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現実逃避と迫り来る現実と
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ルドに抱かれれば抱かれるほど、心の中のなにかが擦りきれていくような気がした。
そしてそれと共に、なにか重たい石のようなモノが心の中を占めてゆく。
それでもその場の快楽に溺れていれば、その瞬間だけは全てを忘れることが出来た。
ルドは毎晩私を抱き潰すと、朝には政務に向かうようになった。
私がもう逃亡しないと確信したのか、ここ数日は侍女たちが部屋を出入りしている。
掃除や私の食事、支度など普通に接してくれているものの、彼女たちはルドから許可を得ていないのか、一言も私と会話を交わすことはない。
ルドのいない時間が、誰かがいても一人ぼっちのこの空間が、だんだんと心に闇を作っていった。
鳥籠の中の鳥でしかない私はそれでもルドを待ち望む。
もしこのままルドが戻らなければ、もし嘘がバレて捨てられてしまったら……。
過去の記憶も、ここでの生活もなにも分からない私はどうなるのだろうか。
そんな恐怖感と孤独から、一人の時は食事も喉を通らず、ただ鬱ぎ、隠れて泣くことが多くなった。
私が求めたモノは、本当は求めてはいけなかったのだろう。
そんなことなど、初めから分かっていたことなのに。
ただ矛盾する思いはもう自分ではどうしようも出来ないくらいに、膨れ上がっていた。
◇ ◇ ◇
そんな日々が更に数日続き、私がここへ囚われるようになってから十日以上経った頃、侍女の一人が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「アーシエ様、申し訳ございません。本来ならば、わたくしどもがお声をかけてはいけない御方だというのは充分承知しております」
侍女の中でも一番年配で他の者たちとは制服も違うことから、おそらく彼女はここの侍女頭かなにかなのだろう。
「……構いません。なにか、あったのですか?」
こうしてルド以外の人と会話をするのは、ここに来て初めてのことだ。
少しでもボロが出ないように、あくまでも貴族令嬢として私は振る舞う。
「アーシエ様へご挨拶をしたいという、ご令嬢がお見えになりまして……。とても身分の高いご令嬢でしたので、わたくし共ではお帰り頂くことも、出来ず……」
「そう……。この件に関して、ルドはなんと?」
「元々、誰も通すことのないようにとは、言い遣っているのですが……」
頭をずっと下げたままの彼女の物言いは、なんとも歯切れの悪いものだった。
大方、侍女と見下したその身分の高い訪問者とやらがごねているのだろう。
ただルドに通すなと言われているために、まさに板挟み状態ということか。
「今、ルドはどこにいるのですか?」
「本日は、ご政務のために市街地へお出かけになっておられます」
「市街地……」
それならば今すぐ誰かにルドへの言付けを頼んだとしても、うるさい客人をそこまで待たすことは出来ないはず。
だとすれば私が今出来ることは一つだけ。
「いいわ。今からそのご令嬢に会いましょう。その代わり念のために、ルドへの早馬で訪問者が来たことを伝えるように手配してちょうだい」
「よろしいのですか、アーシエ様」
「ちょうど暇をしていたところなので、構いません。着替えるのですぐ支度その準備と、お客様へのお茶菓子の用意をしてちょうだい」
「畏まりました」
そしてそれと共に、なにか重たい石のようなモノが心の中を占めてゆく。
それでもその場の快楽に溺れていれば、その瞬間だけは全てを忘れることが出来た。
ルドは毎晩私を抱き潰すと、朝には政務に向かうようになった。
私がもう逃亡しないと確信したのか、ここ数日は侍女たちが部屋を出入りしている。
掃除や私の食事、支度など普通に接してくれているものの、彼女たちはルドから許可を得ていないのか、一言も私と会話を交わすことはない。
ルドのいない時間が、誰かがいても一人ぼっちのこの空間が、だんだんと心に闇を作っていった。
鳥籠の中の鳥でしかない私はそれでもルドを待ち望む。
もしこのままルドが戻らなければ、もし嘘がバレて捨てられてしまったら……。
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そんな恐怖感と孤独から、一人の時は食事も喉を通らず、ただ鬱ぎ、隠れて泣くことが多くなった。
私が求めたモノは、本当は求めてはいけなかったのだろう。
そんなことなど、初めから分かっていたことなのに。
ただ矛盾する思いはもう自分ではどうしようも出来ないくらいに、膨れ上がっていた。
◇ ◇ ◇
そんな日々が更に数日続き、私がここへ囚われるようになってから十日以上経った頃、侍女の一人が申し訳なさそうに声をかけてきた。
「アーシエ様、申し訳ございません。本来ならば、わたくしどもがお声をかけてはいけない御方だというのは充分承知しております」
侍女の中でも一番年配で他の者たちとは制服も違うことから、おそらく彼女はここの侍女頭かなにかなのだろう。
「……構いません。なにか、あったのですか?」
こうしてルド以外の人と会話をするのは、ここに来て初めてのことだ。
少しでもボロが出ないように、あくまでも貴族令嬢として私は振る舞う。
「アーシエ様へご挨拶をしたいという、ご令嬢がお見えになりまして……。とても身分の高いご令嬢でしたので、わたくし共ではお帰り頂くことも、出来ず……」
「そう……。この件に関して、ルドはなんと?」
「元々、誰も通すことのないようにとは、言い遣っているのですが……」
頭をずっと下げたままの彼女の物言いは、なんとも歯切れの悪いものだった。
大方、侍女と見下したその身分の高い訪問者とやらがごねているのだろう。
ただルドに通すなと言われているために、まさに板挟み状態ということか。
「今、ルドはどこにいるのですか?」
「本日は、ご政務のために市街地へお出かけになっておられます」
「市街地……」
それならば今すぐ誰かにルドへの言付けを頼んだとしても、うるさい客人をそこまで待たすことは出来ないはず。
だとすれば私が今出来ることは一つだけ。
「いいわ。今からそのご令嬢に会いましょう。その代わり念のために、ルドへの早馬で訪問者が来たことを伝えるように手配してちょうだい」
「よろしいのですか、アーシエ様」
「ちょうど暇をしていたところなので、構いません。着替えるのですぐ支度その準備と、お客様へのお茶菓子の用意をしてちょうだい」
「畏まりました」
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