まで見据えた、軍師のごとき壮大な計画に、リディアは畏敬の念を深めていた。
「…もはや、これは農作業ではない。一つの国を豊かにするための、壮大な『戦略』だ…!」

俺は、その完璧な設計図を、大地に正確に描き出すための道具を召喚した。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:150/150 → 140/150】
Dランクの『水糸(みずいと)』と『園芸用の杭』、そしてEランクの『ペットボトルキャップ』を大量に。コストは合わせて10。
俺たちは、杭の間に水糸を張り、農園に、寸分の狂いもない、美しいグリッド線(方眼)を引いていく。リディアの騎士としての精密さが、この測量作業で大活躍した。
そして、種まきのための、驚くべき秘密兵器をDIYする。
木の板の裏に、大量の『ペットボトルキャップ』を、決まった間隔でネジ止めした、特製の『種まきプレート』だ。これを土に押し付けるだけで、一度に何十個もの、完璧な深さと間隔の植え穴が完成する。その、あまりにも画期的な発明に、リディアはただただ感嘆するしかなかった。

種まきの日は、聖域の仲間たち総出の一大イベントとなった。
ピンと張られた水糸が珍しいのか、シラタマがギターの弦のようにビヨーンと弾いて遊んでいる。やがて、俺たちが種を蒔くのを真似て、自分のお気に入りの木の実を、一生懸命に土に植え始めた(もちろん、後でこっそり自分で掘り出して食べていたが)。
そして、この聖域の、真の主役。一同が種を蒔き終えた畑の上を、つちのこが、嬉しそうに、ゆっくりと、しかし確かな足取りで一周する。彼が通った後の土は、まるで祝福を受けたかのように、淡い光を帯び、生命力に満ち溢れていくのが、俺にだけは見えていた。

だが、俺の仕事はまだ終わらない。
「このままでは、俺たちの努力の結晶が、鳥たちの最高のレストランになってしまいます」
俺は、最後の仕上げに取り掛かった。
ポンッ!ポンッ!
【創造力:140/150 → 112/150】
Cランクの『園芸用の支柱(トンネル用)』と、同じくCランクの『防鳥ネット』を召喚。コストは合わせて28。
蒔いたばかりの畝の上に、アーチ状の支柱を立て、その上から、巨大な防鳥ネットを被せる。これで、空からの脅威は完全に防がれた。

その日の夕暮れ。夕日に照らされ、整然とグリッドが引かれ、そして、優しいネットに守られた、広大な『シラタマ農園』。
それは、もはやただの畑ではなかった。
俺の科学と、リディアの力、シラタマの元気、そして、つちのこの祝福。俺たちの全てが注ぎ込まれた、未来の恵みが眠る、約束の大地。
リディアは、その完璧な光景を前に、誇らしげに、そして満足げに呟いた。
「…ユキ殿。これならば、どんな軍勢が来ようとも、我が聖域の食糧庫は、びくともせんな」
その言葉に、俺は、最高の笑顔で頷くのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート

みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。 唯一の武器は、腰につけた工具袋—— …って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!? 戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。 土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!? 「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」 今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY! 建築×育児×チート×ギャル “腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる! 腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

精霊さんと一緒にスローライフ ~異世界でも現代知識とチートな精霊さんがいれば安心です~

ファンタジー
かわいい精霊さんと送る、スローライフ。 異世界に送り込まれたおっさんは、精霊さんと手を取り、スローライフをおくる。 夢は優しい国づくり。 『くに、つくりますか?』 『あめのぬぼこ、ぐるぐる』 『みぎまわりか、ひだりまわりか。それがもんだいなの』 いや、それはもう過ぎてますから。

町工場の専務が異世界に転生しました。辺境伯の嫡男として生きて行きます!

トリガー
ファンタジー
町工場の専務が女神の力で異世界に転生します。剣や魔法を使い成長していく異世界ファンタジー

子育てスキルで異世界生活 ~かわいい子供たち(人外含む)と楽しく暮らしてます~

九頭七尾
ファンタジー
 子供を庇って死んだアラサー女子の私、新川沙織。  女神様が異世界に転生させてくれるというので、ダメもとで願ってみた。 「働かないで毎日毎日ただただ可愛い子供と遊んでのんびり暮らしたい」 「その願い叶えて差し上げましょう!」 「えっ、いいの?」  転生特典として与えられたのは〈子育て〉スキル。それは子供がどんどん集まってきて、どんどん私に懐き、どんどん成長していくというもので――。 「いやいやさすがに育ち過ぎでしょ!?」  思ってたよりちょっと性能がぶっ壊れてるけど、お陰で楽しく暮らしてます。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

小さいぼくは最強魔術師一族!目指せ!もふもふスローライフ!

ひより のどか
ファンタジー
ねぇたまと、妹と、もふもふな家族と幸せに暮らしていたフィリー。そんな日常が崩れ去った。 一見、まだ小さな子どもたち。実は国が支配したがる程の大きな力を持っていて? 主人公フィリーは、実は違う世界で生きた記憶を持っていて?前世の記憶を活かして魔法の世界で代活躍? 「ねぇたまたちは、ぼくがまもりゅのら!」 『わふっ』 もふもふな家族も一緒にたくましく楽しく生きてくぞ!

処理中です...