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第二章:帝国の滅亡
十四話:初陣
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太陽が真上を通り過ぎようとしている頃、おっさん、メリシア、俺、セルフィの四人は、見渡す限り草一本生えていない荒野のど真ん中でバルギスの進軍を待っていた。
「うおお……」
遠くに見える土煙が、ゴゴゴゴという地鳴りと共に徐々に大きくなってきて、心臓が脈打つ音もそれに呼応して高くなっていく。
早く来て欲しいような……来ないで欲しいような……大学のセンター試験の結果通知を待っている時の、あの感覚に良く似た複雑な心境で顔をこわばらせていると、おっさんが話しかけてきた。
「緊張しておるな。これがお主の初陣だ、無理もないが……あまり気負うでないぞ」
「お、おう……」
「ソウタ様、後ろは私たちにお任せください。いざとなれば撤退も視野にいれて、無理だけはなさらないでくださいね」
「あ、ありがとう……メリシア」
「報告、間もなく接敵」
「うん……報告されなくても分かってる……っつーかそういうこと言わないでくれるか。き、緊張で吐きそうになるから……」
相手側の魔術に対抗するためということでセルフィに来て貰えたのは正直心強い……のだが、さっきから相手は総数二万八千人だとか、ここを突破されたら万一に備えてグステンに待機中の一万三千の兵は全滅だとか、今さらそれを言われたところでどうしようもない情報ばかりを言ってきて、俺にプレッシャーを与えるのだけはマジでやめて欲しい。
「――きたぞ!」
おっさんが指を差した方角に目を向けると、人の群れがこちらへ迫ってきていた。
「う、あ……」
はじめは一点から広がっていったのが、今では首を横に動かさなければ端から端まで見通せないほどの黒い津波となって押し寄せてくる。
これが戦場か……。
「は、迫力が凄いな」
「ガッハッハッハ、圧巻だな!」
「笑いごとじゃないから……」
「何を縮こまっておる! この戦はこれからお主が掌握するのだ! 胸を張れぃ!」
「無理……」
俺の考えた策はこういう現場を知らない机上の空論であるかのような気がしてきて、緊張のあまり手も足もガタガタと震えだす――と、突然メリシアが俺の手をギュッと両手で握ってきた。
「ソウタ様」
ハッとしてメリシアを見ると、そこには微笑み交じりのいつものメリシアが居た。
「私やトルキダスを……何よりも自分を、信じてください。ソウタ様の考えた策は必ずうまくいきます」
「メ、メリシア……」
「宿舎で待つユーリちゃんのところへ、早く帰ってあげましょう」
そういってニッコリと笑うメリシアを、腕を組んでニカっと笑うおっさんを、無表情で何やらこちらに手をかざすセルフィを、順番に見る。
そうだ。
俺がみんなを――守るんだ。
「報告、体組成強化、機能向上、知覚向上、完了。高位魔術障壁のため、効果は日没まで」
「おっし……じゃ、頑張ってみるわ」
「はい! ご武運をお祈りしております!」
「お主の活躍、ここで見ておるからな」
「おう、笑い話じゃなかったってところを見せてやるよ」
昨晩、おっさんとルルーさんへ策を話した時の、二人の反応がフラッシュバックする。
♦
「へぇ、その方法っていうの、是非とも教えて貰いたいわね」
ルルーさんが、それは私の役目よ、と言わんばかりに手を差し出してきたため、灰皿を渡してから自分の席へと戻る。
「その魔術障壁ってのは、恐らく地上部分にはないんだろ?」
「当たり前じゃない。地上にそんなもの展開したら、兵の移動に支障が出るわ」
「だよな。だからさ、策というのもおこがましいほど単純な思いつきなんだけど……誰の目にも止まらないほどの速度で、そのディモズってやつのところまで駆け抜ければいいんじゃないかなって――」
「フッ……フフッ、フフフフフッ」
「ガハッハッハッハッハ!」
突然二人が大笑いし始めたため、キョトンとしてしまう。
「な、なんだよ」
「いや、なかなかどうして、良いではないか。誠にお主らしい明快な策だ」
「フフフフ……そうね、確かにその発想は無かったわ」
なにか、とんでもなく馬鹿にされてないか……?
「……や、やっぱダメかな?」
「――ん? おお、いやいや。違うのだ、お主が考えているようなことではない。オレもクシュナもメリシアも、ずっと、進軍を食い止めるためにはどうしても犠牲は必要という固定観念のもとで、お主にどうやって戦って貰おうかと考えを巡らせていたものでな」
おっさんがテーブルに手をついて頭を下げる。
「勘違いさせてすまぬ。お主ができると思うのなら、できるのやもしれぬ。いや、それが可能ならば是非やってみせて欲しい」
「あの三兄弟を子ども扱いしたアナタの実力、信じているわ」
♦
――気が付けば、体の震えは既に止まっていた。
スゥーッと大きく息を吸い、目を閉じて自分の鼓動と呼吸に全神経を集中させていく。
「フゥー……」
やがて鼓動が聞こえなくなり、呼吸音もしなくなる。
目を開けると、周囲にはゆっくりとした時の流れが訪れていた。
「そういえば、こうして冷静にスローモーション状態になったのは初めてだな……」
今までは必要な場面が突然きたり、無我夢中でワケも分からずこの状態になっていたから――なんか新鮮だな。
とりあえず前方に向けて駆けると、ゆっくり動く世界を自分だけが高速で動いているからか、まるですべてが止まっているように感じられるが、この状態をどれくらい続けられるのか自分でも分からないため、急いでディモズを探し出す必要がある。
そのまま先陣を切っていた兵士の目前まで迫り、思いきり跳躍する。
「うっわ」
上から見ると、その数の多さに改めて驚愕する。
心配になっておっさん達のほうをチラっと振り返る――地上で見ていたときは、プレッシャーやら何やらで先頭集団が目と鼻の先まで迫ってきているように思っていたが、こうして見てみるとまだまだ距離があるようで一安心だ。
「それにしても、この中から見つけることなんてでき――ん?」
兵士の群れが黒い雲の塊のようになって地面を埋め尽くしている中に、台風の目のような、明らかに茶色い荒地の色が目立つ一角があることに気づく。
ルルーさんが言っていた結界というやつなのか、その真上を卵の殻のような楕円形の青い膜が薄っすら覆っていて、厳重さから言ってもあそこが本陣で間違いなさそうだ。
「フッ!」
着地するときに人を踏まないか心配だったが、運よく地面に着地することができた。
間髪入れずに再度跳躍し、本陣の手前へと降り立つ。
「悪いけど少しどいてくれ」
隙間なく本陣を囲っている、おっさん並みに屈強な兵をかき分けてようやく開けた場所へ出ると、この場にあって明らかに異質な、六頭のシュロルが引くどでかい馬車と、それを守るように佇む五人の衛兵が広場の中心にいた。
「あれか……」
馬車へと駆け寄り、意を決して扉を開ける。
「えっ?」
予想外なことに馬車の中には人影がなく、金や銀で彩られた豪奢な玉座があるのみだった。
驚きのあまり固まっていると外が突然騒がしくなったため、慌てて馬車から飛び出る――
「ぬ!? 貴様、何者だ!!」
「御座から離れんかぁ!」
と、馬車の扉側にいた二人の衛兵が俺に気付いて襲いかかってきた。
まずい、スローモーションが切れたのか!
「うわぁっ!?」
一人は槍で、一人は剣で斬りかかってきたが、動きが速すぎてまったく見えず、みぞおちと首にモロに食らってしまう。
ガギッ――ギャリンッ――
「なにぃ!?」
「バカなっ!?」
が、槍は柄の真ん中あたりで縮むように曲がり、剣は下の部分を四分の一ほど残してポッキリと折れてしまい、それを目にした二人が信じられないものを見たかのように顔を見合わせたあと、俺へと視線を戻す。
「まさか貴様、創世の救主かっ!」
「くそっ、グステンにもいたとは……!」
ジリジリと俺との間合いを図る二人に気が付いたのか、馬車の反対側にいた残り三人も駆け寄ってきた。
……これ以上ダラダラと時間をかけるわけにはいかなそうだ。
「……あんたらの大将、ディモズはどこだ?」
「馬鹿が、答えると思うか! 貴様はここで死ぬのだ!!」
「だよな」
再び呼吸を整え、スローモーション状態に移行する。
集まってきた衛兵の鎧を全て剥がし取り、ついでに手に持っていた武器を回収、さらに場を混乱させるためにシュロルのくつわを解いてやる。
俺への攻撃に失敗して間合いを図っていた衛兵二人を小脇に抱え、不測の事態が発生したため、前もって言われていたようにとりあえずおっさん達の元へと戻る。
「おっさん、やばいわ。本陣っぽいとこに大将がいない」
見たことを報告しながら連れてきた二人を放り投げる。
「うぐっ!?」
「ぐあっ!」
「こいつらと、他にも三人の衛兵が本陣にある馬車を守ってたんだけど、中はもぬけの殻で玉座っぽい椅子しかなかったわ」
「ぬっ!? ず、随分と早かったな……こちらは交戦までまだまだ猶予があるぞ」
「おかえりなさいませソウタ様! この短い間に捕虜を二名も連れてくるなんて、さすがですっ!」
あ、そうか。いちおう捕虜って扱いになるのか。
「もしかして、この二人を使って進軍を止めさせたり……なんてことはできないか?」
「これがディモズであれば交渉材料になるであろうが、それ以外は無理だ」
「そうか……」
まぁ、そりゃそうだよな。
「じゃあこの二人から大将の居場所を何とかして聞き出せないか?」
「回答、聞き出す必要はない」
セルフィが二人の頭に手をかざしたかと思えば、次の瞬間、俺に向かって駆け寄ってきた。
「報告、ディモズは現在セルフィの村を攻撃中」
「……え? グステンに向かってきてるんじゃないのか?」
セルフィの村を攻撃って、じゃああの中にはいないのか?
というか、なんでセルフィの村を攻撃?
予想だにしない言葉に混乱してしまうが、いつも無表情のセルフィが眉根を寄せて涙を流しているのに気が付く――
「ソウタ、お願い……みんなを助けて……」
「うおお……」
遠くに見える土煙が、ゴゴゴゴという地鳴りと共に徐々に大きくなってきて、心臓が脈打つ音もそれに呼応して高くなっていく。
早く来て欲しいような……来ないで欲しいような……大学のセンター試験の結果通知を待っている時の、あの感覚に良く似た複雑な心境で顔をこわばらせていると、おっさんが話しかけてきた。
「緊張しておるな。これがお主の初陣だ、無理もないが……あまり気負うでないぞ」
「お、おう……」
「ソウタ様、後ろは私たちにお任せください。いざとなれば撤退も視野にいれて、無理だけはなさらないでくださいね」
「あ、ありがとう……メリシア」
「報告、間もなく接敵」
「うん……報告されなくても分かってる……っつーかそういうこと言わないでくれるか。き、緊張で吐きそうになるから……」
相手側の魔術に対抗するためということでセルフィに来て貰えたのは正直心強い……のだが、さっきから相手は総数二万八千人だとか、ここを突破されたら万一に備えてグステンに待機中の一万三千の兵は全滅だとか、今さらそれを言われたところでどうしようもない情報ばかりを言ってきて、俺にプレッシャーを与えるのだけはマジでやめて欲しい。
「――きたぞ!」
おっさんが指を差した方角に目を向けると、人の群れがこちらへ迫ってきていた。
「う、あ……」
はじめは一点から広がっていったのが、今では首を横に動かさなければ端から端まで見通せないほどの黒い津波となって押し寄せてくる。
これが戦場か……。
「は、迫力が凄いな」
「ガッハッハッハ、圧巻だな!」
「笑いごとじゃないから……」
「何を縮こまっておる! この戦はこれからお主が掌握するのだ! 胸を張れぃ!」
「無理……」
俺の考えた策はこういう現場を知らない机上の空論であるかのような気がしてきて、緊張のあまり手も足もガタガタと震えだす――と、突然メリシアが俺の手をギュッと両手で握ってきた。
「ソウタ様」
ハッとしてメリシアを見ると、そこには微笑み交じりのいつものメリシアが居た。
「私やトルキダスを……何よりも自分を、信じてください。ソウタ様の考えた策は必ずうまくいきます」
「メ、メリシア……」
「宿舎で待つユーリちゃんのところへ、早く帰ってあげましょう」
そういってニッコリと笑うメリシアを、腕を組んでニカっと笑うおっさんを、無表情で何やらこちらに手をかざすセルフィを、順番に見る。
そうだ。
俺がみんなを――守るんだ。
「報告、体組成強化、機能向上、知覚向上、完了。高位魔術障壁のため、効果は日没まで」
「おっし……じゃ、頑張ってみるわ」
「はい! ご武運をお祈りしております!」
「お主の活躍、ここで見ておるからな」
「おう、笑い話じゃなかったってところを見せてやるよ」
昨晩、おっさんとルルーさんへ策を話した時の、二人の反応がフラッシュバックする。
♦
「へぇ、その方法っていうの、是非とも教えて貰いたいわね」
ルルーさんが、それは私の役目よ、と言わんばかりに手を差し出してきたため、灰皿を渡してから自分の席へと戻る。
「その魔術障壁ってのは、恐らく地上部分にはないんだろ?」
「当たり前じゃない。地上にそんなもの展開したら、兵の移動に支障が出るわ」
「だよな。だからさ、策というのもおこがましいほど単純な思いつきなんだけど……誰の目にも止まらないほどの速度で、そのディモズってやつのところまで駆け抜ければいいんじゃないかなって――」
「フッ……フフッ、フフフフフッ」
「ガハッハッハッハッハ!」
突然二人が大笑いし始めたため、キョトンとしてしまう。
「な、なんだよ」
「いや、なかなかどうして、良いではないか。誠にお主らしい明快な策だ」
「フフフフ……そうね、確かにその発想は無かったわ」
なにか、とんでもなく馬鹿にされてないか……?
「……や、やっぱダメかな?」
「――ん? おお、いやいや。違うのだ、お主が考えているようなことではない。オレもクシュナもメリシアも、ずっと、進軍を食い止めるためにはどうしても犠牲は必要という固定観念のもとで、お主にどうやって戦って貰おうかと考えを巡らせていたものでな」
おっさんがテーブルに手をついて頭を下げる。
「勘違いさせてすまぬ。お主ができると思うのなら、できるのやもしれぬ。いや、それが可能ならば是非やってみせて欲しい」
「あの三兄弟を子ども扱いしたアナタの実力、信じているわ」
♦
――気が付けば、体の震えは既に止まっていた。
スゥーッと大きく息を吸い、目を閉じて自分の鼓動と呼吸に全神経を集中させていく。
「フゥー……」
やがて鼓動が聞こえなくなり、呼吸音もしなくなる。
目を開けると、周囲にはゆっくりとした時の流れが訪れていた。
「そういえば、こうして冷静にスローモーション状態になったのは初めてだな……」
今までは必要な場面が突然きたり、無我夢中でワケも分からずこの状態になっていたから――なんか新鮮だな。
とりあえず前方に向けて駆けると、ゆっくり動く世界を自分だけが高速で動いているからか、まるですべてが止まっているように感じられるが、この状態をどれくらい続けられるのか自分でも分からないため、急いでディモズを探し出す必要がある。
そのまま先陣を切っていた兵士の目前まで迫り、思いきり跳躍する。
「うっわ」
上から見ると、その数の多さに改めて驚愕する。
心配になっておっさん達のほうをチラっと振り返る――地上で見ていたときは、プレッシャーやら何やらで先頭集団が目と鼻の先まで迫ってきているように思っていたが、こうして見てみるとまだまだ距離があるようで一安心だ。
「それにしても、この中から見つけることなんてでき――ん?」
兵士の群れが黒い雲の塊のようになって地面を埋め尽くしている中に、台風の目のような、明らかに茶色い荒地の色が目立つ一角があることに気づく。
ルルーさんが言っていた結界というやつなのか、その真上を卵の殻のような楕円形の青い膜が薄っすら覆っていて、厳重さから言ってもあそこが本陣で間違いなさそうだ。
「フッ!」
着地するときに人を踏まないか心配だったが、運よく地面に着地することができた。
間髪入れずに再度跳躍し、本陣の手前へと降り立つ。
「悪いけど少しどいてくれ」
隙間なく本陣を囲っている、おっさん並みに屈強な兵をかき分けてようやく開けた場所へ出ると、この場にあって明らかに異質な、六頭のシュロルが引くどでかい馬車と、それを守るように佇む五人の衛兵が広場の中心にいた。
「あれか……」
馬車へと駆け寄り、意を決して扉を開ける。
「えっ?」
予想外なことに馬車の中には人影がなく、金や銀で彩られた豪奢な玉座があるのみだった。
驚きのあまり固まっていると外が突然騒がしくなったため、慌てて馬車から飛び出る――
「ぬ!? 貴様、何者だ!!」
「御座から離れんかぁ!」
と、馬車の扉側にいた二人の衛兵が俺に気付いて襲いかかってきた。
まずい、スローモーションが切れたのか!
「うわぁっ!?」
一人は槍で、一人は剣で斬りかかってきたが、動きが速すぎてまったく見えず、みぞおちと首にモロに食らってしまう。
ガギッ――ギャリンッ――
「なにぃ!?」
「バカなっ!?」
が、槍は柄の真ん中あたりで縮むように曲がり、剣は下の部分を四分の一ほど残してポッキリと折れてしまい、それを目にした二人が信じられないものを見たかのように顔を見合わせたあと、俺へと視線を戻す。
「まさか貴様、創世の救主かっ!」
「くそっ、グステンにもいたとは……!」
ジリジリと俺との間合いを図る二人に気が付いたのか、馬車の反対側にいた残り三人も駆け寄ってきた。
……これ以上ダラダラと時間をかけるわけにはいかなそうだ。
「……あんたらの大将、ディモズはどこだ?」
「馬鹿が、答えると思うか! 貴様はここで死ぬのだ!!」
「だよな」
再び呼吸を整え、スローモーション状態に移行する。
集まってきた衛兵の鎧を全て剥がし取り、ついでに手に持っていた武器を回収、さらに場を混乱させるためにシュロルのくつわを解いてやる。
俺への攻撃に失敗して間合いを図っていた衛兵二人を小脇に抱え、不測の事態が発生したため、前もって言われていたようにとりあえずおっさん達の元へと戻る。
「おっさん、やばいわ。本陣っぽいとこに大将がいない」
見たことを報告しながら連れてきた二人を放り投げる。
「うぐっ!?」
「ぐあっ!」
「こいつらと、他にも三人の衛兵が本陣にある馬車を守ってたんだけど、中はもぬけの殻で玉座っぽい椅子しかなかったわ」
「ぬっ!? ず、随分と早かったな……こちらは交戦までまだまだ猶予があるぞ」
「おかえりなさいませソウタ様! この短い間に捕虜を二名も連れてくるなんて、さすがですっ!」
あ、そうか。いちおう捕虜って扱いになるのか。
「もしかして、この二人を使って進軍を止めさせたり……なんてことはできないか?」
「これがディモズであれば交渉材料になるであろうが、それ以外は無理だ」
「そうか……」
まぁ、そりゃそうだよな。
「じゃあこの二人から大将の居場所を何とかして聞き出せないか?」
「回答、聞き出す必要はない」
セルフィが二人の頭に手をかざしたかと思えば、次の瞬間、俺に向かって駆け寄ってきた。
「報告、ディモズは現在セルフィの村を攻撃中」
「……え? グステンに向かってきてるんじゃないのか?」
セルフィの村を攻撃って、じゃああの中にはいないのか?
というか、なんでセルフィの村を攻撃?
予想だにしない言葉に混乱してしまうが、いつも無表情のセルフィが眉根を寄せて涙を流しているのに気が付く――
「ソウタ、お願い……みんなを助けて……」
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