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第34話 ドワーフの試練と、羊飼いのパイ (34-1)
しおりを挟む長く、厳しい旅路の果て。
俺たちがたどり着いたドワーフの王国『ボル・ダライン』は、まさに圧巻の一言だった。
巨大な山脈の、その心臓部をくり抜いて作られた、壮麗なる地下都市。天井には、光を放つ鉱石が星のように埋め込まれ、巨大な石柱には、ドワーフたちの何千年もの歴史が、見事な彫刻で刻まれている。
だが、その壮麗な光景とは裏腹に、街全体が、活気を失い、重く、冷たい空気に包まれていた。
街の全ての生命線である、中心部の『大溶鉱炉』から立ち上る炎が、まるで風前の灯火のように、弱々しく揺らめいているのだ。
「……なんと、ここまでとは……」
案内してくれていたボルギンが、絶望に満ちた声で呟いた。
俺たちは、王城の最深部、玉座の間へと通された。
そこに座っていたのは、白銀の髭を編み込み、威厳に満ちた、ドワーフの王、グレン三世。
しかし、その顔にもまた、国の未来を憂う、深い疲労の色が刻まれている。
ボルギンが、これまでの経緯と、神託について説明する。
だが、王とその側近たちは、俺たち人間を、冷たい、値踏みするような目で見つめるだけだった。
「ボルギンよ。そなたの忠義には感謝する。だが、我らの国の問題は、我らの手で解決する。人間の、それも、か弱い料理人の助けなど、不要だ」
王の、厳かな、しかし、拒絶に満ちた言葉。
その時だった。
「お待ちを、王よ!」
ボルギンが、一歩前に進み出た。
「ならば、試してみるがいい。この男が、我らの国の、最も厄介な食材を、乗りこなせるだけの腕を持っているかどうかをな!」
こうして、俺に、一つの試練が与えられることになった。
それは、ドワーフの国でしか採れない、**『岩盤茸(がんばんたけ)』**と呼ばれる、巨大なキノコを調理すること。
岩のように硬く、土のように味気ない。ドワーフたちでさえ、ただ焼くか、長時間煮込んで、なんとか腹を満たすためだけに食べているという、厄介者。
「……日向さん。こんなもの、どうやって……」
厨房で、山のように積まれた、岩のようなキノコを前に、レオたち弟子は、絶望的な顔をしている。
だが、俺は。
その、挑戦的なまでの食材を前に、不敵な笑みを、浮かべていた。
これこそが、俺たちの哲学を、この頑固な職人たちに叩きつけるための、最高の舞台じゃないか。
「さあ、始めるぞ。俺たちの、本当の力を、この国の連中に、見せつけてやるんだ」
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