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第三章:第四創世主の弱点
十一話:創造の恩恵主
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しかし、いまだになんの反応もないというのはどういうことなんだ……?
「どうやら今は、眠っている――いや、そのときが来るのを待っているような状態に見えるな」
「そのときが来るのを待っているって……いったいどんなときだ?」
「それは腕輪自身かそれを作った者にしか分からぬな」
「マジかよ……」
それじゃ意味ねぇんだって……。
「もしくは、グエン殿が何か知っておるやもな……準備も終わったようだし、帝都に戻り次第聞いてみるか」
「お――っと、そうだな」
おっさんと話し込んでしまっていたことに気が付き、メリシア達に視線を向ける。
既に、ドラゴンの肉や荷物を纏め終えた様子の三人が、椅子代わりの丸太に腰かけてこちらを見ていた。
「ごめ、待たせちゃったな。ファフミル、疲れてるだろうけど帝都まで頼むよ」
「お気遣いありがとうございます。ご主人様に比べればボクの疲労などさしたる問題もございません」
言い終えると同時に、自分の言葉を証明するかのように歌うような詠唱が始まり……瞬く間に転移円が完成した。
「お待たせいたしました、どうぞ」
「いつもありがとう」
「苦労をかけてすまぬな」
おっさんと転移円の上に乗る――と、気が付けば、王宮の大広間へと転移が完了していた。
一日だけだったとはいえ、ようやく住み慣れ始めた我が家に帰ってくるとやはりホッとする。
「ふぅ……やっと帰って来られたな……」
「オレは肉を厨房へ運んでくるから、お主は先に休んでおけ」
そういうと、俺の姿を見て慌てて駆けつけてきた使用人に目もくれず、巨大な肉の塊を担いでドシドシ歩いていってしまう。
貧者の洞窟内は穴を掘っているとき以外ずっと明るかったため忘れていたが、時間的には既に夜中になっていた。
メリシア達もさすがにグッタリしているため、グエンに詳しい話を聞くのは明日にして、風呂で汚れを落としてからおっさんの言う通り寝ることに決めた。
何も言わずとも荷物の整理を始めてくれている使用人に労いの言葉を一声掛けてから、大浴場へと向かう。
「ップハー! 生き返るー!」
体と腕輪を洗い終えて湯船に浸かると、思いのほか疲労がたまっていたようで、腕や足がジンジンし始めた。
「やっぱりお風呂はいいねぇ……癒されるわ……」
ちょっとしたスーパー銭湯くらいの広さがある大浴場を、俺一人で占拠しているというのは少し落ち着かないが……。
ヒタ――ヒタ――
湯船の中であぐらをかきつつ贅沢な時間を堪能していると、突然、背後に人の気配を感じた。
おっさんか?
「随分早かったじゃ――」
「邪魔をするぞ、慈愛の救世主よ」
「っ!?」
振り返ると、見知らぬ爺さんのシワシワミッドナイトが目の前でプラプラ遊んでいた。
「だっ、誰だっ!?」
立ち上がり、距離を取る。
慌てる俺を他所に、爺さんがゆっくりとした動作で湯船に浸かり、こちらに視線を向けた。
「我はシング・コール。創造の恩恵主と言えば分かるか?」
「なっ……」
「お前と少し話がしたいと思ってな。風呂ならば少しは落ち着いて話せるだろう」
この王宮には、ダイヤで制御された魔術障壁の他に、セルフィとファフミル謹製の魔術障壁が幾重にも張られていて、転移など不可能なはず。
なのに目の前にいるこの爺さんは、それをものともせずに俺の位置を正確に探り当てて転移してきたというのか……!?
「まだ、選ばれし者としてこの世界に来て間もないお前には、この世界の構造どころか、自分が如何に特異な存在なのかすら分かっておらぬだろう」
「……そんなこと、気にもならない。知ったところで何の意味もない」
相手は、やはりセルフィやファフミルですら太刀打ちできない存在のようだ。
こんな虚勢を張ることくらいしかできない自分が情けなくなるが、もはや俺が何をしたところで意味が無いのなら、せめて虚勢くらい張らせて欲しい。
「我の精神操作に微塵も抵抗できなかった者がそれを言うか」
「くっ」
婆さんもそうだったが、この世界の年寄りは嫌味を言わないと死ぬルールでもあるのか?
「聞け。そして自覚せよ。異世界より召喚されし転生者、宵闇の使徒として創世の救主になった者――それがお前だ」
「どうやら今は、眠っている――いや、そのときが来るのを待っているような状態に見えるな」
「そのときが来るのを待っているって……いったいどんなときだ?」
「それは腕輪自身かそれを作った者にしか分からぬな」
「マジかよ……」
それじゃ意味ねぇんだって……。
「もしくは、グエン殿が何か知っておるやもな……準備も終わったようだし、帝都に戻り次第聞いてみるか」
「お――っと、そうだな」
おっさんと話し込んでしまっていたことに気が付き、メリシア達に視線を向ける。
既に、ドラゴンの肉や荷物を纏め終えた様子の三人が、椅子代わりの丸太に腰かけてこちらを見ていた。
「ごめ、待たせちゃったな。ファフミル、疲れてるだろうけど帝都まで頼むよ」
「お気遣いありがとうございます。ご主人様に比べればボクの疲労などさしたる問題もございません」
言い終えると同時に、自分の言葉を証明するかのように歌うような詠唱が始まり……瞬く間に転移円が完成した。
「お待たせいたしました、どうぞ」
「いつもありがとう」
「苦労をかけてすまぬな」
おっさんと転移円の上に乗る――と、気が付けば、王宮の大広間へと転移が完了していた。
一日だけだったとはいえ、ようやく住み慣れ始めた我が家に帰ってくるとやはりホッとする。
「ふぅ……やっと帰って来られたな……」
「オレは肉を厨房へ運んでくるから、お主は先に休んでおけ」
そういうと、俺の姿を見て慌てて駆けつけてきた使用人に目もくれず、巨大な肉の塊を担いでドシドシ歩いていってしまう。
貧者の洞窟内は穴を掘っているとき以外ずっと明るかったため忘れていたが、時間的には既に夜中になっていた。
メリシア達もさすがにグッタリしているため、グエンに詳しい話を聞くのは明日にして、風呂で汚れを落としてからおっさんの言う通り寝ることに決めた。
何も言わずとも荷物の整理を始めてくれている使用人に労いの言葉を一声掛けてから、大浴場へと向かう。
「ップハー! 生き返るー!」
体と腕輪を洗い終えて湯船に浸かると、思いのほか疲労がたまっていたようで、腕や足がジンジンし始めた。
「やっぱりお風呂はいいねぇ……癒されるわ……」
ちょっとしたスーパー銭湯くらいの広さがある大浴場を、俺一人で占拠しているというのは少し落ち着かないが……。
ヒタ――ヒタ――
湯船の中であぐらをかきつつ贅沢な時間を堪能していると、突然、背後に人の気配を感じた。
おっさんか?
「随分早かったじゃ――」
「邪魔をするぞ、慈愛の救世主よ」
「っ!?」
振り返ると、見知らぬ爺さんのシワシワミッドナイトが目の前でプラプラ遊んでいた。
「だっ、誰だっ!?」
立ち上がり、距離を取る。
慌てる俺を他所に、爺さんがゆっくりとした動作で湯船に浸かり、こちらに視線を向けた。
「我はシング・コール。創造の恩恵主と言えば分かるか?」
「なっ……」
「お前と少し話がしたいと思ってな。風呂ならば少しは落ち着いて話せるだろう」
この王宮には、ダイヤで制御された魔術障壁の他に、セルフィとファフミル謹製の魔術障壁が幾重にも張られていて、転移など不可能なはず。
なのに目の前にいるこの爺さんは、それをものともせずに俺の位置を正確に探り当てて転移してきたというのか……!?
「まだ、選ばれし者としてこの世界に来て間もないお前には、この世界の構造どころか、自分が如何に特異な存在なのかすら分かっておらぬだろう」
「……そんなこと、気にもならない。知ったところで何の意味もない」
相手は、やはりセルフィやファフミルですら太刀打ちできない存在のようだ。
こんな虚勢を張ることくらいしかできない自分が情けなくなるが、もはや俺が何をしたところで意味が無いのなら、せめて虚勢くらい張らせて欲しい。
「我の精神操作に微塵も抵抗できなかった者がそれを言うか」
「くっ」
婆さんもそうだったが、この世界の年寄りは嫌味を言わないと死ぬルールでもあるのか?
「聞け。そして自覚せよ。異世界より召喚されし転生者、宵闇の使徒として創世の救主になった者――それがお前だ」
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