【R18】悪役令嬢の鳥籠~勘違い断罪からのヤンデレルートは、溺愛ルートへ移行しました~

あやめ。

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違和感の正体

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 私は日記をぱたりと閉じた。

 これがアーシエとルドとの出会い。

 出会ったその次の日には、アーシエを婚約者候補とルドがしたのだ。

 そうだ……。

 候補者は二人だった。

 侯爵家の令嬢であったアーシエと、公爵家の令嬢であったユイナ様。

 ある意味三角関係は、あの時から始まっていたんだ。


「……ただ、これ……日記というには……」


 日付も書かれている、普通の日記。

 しかしその内容が、当時子どもだったアーシエが書いていたにしてはずいぶんと大人びている。

 パラパラと数ページめくっても、同じように日にちは飛んでいるものの、その日起きたことを書いているようだっだ。


「ん-、なにかな……さっきから……」


 日記から伝わる、漠然たる違和感。

 その日の出来事とそぐわないような大人びた感想以外にも、もっと根本的ななにか。


「お嬢様、お迎えの馬車がお待ちですが」


 部屋をノックした後、執事が部屋に入ってくる。

 窓の外を覗けば、やや日は傾きかけてきていた。

 ルドに早く帰ると言った手前、これ以上実家にいるのはまずいだろう。

 あれだけアーシエに執着を見せているルドだ。

 なにかあれば、もう外出させてもらえなくなってしまう。

 ヤンデレルートからの脱出は信頼関係だと私は思っている。

 それをこんなことで崩すわけにはいかなかった。


「すぐに荷物を積めて、行くわ」

「では、そのように伝えますね」


 執事の返事を聞くと、クローゼットからカバンを取り出す。

 その中に、ルドからの手紙と新品のレターセットを入れた。


「これぐらいかな」


 置かれた人形たちには興味はない。

 それにドレスや装飾品はルドが買ってくれたものがたくさんある。

 下手にここのモノを持ち出すのは、あまり得策とは思えないからこれで十分だろう。


「あとは日記コレだけで十分ね」


 そう言って日記をカバンに入れようとした時、手からするりと日記が落ちる。


「もぅ」


 拾い上げようとした時に、そのページに目が留まった。

 内容ではない。

 先ほどから感じていた違和感は、文字だ。


「これ、日本語……」


 日記に書かれていた文字は、この世界の文字ではない。

 全てが日本語で書かれていた。


「まって……どういうことなの?」


 アーシエが日本語を使えていた。

 それが事実ならば、答えはもう一つしかない。

 しかしそれを答えとするには、問題がある。

 まずは記憶だ。

 なぜ今、どうして……。


「お嬢様?」

「ああ、ごめんなさい。もう降りるわ」


 全ての疑問もカバンに押し込め、私は足早に馬車へと向かった。

 今はとにかく帰宅することが、一番の目的だ。

 疑問は帰ってからゆっくりと考えればいい。

 この時の私を、ほんの数分後に後悔が襲うとも知らずルドの元へと急ぐ。

 それだけを胸に、馬車に乗り込んだのだった。
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