【R18】悪役令嬢の鳥籠~勘違い断罪からのヤンデレルートは、溺愛ルートへ移行しました~

あやめ。

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答え合わせ(三)

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「なんでも聞くよ、アーシエ」

 ルドは立ち上がると私の体を起こし、ベッドに寄りかかる形で座らせてくてた。

 そして椅子をすぐ真横に移動させると、私の手を自分の頬に持って行く。


「な、ななな。ルド様」

「ふふふ、触りたかったのかなって思って」


 バレていたのか。

 少し、いや、かなり恥ずかしい。

 でもそれでも、もう否定したくはなかった。


「触りたかったのです、ルド様に」


 素直に答えるとルドは一瞬きょとんとした後、今まで見て来たどんな表情よりうれしそうな笑顔を返す。

 その笑顔に、私の心も満たされていった。


「ルド様、私、記憶がないのです。だから、ホントはずっと……あの牢屋で目覚めた時から、自分がアーシエなのかどうかも分からないのです」

「アーシエ」


「あの牢屋で、自分のしたコトを覚えているかと尋ねられ、覚えていませんと答えた理由はそのためです。本当になにも覚えていないのです。小さい頃のコトも、ルド様との思い出も、ホントになにも分からないんです」

 急にそんなコトを言い出されて、ルドは迷惑ではないのだろうか。

 そんな不安に駆られながらも、私は言葉をつづける。


「ただ……アーシエの記憶がなくても、私は私でした……。私には、過去の……アーシエとして生まれる前の記憶があったから」


 そこまで言い終えると私は下を向いたまま、ルドの言葉を待つ。

 普通に考えて、頭がおかしくなってしまったと思われても仕方のない話だ。

 アーシエの中にいる今の私は、アーシエの記憶を持たない誰かなのだから。

 それでも受け入れて欲しい。

 私は……ルドのことを、ただ愛しているから。


「やはり、君は記憶がなかったんだね。もっと早くに気付いてあげられれば、君を苦しめるコトはなかったのに、すまない」

「なぜルド様が謝るのですか」

「元々、毒については調査していたが。それよりも、もうずっと前……あの牢屋で会話した時から僕は君の違和感に気づいていた。気づいていたのに、それでも君を僕のモノにできる。その喜びから、気づかないフリをしたんだよ」


 ルド様は私の記憶がないことに気付いていた? でもそれでも……。


「でも例えそうであったとしても、私がアーシエではないということには」

「ああ、そのことか。そうか……君は記憶を失くしているから、そう思ってしまったんだね。ん-、なんていうかな。アーシエ、君はずっと君だよ」

「ん? それはどういう」

「君に前世の記憶があるのはずっと前から知っていたよ。アーシエ、君が幼い頃に教えてくれたから。アーシエではない違和感にずっと、戸惑っていたからね。だから、そう、僕は知っていたんだよ。君のことはすべて」

「え……」


 ルド様は、アーシエの中に私の記憶があることを知っていた。

 もうずっと前から。

 それでも、アーシエに求婚してくれていたということ。


「僕は君が誰であったって、君を愛しているんだ。名前や肩書などではなく、君そのものを、ね」

「ルド様」


 ぽろぽろと涙が溢れて来る。

 アーシエであってアーシエではない。

 今の不完全な私でも、ルド様は愛してくれている。

 違う。

 もっと前から、愛してくれていた。

 そのことが、どんなことよりもうれしい。


「ふふふ……やっぱり、ヤンデレルートなんかでは、なかったのね」

「ん? アーシエ、それはどういう意味だい?」

「内緒です」


 初めから素直にさえなっていれば、答えはこんなにも簡単に出ていたのに。

 なんだ。
 
 ずっとか悩んでいた自分が馬鹿馬鹿しくて、私は思わず笑いだす。

 するとそれにつられるように、ルドも笑い出した。

 そう全ての幸せが、やっとココに揃った。
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