ブラック企業でポイントを極めた俺、異世界で最強の農民になります

はぶさん

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第八十六話:荒野に眠る記憶と、開拓の種蒔き

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水源を確保した俺たちは、いよいよ本格的な土作りに取り掛かった。
だが、その前に解決しなければならない問題があった。あの封水岩の存在だ。

「……ありゃあ、一体何だったんだ?」

翌朝、作業の合間にゴードンが俺に尋ねてきた。彼の傍らには、いつも通り黙々と働くゲルトがいる。

「分かりません。ただ、あの岩が自然にできたものではないことは確かです。誰かが、意図的にこの土地の水を封じていた……」

俺の言葉に、ゴードンの顔が険しくなる。

「誰が、何の目的でそんな真似を……。いや、今は考えても仕方ねえか。まずは、目の前の土だ」

彼はそう言うと、巨大な鍬(くわ)を振るい、赤黒い土を掘り起こし始めた。

俺たち開拓団は、総出で『アイアンウィード』の刈り取りを行った。トゲだらけで硬いこの草は、そのままでは到底堆肥にはならない。だが、細かく刻み、さらに石灰の代わりとなる『貝殻の粉末』(これは、以前クラウスさんが「何かの役に立つかもしれない」と安く譲ってくれたものだ)と混ぜ合わせることで、強力な酸性を中和し、同時に有機物を補給することができるはずだ。

「うおっ!痛ってぇ!」
「こいつは骨が折れるぜ……!」

男たちが悪態をつきながらも、手を休めることなく草を刈り続ける。彼らのその姿は、まさに荒野に挑む戦士そのものだった。

そんな中、俺は一人、あの封水岩があった場所を詳しく調べていた。
岩が砕け散った跡地には、ぽっかりと大きな穴が開いており、そこからこんこんと清水が湧き出している。その穴の底を覗き込むと、何かがきらりと光った。

(……なんだ?)

俺は、手を伸ばし、それを拾い上げた。それは、錆びついた金属片だった。だが、ただの鉄くずではない。表面には、微かにだが、見たことのない幾何学模様が刻まれている。

【鑑定】
【古代の遺物(破片)】
【特徴:遥か昔に失われた文明の技術で作られた、何らかの装置の一部。材質は不明だが、非常に高い魔力伝導率を持つ。】

(……古代文明……?)

俺の脳裏に、老婆マーサさんが話してくれた昔話が蘇る。『空に亀裂が走り、森の色が溶け出した恐ろしい日』。そして、情報屋ロイドが語っていた『深淵が欠伸をする日』。
この世界には、俺たちの知らない、失われた歴史が眠っているのかもしれない。そして、この『蛇の舌』という場所も、その歴史と深く関わっているのかもしれない。

「……ルークス殿」

背後から、ギデオンが声をかけてきた。

「何か、見つけたか」
「いえ……。ただの、古い金属片です」

俺は、とっさにそれをポケットに隠した。まだ、確信のないことを彼らに話して、不安を煽りたくはなかったからだ。

「そうか。……皆が、お前を待っているぞ」

彼の言葉に促され、俺は作業場へと戻った。

そこでは、刈り取ったアイアンウィードと貝殻の粉末、そして、わずかだがランドールから運んできた家畜の糞尿を混ぜ合わせた、即席の堆肥作りが行われていた。

「よし!これを畑に鋤き込むぞ!」

トーマスさんの号令で、男たちが一斉に動き出す。彼らが『疾風』を振るうたびに、赤黒い死の大地が、少しずつ、生命の色を取り戻していくようだった。

数日後。
ついに、最初の種蒔きの日がやってきた。
蒔くのは、乾燥に強い『ライ麦』と、土を肥やす効果のある『クローバー』の種だ。

「頼むぞ……。しっかり育ってくれよ……」

男たちが、祈るように種を蒔いていく。その一粒一粒に、彼らの、そして俺たちの未来がかかっている。

種蒔きが終わったその日の夕暮れ。
俺たちは、丘の上に立ち、広大な畑を見下ろしていた。まだ何も生えていない、ただの黒い土の広がり。だが、俺たちの目には、そこがやがて黄金色の穂波で満たされる未来が、はっきりと見えていた。

「……やったな、先生」

トーマスさんが、感無量といった様子で呟く。

「ああ。でも、これからが本当の勝負だ」

水やり、除草、そして何より、この土地特有の病害虫との戦い。困難は山積みだ。

だが、俺は不思議と不安ではなかった。
隣には、頼もしい仲間たちがいる。そして、俺の手には、この世界を変える『力』がある。

夜、テントの中で、俺はポケットからあの金属片を取り出し、月明かりにかざしてみた。
鈍い光を放つその欠片は、まるで何かを訴えかけているようだった。

(この世界の秘密……。いつか、必ず解き明かしてみせる)

俺は、それを再びポケットにしまうと、深い眠りについた。
夢の中で、俺は見たことのない巨大な都市が、炎に包まれて崩れ落ちる光景を見たような気がした。あの金属片が、俺に見せた幻だったのだろうか。

【読者へのメッセージ】
第八十六話、お読みいただきありがとうございました!
校閲者様からのご指摘を反映し、夢の描写を金属片の影響と結びつけることで、物語の整合性をより高めました。謎の遺物、そして本格的な開拓。新たな章の幕開けを感じていただければ幸いです。
「古代文明、気になる!」「ライ麦とクローバー、頑張れ!」「夢の光景、怖い…」など、皆さんの感想や応援が、この荒野に最初の芽を吹かせる力になります。下の評価(☆)やブックマークも、ぜひよろしくお願いいたします!
種は蒔かれましたが、荒野はそう簡単に恵みを与えてはくれません。次に彼らを襲うのは、この土地ならではの恐ろしい『害虫』の群れ…。ルークスは、この新たな脅威にどう立ち向かうのか。次回、息詰まる防衛戦が始まります!どうぞお見逃しなく!
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