最弱弓術士、全距離支配で最強へ

Y.

文字の大きさ
12 / 47
season1

第12話:Aランクパーティとの共闘

しおりを挟む
 1. 特別依頼とAランクの威圧

 リアンがCランクとして名を馳せる中、ギルドには王都から緊急度の高い特別依頼が持ち込まれた。『古代王国の封印迷宮:バベルの塔』の攻略。この迷宮は内部の構造が時間と共に変化し、既存の地図が通用せず、高度な戦闘能力と情報分析が同時に求められる難関だった。

 リアンは即座にこの依頼を受理した。しかし、ギルドマスター・バシュラは警告した。

「この迷宮は、Cランクには重すぎる。王都からの要請により、すでにAランクを目指す精鋭パーティが攻略に当たっている。お前は彼らの補助として参加することになる」

 そのAランクパーティこそ、大陸最高峰のSランクを視野に入れる、王都でも名高い実力者集団だった。


 • リーダー:シグルド(剛剣士):Aランク。鋼のような肉体を持つ剛剣士。実力はヴァンス以上だが、プライドが高く、剣士至上主義。

 • サブリーダー:リシテア(戦術魔法使い):Aランク。冷静沈着で、広範囲の分析魔法を得意とする女性。

 • メンバー:カイル(盗賊/斥候):Bランク上位。俊敏な動きと罠の解除に長ける。


 迷宮の入り口で、リアンとマリナは彼らと合流した。シグルドは、リアンの背中の弓を一瞥し、侮蔑的な視線を向けた。

「お前がギルドがよこした『弓術士』か。噂は聞いている。近接で剣士を倒した異端者だと。だがな、Aランクの戦場で、お前の小細工が通用すると思うな」

 シグルドはマリナに命令した。

「治癒師は前衛の俺の後ろで待機。回復に専念しろ。弓術士。お前の役割は、雑務だ。俺たちが戦闘に入ったら、遠くから威嚇射撃でもして、魔物の注意を引け。それ以上、俺たちの役割を邪魔するな」

 リシテアは冷静にリアンを査定した。

「あなたの魔力は微弱。指揮官としての実績はあるようですが、この迷宮の魔力乱流下では、その『超感覚集中』も安定しないでしょう。私たちの分析を待ちなさい」

 カイルは興味なさそうに、ただリアンを無視した。

 リアンは静かに耐えた。彼らが持つ能力と経験は本物だ。今は彼らの指示に従い、戦術を分析する時だと判断した。

「承知しました。ただし、危険が及ぶ際は、俺の判断で行動します」


 2. 迷宮の難題とAランクの限界

 バベルの塔内部は、噂通り極めて難解だった。構造が数分単位で変化し、突然壁が現れたり、床が崩れたりする。

「リシテア、次のルートは?」

 シグルドが焦れたように聞く。

「待って。迷宮の魔力乱流がひどい。構造解析の詠唱が安定しないわ!」

 リシテアは分析魔法に集中し、汗を流していた。

 シグルドは苛立ちながら、突然出現した高位の魔物『コア・ゴーレム』と対峙した。コア・ゴーレムは、通常のゴーレムとは違い、全身を硬い殻で覆い、核となる『コア』が体内を高速で移動するという厄介な特性を持っていた。

「くそっ、動きが速い! 硬すぎる!」 

 シグルドの剛剣がゴーレムの殻を叩くが、弾かれる。

 カイルは俊敏にゴーレムの周囲を回り、弱点を突こうとするが、核の位置が特定できないため、決定打を与えられない。

 リシテアは解析を諦め、仕方なく攻撃魔法を放ったが、硬い殻に阻まれ、効果は薄かった。

 パーティの連携が機能しなかった。シグルドは力任せに攻撃し、リシテアは解析に失敗し、カイルは核の位置が分からず徒労に終わる。

 シグルドは叫んだ。

「リシテア! 解析はどうした! 弓術士! 何をしている! 矢を放って牽制しろ!」

 リアンは、戦闘開始からずっと、静かにゴーレムを見つめていた。彼のナノ・サイトは、魔力乱流の中でも、ゴーレムの『殻の下の核が、体内を移動する際の微細な魔力の発光』を、時間軸を引き延ばして追跡していた。

(ゴーレムの核は、移動する際に必ず、背中の装甲の最も薄い一点を一瞬だけ通過する。その時間は、0.1秒)


 3. 役割の再定義:精密な起点

 リアンは、シグルドの指示を無視し、一歩前に出た。

「シグルドさん! その位置から、右に半歩ずれてください!」

「何を言っている! 邪魔だ!」

 シグルドはリアンを無視しようとしたが、その瞬間、ゴーレムのカウンターパンチが、シグルドが立っていたまさにその位置に着弾した。シグルドは、寸でのところで致命傷を免れた。

「な……!?」

 シグルドは驚愕した。

 リアンは、シグルドの次の動きを正確に予測し、彼の盾の**『右側面』**めがけて矢を一本放った。

 カキン!

 矢は盾を貫くのではなく、盾を打つことで、シグルドの腕の力を利用し、盾の軌道をわずかに左へ逸らさせた。

「リシテアさん! 今だ! シグルドさんの盾の裏に、風の魔法を極めて短く、一瞬だけ発動させてください!」

「何をさせるつもりだ!」

 リシテアは戸惑いながらも、リアンの指示のあまりの正確さに、反射的に従った。彼女は、シグルドの盾の裏に、ごく短く、風の魔法を放った。

 ブワッ!

 風の魔法は、シグルドの盾とゴーレムの間に、一瞬の『風の壁』を発生させた。この風の壁は、ゴーレムの動きをわずかに、0.05秒だけ遅らせた。

「カイルさん! 突っ込め! 今、コアは背中の、装甲の継ぎ目を通過する!」

 カイルは、シグルドとリシテアの奇妙な連携によって生じた一瞬の『時間差』を利用し、ゴーレムの背後へと飛び込んだ。

 カイルの短剣が突き刺さった場所は、リシテアでもシグルドでも特定できなかった、装甲が最も薄くなる一点。

 ギュイイイ!

 コア・ゴーレムの硬い装甲から、内部の核を突かれた魔物の悲鳴が響き渡り、ゴーレムは沈黙した。


 4. エリートたちの混乱

 戦闘は終わったが、Aランクパーティの三人は、呆然として立ち尽くしていた。彼らは自分たちの能力を使って魔物を倒した。しかし、その全ての動きは、弓術士の一連の指示と精密射撃によって誘導されていた。

 シグルドは、リアンに詰め寄った。

「おい、弓術士! 何をした!? お前は、俺の盾を矢で打って、俺の動きをコントロールしたのか!?」

「あなたの盾の軌道を修正し、ゴーレムの攻撃を躱せるように誘導しました。そして、リシテアさんの風の魔法が、カイルさんが核を突くための『0.05秒の時間稼ぎ』を生み出した。あなたの力、リシテアさんの魔力、カイルさんの俊敏性、全てを最大限に活かすための精密な連携です」

 リアンは淡々と説明した。

 リシテアは、リアンの言葉に戦慄した。彼女の分析魔法をもってしても捉えられなかったゴーレムの核の動きを、リアンは一瞬で見抜き、味方の能力を細かく誘導して勝利への『道筋』を作ったのだ。

「そんな、馬鹿な……詠唱なしで、そこまで緻密な戦術を瞬時に立てられるはずがない……」

 リシテアは、自身の誇る分析力が、リアンのナノ・サイトの前に、全く通用しなかったことに気づき、初めて焦燥を覚えた。

 シグルドは怒りではなく、底知れない恐怖を感じていた。彼は、この弓術士が、自分たちの『役割』を否定しているのではなく、『より高度な戦術の駒』として、自分たちを操ったことを理解したからだ。

「お前……一体、何者だ?」

 最弱職として蔑まれたリアンは、Aランクのエリートたちに、その『戦術の支配者』としての真の姿を初めて見せつけた。彼らAランクパーティのリアンへの評価は、完全に転換し始めていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

異世界レストラン・フェルマータ ~追放料理人の俺、神の舌で世界を喰らう~

たまごころ
ファンタジー
王都の五つ星料理店を追放された若き料理人カイ。理不尽な仕打ちに絶望しかけたその瞬間、彼は異世界で目を覚ます。 そこは「味覚」が魔力と結びついた世界──。美味を極めれば魔力が高まり、料理は民を癒やし、王すら跪く力を持つ。 一介の料理人だったカイは、神の舌「フェルマータ」の力に目覚め、貧しい村に小さな食堂を開く。 だがその料理は瞬く間に世界を変え、王侯貴族、聖女、竜姫、女勇者、果ては神々までが彼の皿を求めるようになる。 追放された男の、料理と復讐と愛の異世界成り上がり劇、ここに開店!

最弱無双は【スキルを創るスキル】だった⁈~レベルを犠牲に【スキルクリエイター】起動!!レベルが低くて使えないってどういうこと⁈~

華音 楓
ファンタジー
『ハロ~~~~~~~~!!地球の諸君!!僕は~~~~~~~~~~!!神…………デス!!』 たったこの一言から、すべてが始まった。 ある日突然、自称神の手によって世界に配られたスキルという名の才能。 そして自称神は、さらにダンジョンという名の迷宮を世界各地に出現させた。 それを期に、世界各国で作物は不作が発生し、地下資源などが枯渇。 ついにはダンジョンから齎される資源に依存せざるを得ない状況となってしまったのだった。 スキルとは祝福か、呪いか…… ダンジョン探索に命を懸ける人々の物語が今始まる!! 主人公【中村 剣斗】はそんな大災害に巻き込まれた一人であった。 ダンジョンはケントが勤めていた会社を飲み込み、その日のうちに無職となってしまう。 ケントは就職を諦め、【探索者】と呼ばれるダンジョンの資源回収を生業とする職業に就くことを決心する。 しかしケントに授けられたスキルは、【スキルクリエイター】という謎のスキル。 一応戦えはするものの、戦闘では役に立たづ、ついには訓練の際に組んだパーティーからも追い出されてしまう。 途方に暮れるケントは一人でも【探索者】としてやっていくことにした。 その後明かされる【スキルクリエイター】の秘密。 そして、世界存亡の危機。 全てがケントへと帰結するとき、物語が動き出した…… ※登場する人物・団体・名称はすべて現実世界とは全く関係がありません。この物語はフィクションでありファンタジーです。

ある日、俺の部屋にダンジョンの入り口が!? こうなったら配信者で天下を取ってやろう!

さかいおさむ
ファンタジー
ダンジョンが出現し【冒険者】という職業が出来た日本。 冒険者は探索だけではなく、【配信者】としてダンジョンでの冒険を配信するようになる。 底辺サラリーマンのアキラもダンジョン配信者の大ファンだ。 そんなある日、彼の部屋にダンジョンの入り口が現れた。  部屋にダンジョンの入り口が出来るという奇跡のおかげで、アキラも配信者になる。 ダンジョン配信オタクの美人がプロデューサーになり、アキラのダンジョン配信は人気が出てくる。 『アキラちゃんねる』は配信収益で一攫千金を狙う!

無能と言われた召喚士は実家から追放されたが、別の属性があるのでどうでもいいです

竹桜
ファンタジー
 無能と呼ばれた召喚士は王立学園を卒業と同時に実家を追放され、絶縁された。  だが、その無能と呼ばれた召喚士は別の力を持っていたのだ。  その力を使用し、無能と呼ばれた召喚士は歌姫と魔物研究者を守っていく。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

トップ冒険者の付与師、「もう不要」と言われ解雇。トップ2のパーティーに入り現実を知った。

ファンタジー
そこは、ダンジョンと呼ばれる地下迷宮を舞台にモンスターと人間が暮らす世界。 冒険者と呼ばれる、ダンジョン攻略とモンスター討伐を生業として者達がいる。 その中で、常にトップの成績を残している冒険者達がいた。 その内の一人である、付与師という少し特殊な職業を持つ、ライドという青年がいる。 ある日、ライドはその冒険者パーティーから、攻略が上手くいかない事を理由に、「もう不要」と言われ解雇された。 新しいパーティーを見つけるか、入るなりするため、冒険者ギルドに相談。 いつもお世話になっている受付嬢の助言によって、トップ2の冒険者パーティーに参加することになった。 これまでとの扱いの違いに戸惑うライド。 そして、この出来事を通して、本当の現実を知っていく。 そんな物語です。 多分それほど長くなる内容ではないと思うので、短編に設定しました。 内容としては、ざまぁ系になると思います。 気軽に読める内容だと思うので、ぜひ読んでやってください。

迷宮アドバイザーと歩む現代ダンジョン探索記~ブラック会社を辞めた俺だが可愛い後輩や美人元上司と共にハクスラに勤しんでます

秋月静流
ファンタジー
俺、臥龍臼汰(27歳・独身)はある日自宅の裏山に突如できた洞窟を見つける。 語り掛けてきたアドバイザーとやらが言うにはそこは何とダンジョン!? で、探索の報酬としてどんな望みも叶えてくれるらしい。 ならば俺の願いは決まっている。 よくある強力無比なスキルや魔法? 使い切れぬ莫大な財産? 否! 俺が望んだのは「君の様なアドバイザーにず~~~~~っとサポートして欲しい!」という願望。 万全なサポートを受けながらダンジョン探索にのめり込む日々だったのだが…何故か元居た会社の後輩や上司が訪ねて来て… チート風味の現代ダンジョン探索記。

処理中です...