第四創世主は殺人衝動を性欲で捻じ伏せるらしい~最強の力を得た凡人、仕方なくイヤイヤ成り上がっていったら世界を救うことになりました~

文場凡

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第三章:第四創世主の弱点

六話:遺跡探し

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 「否定、遺跡の場所を隠喩するような記述はある」
 「なんて書いてあるんだ?」
 「地の牢獄に囚われし貧者、牢獄にも天があると知れ」
 「……それだけ?」
 「肯定」

 マジかよ……。

 「でも、この情報のお陰で闇雲に探さなくて済みますね」

 絶望的な情報量の少なさに意気消沈してしまうが、メリシアの前向きな発言にハッとさせられる。
 そうだよな、この巻物がなきゃ何も無い状態で探さないといけなかったんだから、それだけでも良しとするべきだよな。
 やっぱこういうとこが……ありがとう、メリシア。

 「んじゃ、頑張ってみんなで考えてみるか」
 「はいっ」

 まず、地の牢獄に囚われし貧者ってのは、この洞窟に転移してきた俺たちのことだよな。
 その牢獄にある天っていうと、この空ってことになるか……?
 
 「もしかして、この洞窟の天井に……?」

 遺跡っていうくらいだから、先入観も手伝ってこの地上部分にあるものだと思い込んでいたが、

 「さっき、ドラッゲンは遺跡の導き手で鍵のような役割を担っているかもしれないって言ってたよな?」
 「肯定、しかし補足すると遺跡の導き手というのはこの文書に記載があるが、鍵のような役割というのはこの文書を読んだ上で出したセルフィの推測」
 「そう。導き手が空を飛べる生物ってところにヒントがあると思うんだよ。あのイボイボついた謎生物……えーと、ギルノールだっけ? 地上に遺跡があるとして、あいつがその導き手だって良さそうなもんだし、なんなら導き手とか必要無いしな」
 「なるほど。敢えて空を飛べる生物を導き手――つまり遺跡にたどり着くために必要な手段にした、ということ自体が、この洞窟の天井部に遺跡があることを示唆している、ということか」

 装備の整理を終えた様子のおっさんも会話に参加してくる。

 「報告、天井部に遺跡がある場合、ドラッゲンのいない現状では到達不可能」
 「そうでもないぜ」

 根拠なく否定されたと思ったのか、セルフィがハテナ? という表情を浮かべる。
 最近、最初に出会った頃が嘘のように色々な表情を見せてくれるようになってきて、素直に嬉しい。
 ……まぁ、捉えようによっては何だか馬鹿にされているような反応ではあるが。

 「さっき一時間くらいかけてこの洞窟の端っこまで行って戻ってきただろ? あの時、端っこには壁があったんだけど、ほぼ垂直になってたから、俺ならよじ登っててっぺんまで行けると思う」
 「失礼ながら、ご主人様お一人で行かれるのですか?」
 「いやいや、ファフミル達を抱えて上るつもりだよ」
 「把握」
 「よし、では食事休憩にしよう」

 ファフミルがドラッゲンの肉を細かく切り、塩を振りかけてから焚火にかけた網の上で焼いていく。
 あんな見た目なのに、本当においしいのか……? と半信半疑ながらも、肉の焼ける何ともたまらない音と匂いが食欲を刺激してくる。

 「焼けました、ご主人様。どうぞお先にご賞味ください」
 「ゴクリ……い、いただきます……」

 一息に頬張り、咀嚼する。

 「……うっま」

 レアに近いミディアムな焼き加減は程よくサシの入った油をそのままにしており、口の中で肉をとろけさせる。
 これで炊き立ての白飯と漬物でもあれば、もはや高級焼肉定食としてランチ三千円でやっていけそうである。

 「おお、このような上質な肉は初めて口にするな……こんなことならば酒も持ってくるのだった」
 「とても柔らかくておいしいですね……」

 おっさんとメリシアも焼けたものから順番に食べ始めていく。

 「遠慮なくお召し上がりください。この人数ではとても食べきれない量ですので、残った肉はセルフィに冷凍処理して貰って、転移の際に一緒に持ち帰って王宮の皆にも振舞えばご主人様の株も上がりましょう」
 「ファフミルは気が利くなぁ。いいお嫁さんになりそうだ」
 「お戯れを……ボ、ボクなんかをそんな、ご主人様の正室になど……」
 「えっ……? いや、いやいや! 俺のってことじゃなくて!」
 「でも、ご主人様がお望みならボクは……」

 ダメだ、聞いてねぇ。
 これまでの経験上、こうやって一人で妄想を暴走させ始めたファフミルを止める手段は、無い。
 しかしこのまま暴走が続けば、やがてセルフィまで加わってあの時みたいなとんでもないことになってしまいかねない。

 「モグッ、ムグモグモグッ!」

 ここは急いで食べて、急いで出掛けてしまおう……。

 「子供は三人が丁度良うございますか……? ご主人様さえよろしければボクは何人でもよろしいのですが……」
 「……ご馳走様でした! よっしゃ行くかぁ!」
 「ソウタ様、もうよろしいのですか?」
 「うん、もうお腹いっぱいだ!」
 「ではオレはここで留守番をしておこう。なに、心配はいらん。ドラッゲンとやらさえ来なければ、一人で何とでもできる」
 「おう、頼んだぜおっさん。どれくらいかかるか分からないけど、必ず戻ってくる」
 「当然だ、お主はこんなところでくたばるような男ではないと信じておる」

 別れの挨拶代わりに拳と拳を軽くぶつけ合い、四人分の最低限の水だけをホルスターのような形状の革製のベルトに差し込んで装着し、さっそく出発する。
 ……メリシアを背負い、セルフィを左腕で、何やら恍惚の表情を浮かべているファフミルを右腕で、それぞれの腕に座らせるようにして抱えながら、ドラッゲンと出会った方角からは真西になる方角へと真っすぐ進んでいくと、一時間半くらいで壁へと到達する。
 さすがに一人の時より時間はかかったが、多分一人なら一時間程度でここまで来れただろう。
 そう考えると、四方向のうち別の辺に該当する二方向で端まで行くのにほぼ一時間かかったということになり、この空間の構造が恐らく円形か四角形で、あの洞窟から転移してきた拠点は、丁度その中心点に位置するらしいことがこれで分かった。
 最初の予想通り、とんでもなく広大な地下空間だ。

 「……それじゃ、上ってくぞ」
 「はいっ」

 メリシアが力を入れてギュッとしがみついてくる。
 背中に当たる柔らかな膨らみがヤバイ。

 「了解」

 左腕に座らせていたセルフィが俺の首に腕を巻きつかせるように抱き着いてくる。
 左わき腹に当たる柔らかな膨らみがヤバイ。あとなんかいい匂いする。

 「ご主人様っ」

 右腕に座らせていたファフミルがセルフィと同じく抱き着いてくる。
 右わき腹がおっぱいに挟まれてヤバイ。
 合計六個もの美巨乳による夢のおしくらまんじゅうに押されて、正直なところグッドモーニングが泣きそうです。

 「フッ!」

 激しく心をかき乱す色欲を吹き飛ばすように、かつ、三人を振り落とさないように細心の力加減で跳躍し、減速したところで壁に腕を突き刺して止まる。
 慎重に足で穴を掘って足を掛け、そこから真上に二度目の跳躍をし、また減速したところで壁に腕を突き刺し……途中で何度か横穴を掘って休憩を挟みつつ、二十数回は同じことを繰り返しただろうか。
 ようやく天井が見えてきた。
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