異世界ほのぼのクッキングロード ~元フードコーディネーター、不思議な食材で今日も一皿~

はぶさん

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第15話 止まない雨と、太陽のお好み焼き (15-2)

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翌日の夕方。
『木漏れ日の食卓亭』には、俺の呼びかけに応じた街の人々が、恐る恐る、しかし、どこか期待を込めた表情で、集まり始めていた。
その手には、それぞれの家で余っていた、様々な食材が握られている。
少しだけ残ったキャベツの葉。硬くなった干し肉の切れ端。塩漬けにされた、小さな魚。

食堂の中央には、磨き上げられた巨大な鉄板が、主役のように鎮座している。

「日向さん、本当にこんなもので、美味しいものができるの……?」
リリィアが、集められた雑多な食材の山を見て、不安そうに尋ねた。

「ああ。リリィアちゃん、今から作る『お好み焼き』っていう料理が、どうして生まれたか、その物語を話してあげよう」
俺は、大きなボウルで生地を混ぜながら、集まった人々に語りかけた。
「俺の故郷はね、昔、大きな戦があって、食べ物がほとんどなくなってしまった時代があったんだ。人々は、明日生きるかどうかも分からない、そんな絶望的な状況にいた。でも、彼らは諦めなかった。なけなしの小麦粉を水で溶いて、拾い集めてきたクズ野菜を混ぜて、熱した鉄板の上で焼いて食べた。それが、この『お好み焼き』の始まりなんだ」

俺の言葉に、人々は息を呑んだ。

「そう。この料理は、レストランで生まれた綺麗な料理じゃない。逆境のどん底から、人々の『生きたい』という強い想いと、知恵が生み出した、希望の料理なんだよ」

俺は、熱した鉄板に、油を引いた。
ジュウウゥゥ……!
心地よい音が、静まり返っていた食堂に響き渡る。

「見ててごらん。この丸い形は、みんなが恋焦がれている**『太陽』の形。このジュウジュウという音と香りは、沈んだ心に活気を取り戻す『祭りの音』。そして、この後にかける甘辛いソースの味は、『明日への元気』**をくれる。これは、ただの料理じゃない。絶望の中から生まれた、人々の知恵と笑顔の象徴なんだよ」

人々は、鉄板の上でじりじりと焼けていく生地を、食い入るように見つめている。
その顔にはもう、不安や諦めの色はない。

だが、一つだけ、問題があった。
この長雨で、宿屋の小麦粉も、少し湿気ってしまっていたのだ。これでは、最高の生地は望めない。

「きゅいいいん!」

その時だった。
店の裏口から、泥だらけのモグモグが、一つの小さな麻袋を、一生懸命に引きずって帰ってきた。
袋の中には、見たこともないほど白く、そして驚くほどにサラサラとした、極上の小麦粉が、少量だが、凝縮された力を感じさせるように入っていた。
幻の小麦**『岩間の麦』**。

「……日向さん、こんなに少しで、本当に足りるの…?」
リリィアが、不安げな顔で呟いた。

「いや、リリィアちゃん。これでいいんだ。いや、これがいいんだ」
俺は、その奇跡の小麦粉を、敬意を込めて受け取った。

「いいかい、皆! 今から、奇跡の始まりを見せてやる!」
俺は、リリィアに、そして集まった街の皆に、宣言した。
「モグモグが届けてくれた、この一握りの奇跡の麦。これを、酵母のように、この、湿気ってしまった、大量の小麦粉の中に、混ぜ込むんだ。そうすれば、この街の小麦粉の全てが、伝説の『岩間の麦』の**『魂』**をまとうことになる!」

俺は、その一握りの粉を、大きなボウルの、小麦粉の山へと、そっと振り入れた。
その瞬間、生地が、まるで命を宿したかのように、ふわりと、きめ細かくなったのが分かった。
さあ、祭りだ。
俺たちの、太陽を取り戻すための、最高に熱い祭りが、今、始まる。

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