おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

はぶさん

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【第百四話】聖域の新しい番人と、案山子の唄

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春本番を迎え、『シラタマ農園』の畝には、俺たちが蒔いた種が、可愛らしい緑色の双葉を広げ始めていた。水道橋から注がれる豊富な水と、春の日差しを浴びて、その成長は目覚ましいものがあった。
しかし、その生命力溢れる若葉は、森の鳥たちにとって、最高の御馳走に見えたらしい。日に日に、農園の上を旋回する鳥の数が増えていくのが、悩みの種だった。
「むぅっ…!我が農園の一粒たりとも、あの空の盗賊には渡さん!」
リディアは、ついに我慢の限界が来たとばかりに、剣を片手に、一日中畑の番をすると息巻いていた。その、あまりにも真面目で、あまりにも騎士らしい解決策に、俺は微笑みながら首を横に振った。
「その意気は素晴らしいですが、リディアさんが一日中畑に張り付いているわけにもいきませんからね。もっと、俺たちらしい『番人』を作りましょう。二十四時間、文句も言わずに畑を守ってくれる、最高の仲間を」

俺が提案したのは、『案山子(かかし)』作りだった。
「鳥が本当に嫌うのは、『予測不能な動き』と『キラキラ光るもの』、そして『聞き慣れない音』です。この三つを組み合わせた、最高の番人を作り上げます」
その、まるで軍師が砦の防衛設備を設計するかのような科学的なアプローチに、リディアは興味津々だった。
俺は、この心理戦の兵器を、100均グッズを駆使して作り上げる。
まずは、案山子の「服」となる、重要なパーツからだ。

ポンッ!
【創造力:112/150 → 97/150】
Cランクの『レインポンチョ』。コストは15。ビニール製の大きなポンチョは、少しの風でも、バサバサと予測不能な動きを生み出してくれる。

ポンッ!ポンッ!
【創造力:97/150 → 92/150】
次に、鳥が嫌う光と音の要素として、Eランクの『キラキラ反射テープ』と『小さな鈴』のセットを召喚。コストは5。これをポンチョの袖や裾に取り付け、風が吹くたびに、キラキラと光り、チリチリと音を立てる仕掛けだ。

ポンッ!
【創造力:92/150 → 91/150】
仕上げに、案山子の手に、Eランクのカラフルな『風車(かざぐるま)』を取り付ける。コストは1。
これで、役者は揃った。

案山子作りは、仲間たち総出の、楽しい共同作業となった。
リディアは、この新しい番人に騎士としての威厳が必要だと主張し、木の棒を削って凛々しい顔を描き、さらには、木の枝で小さな『剣』まで作って案山子に持たせる。
シラタマは、この新しく現れた奇妙な人型の存在に興味津々だ。風車がクルクルと回り始めると、すっかりおもちゃだと思ったのか、その前足で、楽しそうに風車を止めようとじゃれつき始めた。
そして、一同が作業している間、つちのこが、どこからか、てっぺんに双葉がついた、不思議なカボチャのような実を運んできてくれた。俺がそれを案山子の頭として使うと、まるで魂が宿ったかのように、案山子に愛嬌が生まれるのだった。

ついに完成した、リディア命名『一番槍』。それは、騎士の剣を持ち、全身をキラキラと輝かせ、風を受けてはバサバサと音を立て、チリチリと鈴を鳴らし、手にした風車を陽気に回す、あまりにも奇妙で、しかし頼もしい番人だった。
一同が固唾をのんで見守る中、一羽の鳥が、恐る恐る畑に近づいてくる。
その瞬間、春の風が吹き抜け、『一番槍』が、その全ての機能を一斉に発動させた!
予測不能な動きと、光と、音の三重奏。その、あまりにも不気味な存在に、鳥は悲鳴のような声を上げて、一目散に逃げ去っていった。

その日の夕暮れ。夕日に照らされ、畑の中心で、一人静かに佇む、我らが『一番槍』。
リディアは、その頼もしい後ろ姿を、誇らしげに眺めていた。
「…ユキ殿。あれは、もはやただの案山子ではない。我がシラタマ農園を守護する、寡黙なる、しかし最高の騎士だ」
その日から、俺たちの聖域には、新しいBGMが加わった。
川のせせらぎ、暖炉のはぜる音、仲間たちの笑い声。そして、春の風が吹くたびに、畑から聞こえてくる、チリリン、チリリン…という、平和を守る、小さな鈴の唄。
俺たちの城は、また一人、かけがえのない仲間を迎えたのだった。
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