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エピローグ ~溺愛ルートは鳥籠の中~
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「アーシエあなた、王妃なのに、こんなところにいてもいいと思っているの?」
母はそんなコトを言いながらも、とてもにこやかな笑顔を浮かべている。
前国王の戴冠式、ルドの即位式、そして私たちの結婚式。
先月には新婚旅行という名の、外遊にも出かけてきた。
目まぐるしく変わる環境の中でもルドは相変わらず、明け方近くまで私を抱きつぶすというのを繰り返していた。
「いいんですよー。お忍びの里帰りなのですから」
「まぁまぁ。新婚さんが、そんなコトでどうするのかしら。で、喧嘩でもしたの?」
「ん-。だって、陛下が記憶のことを持ち出すから……」
一連の行事が始まる前に、母たちにはキチンと自分のアーシエとしての記憶がないことは告げていた。
さすがに、過去の記憶がないことまでは伝えられなかったが。
それでもなにか察することがあるかのように、母たちは私を受け入れてくれたのだ。
今のありのままの私を。
「記憶って言っても、アーシエがアーシエでないことに対して、陛下がなにか言ったわけではないのでしょう?」
「うん……それはそうだけど……。記憶を取り戻したいっていうから」
「それはねぇ、陛下があなたのコトを思って言って下さったのでしょ」
「分かってはいるけど……」
分かってはいても、そんな些細な言葉で傷つく自分がいる。
それはきっと、ルドが本当に好きだから。
ルドの口から記憶のことを言われると、なんだか記憶がないことがダメなコトのように思えてしまったのだ。
頭では、他意などないことは分かっている。
おそらくルドにではなく他の人に言われていたら、なんとも思わなかったのに。
「陛下に……ルド様には言われたくなかったの……」
「そうねぇ。それなら、そういうコトはここで愚痴を言うのではなくて、本人に言うべきじゃないのかしら? 次にここに来る時は、うれしい報せを持ってきて欲しいものだわ」
母は立ち上がると、私の頭をそっと撫でた。
「ふふふ。ほら、お迎えですよ」
そう言って、母は屋敷へと戻ってゆく。
うれしい報せって……。
私は自分でも、自分の頬が赤くなっているのが分かる。
「アーシエ。すまない、君がこんなに怒るなんて思わなかったんだ」
「陛下、公務を抜け出してどうするんです」
赤い顔を見られぬように、横を向き、抗議をする。
「僕はただ、君に記憶が戻った方が、君がこれからも安心して暮らせるのではないかと思っただけで……」
「知りません……」
「アーシエ」
「だって……、記憶がない不完全な私のことが、嫌になってしまったのかと……悲しくなってしまったんですもの」
これは本音だ。
あれから日記を読んでも母たちから幼い頃の話を聞いても、思い出の場所に行っても、微かになにかは記憶しているものの、すべてが戻ることはなかった。
それがいつまでも不完全のような気がして、ことあるごとに私を苛める。
自分は自分。
そう受け入れているはずなのに、ほんの少しのことで揺らいでしまうのだ。
「愛している、君を。たとえ君が誰であっても、なんであっても。この世界でただ一人の、そのままの君を愛しているんだ」
ルドは跪き、私に手を差し伸べる。
「な、な、な。陛下、いけません。国王たるもの、そのような」
ルドの行動に驚いた私は、勢いよく立ち上がった。
「国王であっても、なにであっても、愛する人のためなら、どんなコトだって僕は厭わないよ」
この笑顔に、この行動。
もうホントに、反則だわ。
こんなコトを言われたら、もうなにも言えなくなってしまう。
「帰ってきてくれるかい? 鳥籠に」
「もぅ」
ぶぅっと頬を膨らませたあと、それでも私はルドの手を取った。
「あなたのいるとことならば、鳥籠でもなんでも入りましょう。だって、あなたが私を愛してくれるから」
断罪ルートと勘違いしたあの日から、私の心はもうずっととらわれている。
でも幸せだから、そんなことはどうでもいいのだ。
鳥籠は私を守るためのモノだって、もう知っているから。
母はそんなコトを言いながらも、とてもにこやかな笑顔を浮かべている。
前国王の戴冠式、ルドの即位式、そして私たちの結婚式。
先月には新婚旅行という名の、外遊にも出かけてきた。
目まぐるしく変わる環境の中でもルドは相変わらず、明け方近くまで私を抱きつぶすというのを繰り返していた。
「いいんですよー。お忍びの里帰りなのですから」
「まぁまぁ。新婚さんが、そんなコトでどうするのかしら。で、喧嘩でもしたの?」
「ん-。だって、陛下が記憶のことを持ち出すから……」
一連の行事が始まる前に、母たちにはキチンと自分のアーシエとしての記憶がないことは告げていた。
さすがに、過去の記憶がないことまでは伝えられなかったが。
それでもなにか察することがあるかのように、母たちは私を受け入れてくれたのだ。
今のありのままの私を。
「記憶って言っても、アーシエがアーシエでないことに対して、陛下がなにか言ったわけではないのでしょう?」
「うん……それはそうだけど……。記憶を取り戻したいっていうから」
「それはねぇ、陛下があなたのコトを思って言って下さったのでしょ」
「分かってはいるけど……」
分かってはいても、そんな些細な言葉で傷つく自分がいる。
それはきっと、ルドが本当に好きだから。
ルドの口から記憶のことを言われると、なんだか記憶がないことがダメなコトのように思えてしまったのだ。
頭では、他意などないことは分かっている。
おそらくルドにではなく他の人に言われていたら、なんとも思わなかったのに。
「陛下に……ルド様には言われたくなかったの……」
「そうねぇ。それなら、そういうコトはここで愚痴を言うのではなくて、本人に言うべきじゃないのかしら? 次にここに来る時は、うれしい報せを持ってきて欲しいものだわ」
母は立ち上がると、私の頭をそっと撫でた。
「ふふふ。ほら、お迎えですよ」
そう言って、母は屋敷へと戻ってゆく。
うれしい報せって……。
私は自分でも、自分の頬が赤くなっているのが分かる。
「アーシエ。すまない、君がこんなに怒るなんて思わなかったんだ」
「陛下、公務を抜け出してどうするんです」
赤い顔を見られぬように、横を向き、抗議をする。
「僕はただ、君に記憶が戻った方が、君がこれからも安心して暮らせるのではないかと思っただけで……」
「知りません……」
「アーシエ」
「だって……、記憶がない不完全な私のことが、嫌になってしまったのかと……悲しくなってしまったんですもの」
これは本音だ。
あれから日記を読んでも母たちから幼い頃の話を聞いても、思い出の場所に行っても、微かになにかは記憶しているものの、すべてが戻ることはなかった。
それがいつまでも不完全のような気がして、ことあるごとに私を苛める。
自分は自分。
そう受け入れているはずなのに、ほんの少しのことで揺らいでしまうのだ。
「愛している、君を。たとえ君が誰であっても、なんであっても。この世界でただ一人の、そのままの君を愛しているんだ」
ルドは跪き、私に手を差し伸べる。
「な、な、な。陛下、いけません。国王たるもの、そのような」
ルドの行動に驚いた私は、勢いよく立ち上がった。
「国王であっても、なにであっても、愛する人のためなら、どんなコトだって僕は厭わないよ」
この笑顔に、この行動。
もうホントに、反則だわ。
こんなコトを言われたら、もうなにも言えなくなってしまう。
「帰ってきてくれるかい? 鳥籠に」
「もぅ」
ぶぅっと頬を膨らませたあと、それでも私はルドの手を取った。
「あなたのいるとことならば、鳥籠でもなんでも入りましょう。だって、あなたが私を愛してくれるから」
断罪ルートと勘違いしたあの日から、私の心はもうずっととらわれている。
でも幸せだから、そんなことはどうでもいいのだ。
鳥籠は私を守るためのモノだって、もう知っているから。
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とても面白かったです。
次回作も楽しみにしてます。ただ、誤字が多いので読み返して確認されてから投稿して頂きたいかなと思います。内容は素晴らしく私好みでした。
ゆうにゃん☆さま
はじめまして、こんにちわー。
感想及び、赤ありがとうございます。もう、ぎゃーですね。
私も思わず、ホラーでしたwww
ヤンデレルートからの溺愛で、どんどんよくなる二人の関係性を見ていただければと思います。
本当にありがとうございました。
今日は嬉しくてもう、寝れません❤