【R18】悪役令嬢の鳥籠~勘違い断罪からのヤンデレルートは、溺愛ルートへ移行しました~

あやめ。

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穢されるのは、心か躰か、両方か

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 もし無事に帰ることが出来たら、ルドに謝ってから伝えよう。

 今の私はアーシエではない。

 でもそれでも、誰よりもあなたを愛していると。

 もしそれでだめになるのならば、仕方のないことだときっと諦められる。

 今のままアーシエを演じて苦しくなるより、真実を告げる方がずっとマシだ。

 だって愛しているから。もう止めようのないぐらいに。


「貴女、あの薬は効いていたというコトなのね」

「ええ、おかげ様で。もっとも、ユイナ様が望むような、右も左も分からぬようなか弱い少女ではなくて、申し訳ないですわ」

「ホント、忌々しいい」

「そう文句を言われましても、私は私ですので」


 これは変えられない。

 そう、これだけは。

 だからずっと苦しかった。

 アーシエも、もしかしたらそうだったのだろうか……。


「これはすごいな。まさか、あの薬の効果があった上で、この態度とは」


 それまで沈黙を保っていたユリティスが、声を上げた。

 まるでモルモットでも見るように、私を捉えた瞳は興味津々だ。


「だからお兄様、殺してどこかに埋めてしまった方がいいと言ったではないですか」


 ユイナ令嬢はユリティスの腕を掴み、左右に揺らす。

 端から見れば微笑ましい兄妹関係なのかもしれないが、言っている内容があまりに物騒すぎる。

 そんなコトぐらいで、簡単に人を殺すという発想が出て来るなんて……。


「貴族殺しは発覚した場合のリスクが高いと、何度も教えただろう? たとえ、アーシエ嬢がこんな性格であっても、まだ計画が破綻したわけでない。大丈夫だよ、可愛いい妹ユイナ

「ホントに大丈夫ですの、お兄様」

「ああ、もちろんだ。おまえを王妃にさせてあげるよ」

「まぁ、うれしい」


 ユリティスは自分の腕に絡みつく妹に、目を細めた。

 シスコンというやつだろうか。妹の言うことなら、なんでもといった感じだ。


「でもどうするんですの?」

「強情なココロなど、へし折ってしまえばいいんだよ。そうすれば、どんなことも従順に聞くよういなる」


 ユリティスの瞳は、暗い炎を称えていた。

 あの日のルド以上にそれを感じるのは、おそらく私がユリティスを拒絶しているからだろう。

 その笑みのまま私に近づいてくるユリティスに、私は一歩ずつ後退していく。

 部屋は大して広くはない。

 しかもここは二階だ。

 窓の外を横目で確認するも木などもなく、到底飛び降りれそうにはない。


「どこまで逃げられるとでも?」


 くすくすと嫌味に似た笑い声をあげる。

 彼のしようとしていることを考えるだけで、泣き叫びたかった。

 彼が穢そうとしているのは私の心なのか躰なのか、それともその両方なのか。

 どちらにしても、それを容易に受け入れることなんて出来ない。
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