異世界ほのぼのクッキングロード ~元フードコーディネーター、不思議な食材で今日も一皿~

はぶさん

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第35話 病める溶鉱炉と、浄化の塩釜焼き (35-1)

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ドワーフの王に、その腕を認められた翌日。
俺は、ボルギンと、レオたち弟子を伴い、ついに、この国の心臓部である**『大溶鉱炉』**の調査を許された。

山をくり抜いた巨大な空間。その中央に、街の全ての生命線を支える、巨大な炉が鎮座している。
だが、そこから立ち上る炎は、ボルギンの話に聞いていたよりも、さらに弱々しく、そして、どこか苦しそうに、赤黒く揺らめいていた。

「……ひどいな」

俺は、思わず呟いた。
ドワーフの誰もが、ただ「火力が弱まっている」としか見ていなかった。
だが、料理人である俺の目には、その炎が、全く違うものに見えたのだ。

俺は、炎の「色」を見る。健康な炎が放つ、美しい黄金色ではない。不純物が混じった、濁った赤色だ。
俺は、炎の「音」を聞く。パチパチと、心地よく薪がはぜる音ではない。ゴポゴポと、何かが詰まったような、苦しそうな呼吸音だ。
そして、俺は、その「匂い」を嗅ぐ。香ばしい熱気ではない。鉄と、石炭と、そして、何か別のものが混じった、不快な異臭。

「……分かった」

俺は、確信を持って、隣にいたボルギンに告げた。
「ボルギンさん。この炎は、ただ弱っているんじゃない。質の悪い燃料を食べさせられて、**“消化不良”**を起こしているんだ」

「……消化不良、だと?」
「はい。このまま、無理に火力を上げようとしても、逆効果です。本格的な治療の前に、まず、この溶鉱炉自体を**『浄化』**する必要がある」

俺の、あまりにも突飛な診断に、ボルギンも、同行していたドワーフの長老たちも、ただ、呆然としている。
「浄化、だと? 料理人に、神官のような真似ができるというのか」

「ええ」
俺は、きっぱりと言った。
「俺たちのやり方で、ね」

俺が、その神聖な浄化の儀式のために、必要とした「供物」。
それは、この山の奥深くの冷たい地底湖に住む、**『深層の岩魚(しんそうのいわな)』**。
そして、それを包み込む、大量の**『塩』**だった。

「深層の岩魚だと!?」
長老の一人が、馬鹿にしたように鼻を鳴らした。
「日向殿、あれは、不味い魚として有名だぞ! 身は水っぽく、味も香りもほとんどない。わしらは、いよいよ食うものがなくなった時の、最後の手段としてしか、口にせん代物だ!」

俺は、静かに、しかし、はっきりと答えた。
「はい。その、あなた方が『不味い』と見向きもしない魚こそが、この炉を清める、最高の供物になるんです。今から、この炉を、そして、あなた方の凝り固まった常識を、清めてご覧にいれますよ」

俺の、揺るぎない自信に、ドワーフたちは、もはや何も言えなかった。
彼らは、半信半疑のまま、俺が求める「供物」の準備を、始めるしかなかったのだ。
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