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第三章:第四創世主の弱点
八話:精神操作
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「遺跡……こんなとこにあったのか……」
どうやらここは遺跡全体の明かりを操作するための、配電盤のような場所の前らしい。
壁には巻物に書いてあったような文字と壁に埋め込まれたスイッチが羅列していて、たまたまその中でも一番大きなスイッチ――遺跡全体の証明をオンオフするブレーカーみたいなものか――を押したようだ。
跳躍して全体を見渡してみると、下にある空間ほどではないが、下手をするとオールタニアがすっぽり入るのではないかと思われるほどの広さがあった。
「おーい、誰かいるかー!?」
お約束だが、一応誰かいないか確認してみる。
……暫く耳を澄ませてみたが、当然ながら返事はなかった。
「ま、あんだけ暗かったら人なんているわけないよな……メリシアー、セルフィー、ファフミルー! 遺跡見つけたから一回降りるぞー!」
俺が掘った……というか突き抜けてきた穴に向かって叫ぶと、下から「見つかったのですか!?」というメリシアの驚く声が聞こえてきた。
「みんなで来れるように穴広げるからちょっとどいててくれー!」
メリシアの「分かりましたー!」という返事を待ってから、穴を広げつつ下へと降りていく――と、メリシアもセルフィもファフミルも、脱いだ服を着てしまっていた。
稀に見る、というか人生初のチャンスを逃したことが、残念なような、ホッとしたような、なんとも不思議な気分になる。
でも多分これ……後で何度も思い出して、後悔するヤツだな……はぁ。
「……ここからさらに上に行くとめちゃくちゃ広いとこがあって、そこに廃墟になった街みたいなのがあったぞ。多分あれが遺跡だ」
「では早速参りましょう!」
ダメだ……続きも無さそうだ。
「うっうっ……」
「ご主人様、泣いておられるのですか……?」
「い、いかがなさいましたか!?」
「ソウタ、泣かない」
セルフィに頭をヨシヨシと撫でられる。
「……把握、続きは帰ってから」
「心を読まないでぇぇぇぇぇぇ!」
ガバッと三人を抱き上げて跳躍し、遺跡がある空間の配電盤の前で降ろすと、早速セルフィが壁の文字を解読してくれる。
「報告、ここは遺跡の明かりを調節する施設」
「やっぱりか……今はどうなってる?」
「回答、全点灯になっている」
「よっし、そしたら探索を始めようか」
俺を先頭にして四人が固まるように歩きはじめる。
まずは近場にある建物から一つ一つ調べていき、徐々に探索の範囲を広げていく。
……不思議なことに、モルタルのような建材で作られた建物はどれも内装や家具といったものが無く、生活感がない。
当然、人の死体も皆無のため、この遺跡が過去にどんな存在だったのか、何を目的に作られたものなのか、何があったのか、まったく分からない。
「人が住んでた形跡が無い街ってのは、なんだか不気味だな……」
「貧者の洞窟というくらいですから、資源や物資が枯渇して衰退していったのかもしれませんね」
「否定、この遺跡全体を照らしている照明には、完全に未知の技術が使われている。このため、過去に高度な文明で繁栄していたものの、何らかの要因により廃墟となったものと推測」
「繁栄してたんなら、なんで建物以外に何もないんだ?」
「……不明」
「せめて、あの巻物とか壁にあった文字みたいに、この遺跡について書かれたものがあればなぁ……ん?」
今いる建物の探索を終え、道を挟んで向かい側にある建物へ行こうかと外へ出たその時、視界の端で何かが光った。
「ご主人様、いかがなさいましたか?」
「ああ、いや……今なんか光ったような気がしてさ――あ、アレだ」
建物と建物の間に開いている隙間の奥で、何かが光を反射しているのに気が付き、近づいて良く見てみる――
「ダ、ダイヤモンドだ……」
しかも、以前婆さんに見せて貰ったような鉱石の状態ではなく、不純物が付帯していない、加工した後のモノだった。
「んん?」
そんなダイヤが、よく見るとゴロゴロ落ちている。
「ど、どうなってんだこれ……?」
「ソウタ様、それ……金剛石ではありませんか!」
「……非常に純度が高いですね。帝国の魔術障壁を強化するのに十分対応できると思われます」
「マジかよ……よし、全部回収していこう」
探索を一時止め、四人で地面とにらめっこする。
舗装された道と違って、建物間は未舗装の場所が少なからずあり――
「こ、こちらにも金剛石がございます!」
どうやらダイヤはそういった未舗装の箇所に集中して落ちているようだった。
みんなで一心不乱に拾い集め……周囲一帯での収集を終えた頃には、ざっと数えただけで百個以上のダイヤが集まっていた。
「報告、これだけあれば王宮だけではなく帝都を覆う障壁の構築が可能」
「おおっ! 火の海にならずに済むな!!」
「良かったですね! これだけでも大収穫です!」
「でもなんでこんなにダイヤが落ちてるんだ……?」
それは有機生命体だったもの――意思のカケラ――
「……んっ?」
「警告、魔術による念波」
「ご主人様っ!」
セルフィとファフミルが左右に分かれて早口で何かを詠唱し始めると、全員を包むように青い膜と赤い膜が張られていく。
「報告、精神操作を感知……無効化」
「ボクとセルフィから離れないでください!」
ファフミルが大声を出しているところを初めて見たことにも驚いたが、俺たち以外にも何者かがいたことにもっと驚く。
「いったいさっきのは何だったんだ……?」
選ばれし者よ――試練に打ち克て――意思を示せ――
「ご主――」
「報――」
「ソウ――」
――ここは?
――我は創造の力を授かりし者。
――アンタが何なのかじゃなくて、ここはどこなんだっていう質問なんだが?
――これより試練を与える。見事打ち克てれば力を、及ばなければ永遠の無を得るだろう。
――話聞かないヤツだな? オーケー、慣れてる。
――始めよ。
「……あれ、俺は何を?」
誰かの声が聞こえてきて、セルフィとファフミルが魔術で障壁を……って、みんなは?
キョロキョロと周りを見てみるが、いつの間にか俺一人になっていた。
いったい何が起きているのか……。
「セルフィー? ファフミルー?」
……返事は無い。
「メリシア――痛ッ!」
突然、胸の奥がズキっと痛む。
「……あれ、俺は何を?」
誰かの声が聞こえてきて……俺は何でこんなとこに一人でいるんだ?
キョロキョロと周りを見てみると、朽ち果てて今にも倒壊しそうな見知らぬ建造物が乱立する一画に、俺は居るらしかった。
こんなところにいないで、早く家に帰ってリアタイしてるプリティバニー見なきゃ。
それにしても、今日は高頭商事へのプレゼン資料作ってたら遅くなっちゃったなぁ……間に合うか?
「でもその前に単位足りなさそー……」
やべ、マクロ経済学Ⅱのレポート明日までだっけ? あの教授にお情けは通用しねぇからな……絶対に終わらせないと。
でも、なんでお腹空いてるのにご飯用意してくれないんだろう?
僕が久しぶりにテストで百点取ったから、お祝いにハンバーグ作ってくれるって言ったのに……。
「ねえお母さん――――まだー?」
えっ、ひどいよ! ぼくのハンバーグたべちゃうなんてさ!
ウェーン……エーン…………。
――選ばれし者よ、残念だ。永遠の無の中で、このまま安らかに逝くが良
――余を失望させてくれるな。貴様はこの程度の男だったのか?
――お、お前は……ここは精神の次元。他者の介在する余地などないはずが、なぜ……。
――しかたがない。この未熟な救主に手を貸してやってくれ、グリフェルよ。
――なるほど、神剣か……良いだろう。見事に試練に打ち克った褒美を渡そう……いずれまた会おう、選ばれし者よ。
どうやらここは遺跡全体の明かりを操作するための、配電盤のような場所の前らしい。
壁には巻物に書いてあったような文字と壁に埋め込まれたスイッチが羅列していて、たまたまその中でも一番大きなスイッチ――遺跡全体の証明をオンオフするブレーカーみたいなものか――を押したようだ。
跳躍して全体を見渡してみると、下にある空間ほどではないが、下手をするとオールタニアがすっぽり入るのではないかと思われるほどの広さがあった。
「おーい、誰かいるかー!?」
お約束だが、一応誰かいないか確認してみる。
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「みんなで来れるように穴広げるからちょっとどいててくれー!」
メリシアの「分かりましたー!」という返事を待ってから、穴を広げつつ下へと降りていく――と、メリシアもセルフィもファフミルも、脱いだ服を着てしまっていた。
稀に見る、というか人生初のチャンスを逃したことが、残念なような、ホッとしたような、なんとも不思議な気分になる。
でも多分これ……後で何度も思い出して、後悔するヤツだな……はぁ。
「……ここからさらに上に行くとめちゃくちゃ広いとこがあって、そこに廃墟になった街みたいなのがあったぞ。多分あれが遺跡だ」
「では早速参りましょう!」
ダメだ……続きも無さそうだ。
「うっうっ……」
「ご主人様、泣いておられるのですか……?」
「い、いかがなさいましたか!?」
「ソウタ、泣かない」
セルフィに頭をヨシヨシと撫でられる。
「……把握、続きは帰ってから」
「心を読まないでぇぇぇぇぇぇ!」
ガバッと三人を抱き上げて跳躍し、遺跡がある空間の配電盤の前で降ろすと、早速セルフィが壁の文字を解読してくれる。
「報告、ここは遺跡の明かりを調節する施設」
「やっぱりか……今はどうなってる?」
「回答、全点灯になっている」
「よっし、そしたら探索を始めようか」
俺を先頭にして四人が固まるように歩きはじめる。
まずは近場にある建物から一つ一つ調べていき、徐々に探索の範囲を広げていく。
……不思議なことに、モルタルのような建材で作られた建物はどれも内装や家具といったものが無く、生活感がない。
当然、人の死体も皆無のため、この遺跡が過去にどんな存在だったのか、何を目的に作られたものなのか、何があったのか、まったく分からない。
「人が住んでた形跡が無い街ってのは、なんだか不気味だな……」
「貧者の洞窟というくらいですから、資源や物資が枯渇して衰退していったのかもしれませんね」
「否定、この遺跡全体を照らしている照明には、完全に未知の技術が使われている。このため、過去に高度な文明で繁栄していたものの、何らかの要因により廃墟となったものと推測」
「繁栄してたんなら、なんで建物以外に何もないんだ?」
「……不明」
「せめて、あの巻物とか壁にあった文字みたいに、この遺跡について書かれたものがあればなぁ……ん?」
今いる建物の探索を終え、道を挟んで向かい側にある建物へ行こうかと外へ出たその時、視界の端で何かが光った。
「ご主人様、いかがなさいましたか?」
「ああ、いや……今なんか光ったような気がしてさ――あ、アレだ」
建物と建物の間に開いている隙間の奥で、何かが光を反射しているのに気が付き、近づいて良く見てみる――
「ダ、ダイヤモンドだ……」
しかも、以前婆さんに見せて貰ったような鉱石の状態ではなく、不純物が付帯していない、加工した後のモノだった。
「んん?」
そんなダイヤが、よく見るとゴロゴロ落ちている。
「ど、どうなってんだこれ……?」
「ソウタ様、それ……金剛石ではありませんか!」
「……非常に純度が高いですね。帝国の魔術障壁を強化するのに十分対応できると思われます」
「マジかよ……よし、全部回収していこう」
探索を一時止め、四人で地面とにらめっこする。
舗装された道と違って、建物間は未舗装の場所が少なからずあり――
「こ、こちらにも金剛石がございます!」
どうやらダイヤはそういった未舗装の箇所に集中して落ちているようだった。
みんなで一心不乱に拾い集め……周囲一帯での収集を終えた頃には、ざっと数えただけで百個以上のダイヤが集まっていた。
「報告、これだけあれば王宮だけではなく帝都を覆う障壁の構築が可能」
「おおっ! 火の海にならずに済むな!!」
「良かったですね! これだけでも大収穫です!」
「でもなんでこんなにダイヤが落ちてるんだ……?」
それは有機生命体だったもの――意思のカケラ――
「……んっ?」
「警告、魔術による念波」
「ご主人様っ!」
セルフィとファフミルが左右に分かれて早口で何かを詠唱し始めると、全員を包むように青い膜と赤い膜が張られていく。
「報告、精神操作を感知……無効化」
「ボクとセルフィから離れないでください!」
ファフミルが大声を出しているところを初めて見たことにも驚いたが、俺たち以外にも何者かがいたことにもっと驚く。
「いったいさっきのは何だったんだ……?」
選ばれし者よ――試練に打ち克て――意思を示せ――
「ご主――」
「報――」
「ソウ――」
――ここは?
――我は創造の力を授かりし者。
――アンタが何なのかじゃなくて、ここはどこなんだっていう質問なんだが?
――これより試練を与える。見事打ち克てれば力を、及ばなければ永遠の無を得るだろう。
――話聞かないヤツだな? オーケー、慣れてる。
――始めよ。
「……あれ、俺は何を?」
誰かの声が聞こえてきて、セルフィとファフミルが魔術で障壁を……って、みんなは?
キョロキョロと周りを見てみるが、いつの間にか俺一人になっていた。
いったい何が起きているのか……。
「セルフィー? ファフミルー?」
……返事は無い。
「メリシア――痛ッ!」
突然、胸の奥がズキっと痛む。
「……あれ、俺は何を?」
誰かの声が聞こえてきて……俺は何でこんなとこに一人でいるんだ?
キョロキョロと周りを見てみると、朽ち果てて今にも倒壊しそうな見知らぬ建造物が乱立する一画に、俺は居るらしかった。
こんなところにいないで、早く家に帰ってリアタイしてるプリティバニー見なきゃ。
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でも、なんでお腹空いてるのにご飯用意してくれないんだろう?
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「ねえお母さん――――まだー?」
えっ、ひどいよ! ぼくのハンバーグたべちゃうなんてさ!
ウェーン……エーン…………。
――選ばれし者よ、残念だ。永遠の無の中で、このまま安らかに逝くが良
――余を失望させてくれるな。貴様はこの程度の男だったのか?
――お、お前は……ここは精神の次元。他者の介在する余地などないはずが、なぜ……。
――しかたがない。この未熟な救主に手を貸してやってくれ、グリフェルよ。
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