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幕間:厨房見習いの、誇りという名の翼
しおりを挟むあの日…親方に、この食堂の見習いとして拾ってもらったあの日から、俺たちの笑い声の「質」は、確かに変わったんだ。
かつて、俺たちは「雪山ブリザード団」だった。一瞬の興奮だけが、俺たちの全てだった。
だが、俺たちは、すぐに、**キノコの兄ちゃんの一件**で、とんでもない過ちを犯した。
あの言葉の重さは、きっと、一生忘れねえ。「殺人未遂だ」。
料理が、**命を預かる、覚悟のいる仕事**なんだってことを、俺たちは、魂に刻んだんだ。
だから、森が、あの不気味な音に包まれた時、俺たちは、動けなかったんだ。
(俺が、また、間違えたら?親方に、今度こそ、本当に見捨てられたら…?)
リーダーである俺の心が、恐怖で凍りついていた。
その、震える俺の肩を、そっと、リルが叩いた。
「…リーダー。僕たちの今の仕事は、まず、『親方に正しく報告すること』だ。それが、僕たちが、あの日に学んだ、**一番大事なこと**だよ」
親方に報告した時、返ってきたのは、叱責じゃなかった。
「…よくやったな、お前ら」
その、あまりにも温かい承認の言葉。俺たちは、その時、初めて、自分たちの判断が、間違っていなかったのだと知った。
厨房で始まったのは、調理というより、もはや、俺たちの、本当の力を試すための、最終試験だった。
俺たちの魂は、完全に一つになっていた。
ゴルの岩を持ち上げるための筋肉が、今は、蝶の羽を傷つけないための、**世界で一番繊細なクッション**となっていた。前方の小石をそっと取り除く俺。背後から風向きを読み、振動が少ないルートを小声で伝えるリル。
俺たちの魂は、完全に一つになっていた。
洞窟の奥で、俺たちの作った奇跡が、水晶虫の苦しみを吸い込んでいく。
そして、訪れた、絶対的な静寂。
《……ありがとう……温かい……静かだ……》
その、生まれて初めて安らぎを知った、赤子のような、純粋な感謝の声。
それが、俺たちにとって、何よりの報酬だった。
親方は、温かいミルクを差し出し、そして、静かに言った。
「あれは、俺が教えただけの料理じゃねえ。お前らが、初めて、本当の意味でチームとして作り上げた、**お前ら自身の、最高の作品だ**。…よくやったな」
その言葉が、俺たちを縛り付けていた、最後の恐怖の鎖を、完全に断ち切った。
涙が、止まらなかった。
それは、もう、失敗を悔いる涙ではない。自分たちの力が、誰かを救えると知った、**料理人としての、産声にも似た、誇りの涙**だった。
その日、俺たちは、本当の意味で、その背中に、プロとしての、**誇りという名の翼**を宿した。
親方、そして、森の仲間たち。見ていてくれ。
俺たち「ねこまんま厨房見習い」の、伝説の始まりを!
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