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【第百五話】小さな戦友と、黒い大地の魔法
しおりを挟む春の日差しを浴び、『一番槍』に見守られながら、『シラタマ農園』の野菜たちはすくすくと育っていた。
しかし、その完璧に見えた日常に、新たなる『足元の敵』が忍び寄っていた。作物の株元に、小さな雑草が芽吹き始め、若葉の裏には、アブラムシのような小さな害虫が再び現れ始めている。
「ユキ殿!私が全て引っこ抜き、叩き潰してくれる!」
リディアが息巻くが、俺は穏やかに首を横に振った。
「力で戦えば、俺たちの畑も傷つけてしまいます。今回は、畑に『味方』を増やすことで、敵を退けるんですよ」
まず、雑草対策と土の乾燥を防ぐための『マルチング』という技術。
「作物の株元を、黒いシートで覆うんです。太陽の光を遮断して雑草の成長を妨げ、さらに土の水分が蒸発するのを防いでくれる、一石二鳥の魔法ですよ」
広大な畑を覆うため、俺は100均の、あるアイテムを大量に召喚した。
ポンッ!
【創造力:91/150 → 66/150】
Bランクの『黒い大きなゴミ袋』。コストは25。これを切り開いて一枚の大きなシートとして使い、畑の畝を覆っていく。
次に、害虫を食べてくれる『益虫(えきちゅう)』を農園に住み着かせるための巣箱作り。
「テントウムシのような益虫は、俺たちの代わりに害虫と戦ってくれる、小さな『戦友』です。彼らが安心して冬を越し、卵を産める『宿屋(バグホテル)』を作ってあげましょう」
俺は、以前召喚した『素焼きの植木鉢』や『園芸用の竹支柱』、『麻紐』を使って、益虫のホテルを作り始めた。竹支柱を短く切り揃え、麻紐で束ねて、植木鉢の中にぎっしりと詰めていく。その地道で精密な作業に、リディアの騎士としての集中力が光る。
完成したバグホテルを、シラタマが巨大な蜂の巣と勘違いしたのか、遠巻きに眺めては、不思議そうに首を傾げていた。
そして、俺たちがバグホテルを畑の隅に設置すると、つちのこが、どこからか、益虫が好む蜜を出す小さな花をホテルの入り口に咲かせてくれた。神様からの、最高の『客寄せ』だった。
仕上げに、以前作った自然由来の防虫スプレーを、さらに強力なものへと進化させる。
広大な畑に効率よく散布するため、俺は少し高額な300円商品、文明の利器を召喚した。
ポンッ!
【創造力:66/150 → 53/150】
Cランクの『加圧式の噴霧器』。コストは13。一度圧力をかければ、あとはレバーを握るだけで、霧状の薬液を広範囲に散布できる。
その、あまりにも高性能な道具に、リディアは驚愕した。
「…ユキ殿。それはもはや、竜が炎を吐くがごとき、殲滅兵器だな…」
その日の夕暮れ。俺たちの目の前には、完璧な『生態系』を持つ、生きた要塞へと生まれ変わった『シラタマ農園』が広がっていた。
黒いマルチシートに覆われ雑草から守られた畝。その傍らには、小さな戦友たちが集う『虫の宿屋』。そして、空からの脅威を見張る、寡黙なる騎士『一番槍』。
リディアは、その光景を、深い感慨と共に眺めながら、呟いた。
「…ユキ殿。私は、本当の『強さ』とは、敵を打ち負かすことだけだと思っていた。だが、違うのだな」
彼女は、夕日に照らされる、完璧な農園を見つめる。
「敵を寄せ付けず、味方を増やし、恵みを生み出し続ける…この大地そのものが、何よりも雄弁に、本当の強さを語っているようだ」
その言葉に、俺は、最高の笑顔で頷くのだった。
俺たちが築き上げた聖域の力は、武力ではなく、大地に深く、広く、根を張り始めている。
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