第四創世主は殺人衝動を性欲で捻じ伏せるらしい~最強の力を得た凡人、仕方なくイヤイヤ成り上がっていったら世界を救うことになりました~

文場凡

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第三章:第四創世主の弱点

七話:据え膳

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 「おっし、じゃあこっから穴掘ってくか」

 天井付近でまず横穴を掘り、そこからはスロープ状に上へ向かって掘り進め、天井部分に到達した後は来た道を戻るように、拠点めがけて真っすぐ掘っていく。

 「みんな、疲れてないか?」
 「平気」
 「お気遣い頂きありがとうございます。ボクならご心配には及びません」
 「私も大丈夫です。ご主人様こそお疲れではないですか?」
 「いや全然――あ、ごめ。そこ、また下に穴開けて掘った岩捨てるからちょっといいかな」
 「あっ、申し訳ありません」

 拠点から壁までは跳躍を挟んでほぼ真っすぐこれたため、生い茂る木など全く障害にはならなかったのだが、天井部分は固い岩盤が続いていて、土のように横にかき分けて進んでいくといったことができず、ある程度掘ったら下に穴を掘ってそこから捨てるというのを繰り返さなければならず、必然、進むスピードもかなり低下してしまっていた――

 「よし、ここでいったん休むか」

 十時間以上、休みなく……しかも素手を使って急ピッチで掘り続けていたため、さすがに疲れたような気がしてきて、そう提案する。
 時折、岩盤投棄用の穴から逆さに頭を出して周囲を見回したりしているのだが、ここまでの間、遺跡らしきものはもちろん、下には雲、横には平坦な天井以外に何も見当たらない。

 「そうしましょう。お疲れ様です、ソウタ様」
 「ソウタ、お水、冷やしておいた」
 「ありがとうメリシア。セルフィもありがとう、冷たいお水なんて最高だ」
 「こちら、少ないですが非常食として持ってまいりました」
 「お? なんだこれ、美味そう」

 ファフミルの手には、包装が解かれたシリアルバーのようなものが四つ乗せられていた。

 「エルフの村で昔から作られております、木の実を飴で固めたお菓子でございます。栄養価が高いため、少量でも満腹感が得られます」
 「おおー、ありがとうファフミル。ありがたく頂くよ」

 お菓子を受け取りながらそう言うと、ファフミルが嬉しそうに満面の笑みを浮かべてお辞儀をする。
 スティックノリくらいの大きさがあるそれを、パキパキと噛み折りながら咀嚼する……味は高級シリアルをべっこう飴で固めたような感じで中々美味しい。
 あっという間に一個食べ終え、つつましい夕食を終える。

 「じゃ、俺は先に寝るわ……ちょっと離れたところにいるから、なんかあったら声かけてくれな」
 「わかりました。おやすみなさいませ、ソウタ様」
 「提案、精神汚染の開始までもう間もなくのため、セルフィ達との休養を推奨。もちろん睡眠の邪魔はしないようにする」
 「フェッ!?」

 突然セルフィがとんでもないことを言い出したため、声帯ではなく鼻の奥から声が出てしまう。

 「ボクもそれがいいと考えます、ご主人様」
 「ソ、ソウタ様さえよろしければ……私も、その提案に賛成ですっ」
 「いや、え。ちょ、待って、こんなに汚れてるし衛生上よくないっていうか……」

 いつものように、発作が起きる直前にセルフィが教えてくれて、物陰とか戸締りした室内とかでサッパッと終わらせればいいと思うのだが……男としてハッキリ断ることもできないというジレンマに苛まれ身動きが取れないでいると、

 「では、失礼いたします」

 何が『では』なのか、ファフミルが俺の背後に体を密着させてきた。
 サラサラの黒髪がうなじをくすぐってきてゾクゾクする。

 「ソウタ、固くなってる。可愛い」

 ファフミルの後に続けとばかりに、セルフィがススッと俺の右腕に自身の体を絡めてくる。
 腕に押し付けられた二つの膨らみが、身じろぎする度に絶妙な抵抗感で俺の理性を刺激する。

 「し、失礼します……っ!」

 最後に残ったメリシアは、何を思ったのか正面から寄り添うように俺の胸へ身を預けてくる。
 頭一つ分の身長差があるとはいえ、こちらを見上げてくる美少女の、気恥ずかしさに潤んだ瞳と寂しそうに少し尖らせている唇に、思わず吸い込まれそうになってしまう。
 ――これが美女三名によるジェットストリームアタックか。
 いったい俺は誰を踏み台にすればいいんだ。

 「アバババ」

 全身を覆う、女性特有の柔らかな肌から伝わってくる温もりに、グッドモーニングヤツもたまらずに「チーッス」と出勤してしまい、もはやどうにもできないと悟ってワケの分からない断末魔をあげる。

 「提案、ソウタは横になったほうがいい」
 「ボクもご主人様には休養なさって頂きたいです」
 「そ、そうですねっ。そうだ、地肌に体を横たえて頂くのも……き、気が引けますから……」

 プチップチップツッ――シュル――ファサ――

 メリシアが、羽織っていたカーディガンのボタンをおもむろに外し始め、脱ぎ終えたそれを地面へと敷いた。
 何を考えているのか、それに続くようにセルフィとファフミルが脱ぎだしたため、さすがに止める。

 「脱がなくていいっ! いいって、おい、脱ぐなっつってんの! 二人は脱いだら下着でしょ!? そのままでいいから! 地面に、地面に寝るからっ!!」

 シュルシュル――ファサ――

 ……俺の無駄な抵抗は無視されて終わった。
 メリシアはワンピースの上に羽織っていた上着のみを脱いだため、まだ許容範囲――それでも、いつ見ても新鮮な感動を与えてくれる神乳の見事な谷間は三分の一程度バルン出ている――だが、セルフィはなぜか上下ともに脱いでしまったため完全に下着姿。
 ファフミルは背後にいるため見れないのがざんね……救いではあるが、それでも脱ぐ前より一層はっきりと伝わってくる、でかさの割に上向きの奇跡がムニュウと背中に押し付けられ、え? 俺って背中が性感帯なの? と思わされるほどに、こうふ……焦ってしまう。

 「こ、こちらへどうぞ……」

 不意に手を引かれ、もはや足腰が立たなくなっている俺は、なすがまま前のめりに突っ伏してしまう。

 「も、もめんっ! ふぁいふぉうふ……ふぁ……?」
 「んっ、ぁッ!」

 メリシアを押し倒すような格好になってしまい、怪我をしていないか心配になって声を出したのだが、以前も嗅いだことのある雨上がりの森のような静謐感に、今回は少しだけ汗の匂いがブレンドされたような、何とも言えず煽情的な香りが鼻腔に広がっていることに気が付き、思考が停止する。

 「ソ、ソウタ様……そんな、汚いところ……」

 くぐもって聞こえてくる声は、少し震えている。

 「ソウタは楽にして」
 「ご主人様、あとはボク達にお任せください」

 任せるって、ナニを……?
 俺はこれからどうなってしまうんだ?
 二十八年間守り抜いてきたものが、今日ようやく破られようとしているのか?

 「……ふぇふぃふぁい」
 「ん――ご主人様。何か仰いましたか?」
 「ンァッ! ソ、ソウタ様っ――うご……ないで……」
 「できなーい!」

 ブワッと立ち上がり、しなだれかかるセルフィとファフミルをそっと跳ね除け、跳躍する。
 瞬間、脳内に浮かんだ”据え膳食わぬは男の恥”ということわざに、据え膳食えるなら二十八年間も童貞やってねぇ! 据え膳食えぬが童貞の道理! と、謎のことわざ返しをする。
 今のヘタレた俺には、冷たい岩盤を頭で削るこの感触こそ相応しい――

 ガガガガガガガッ――スポンッ

 「あれっ?」

 数十メートルくらいは飛んだだろうか、突然、岩盤を突き抜けて空洞に出てしまった。
 横穴を掘っている時は、岩盤を捨てる時に掘った穴から入ってくる明かりや、メリシアが指先から出してくれた炎のお陰で特に不自由しなかったが、ここは光源が何も無いため本当に真っ暗で何も見えない。
 手探りで周りを調べていると、壁から突起物が出ていることに気が付き、ベタベタと触る――と、カチリと音がして、辺りが突然明るくなった。

 「うぉっ!? 眩しっ!!」

 暗闇に慣れてきた瞳に突然飛び込んできた光に目が眩んでしまうが、いったい何が起こったのか気になり、手を前にかざしながら薄くまぶたを開いていくと、目の前には、朽ち果てつつある何かの建造物が乱立する、都市のようなものが広がっていた。
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