第四創世主は殺人衝動を性欲で捻じ伏せるらしい~最強の力を得た凡人、仕方なくイヤイヤ成り上がっていったら世界を救うことになりました~

文場凡

文字の大きさ
57 / 120
第三章:第四創世主の弱点

十二話:唇と唇

しおりを挟む
 「宵闇の使徒として創世の救主になった……?」
 「そうだ。転生者としてこの世界に召されし運命にあったお前は、死のその瞬間に愚かな国の愚かな魔術師たちによって、この世界へと召喚されたのだ。浄化も適わず穢れたままの魂は宵闇の使徒として召喚され、さらに元の器を無理矢理に再構成された結果、創世の救主として転生するに至った」

 どうしてこの爺さんがそんなことを知ってるのかも気になるが、それよりも――

 「……で? そんな俺に貧者の洞窟で精神操作を仕掛けてきたのはなぜなんだ?」
 「我が作りし神器――力に相応しい者かどうか試したまでのこと」
 「これを爺さんが作ったって……プッ」

 バレバレ過ぎる嘘につい吹き出してしまう。
 グエンの話では、千年以上昔から語られてきた神話ということだったので、もしそれが本当ならこの爺さんは千年どころかそれ以上生きているということになる。
 ……長命のエルフでさえ寿命は六百年前後なんだぞ?
 ヒトが、その肉体はおろか正常な精神を保ったまま千年以上の時を生き永らえるなど、さすがに異世界でも有り得ないだろう。

 「フム。お前の未熟な精神構造では信じられぬのも無理からぬことだ」

 セルフィと同じくサラっと思考を読んできやがる!
 っていうか、すげぇ上からモノを言われている気がするが……実際、この爺さんのほうが一枚も二枚も上手なので言い返すことができず、喉の奥で「グゥッ」と吐息を漏らす程度のささやかな抵抗が精いっぱいだった。

 「じゃ、じゃあ……千年も生きてるっていう証拠を見せろよ」
 「証拠か。では、ラファムレアについて少しだけ教えてやろうか」

 ラファムレア――って、この腕輪か!

 「し、知ってるのか!?」
 「さっき我が作ったと言ったはずだが、なるほど。未熟なのは精神のみならず……であったか」
 「ウググ」

 ふーやれやれとばかりに、腕を組んで頭を縦に振る。
 キーッ! 爺さんが千年も生きてるなんて信じてないから言ったんだもんねー!
 やーいやーい! 嘘つきジジイー!

 「はっ……!」

 いかんいかん、怒りのあまり友達同士でケンカする小学生みたいになってた。
 今は少しでも情報を引き出さねば……。

 「我がこの世界に召喚されしは、今より千と……百だったか、二百だったか。年齢などもはや形骸化しておるからはっきりとは覚えておらぬが――」

 のぼせたのか、言いながら立ち上がったかと思えば、湯船のふちへと腰掛ける。
 俺は普段から長風呂なのでまだまだ余裕である。
 ハッハッハ、一つ勝ったぜ!

 「元の世界では、文明も文化もここより数千年分は発展を遂げておったのだが、生を授かって数十年の後に、我は愚かにも不老不死の妙薬を完成させてしまってな。これで醜い争いなど無くなるとその時は喜んでおったのだが……皮肉なことに、妙薬を巡って世界中で戦争が勃発したのだ」
 「不老不死の妙薬……」
 「念のため言っておくが、この世界を構成している原子配列では作成できぬので期待には応えられぬぞ」
 「いや、死ねないなんてゾッとすると思ってな」
 「ほっ……ホッホッホッホ。誠に、お前の言う通りだ」

 一瞬、また馬鹿にしやがって……と思ったが、爺さんの何とも愉快そうな笑い声を聞くに、どうやら他意は無さそうだ。
 っつーか、そんなに長いこと生きていても普通に笑えるんだな。
 些細なことではあるが、こういうところに爺さんの凄さがにじみ出ているような気がする。

 「さて、話を戻そう。その後は我の作った妙薬ではなく我自信を巡る争いに発展していき、とうとう滅びの足音が聞こえてきた――そんな頃だ、この世界に召喚されたのは」

 爺さんは、この世界ではイチからやり直そうと決意し、同じ過ちは繰り返さないよう細心の注意を払っていたのに、神器を作ったことをキッカケにまた同じように街を滅ぼしてしまい、後悔と失意の中、俺があの遺跡に立ち入るまで観測者として世界の行く末を見守るに留めてきたのだと、とても嘘をついているとは思えない真剣な表情で語ってくれた。

 「……あの街の数少ない生き残りは、その後、別天地にて新しい街を作り始めるのだが、それが現在のグステンだ。代々、神器について語られてきていたのも、後世に同じ過ちを犯さぬようにとの戒めを込めていたのだろうな。結局は、お前のような未熟者の手に渡ることになってしまったが……」
 「未熟で悪かったな。でも、この腕輪がどれだけ凄かろうと、俺は俺の守りたい人の為以外に使ったりはしないぞ」

 爺さんはピクリともせず「そうか」とだけ言うと、煙のようにフッと消えた。

 「ちょっ!? 結局この腕輪に秘められた力が何なのか聞いてねぇんだけど!?」

 時が来れば分かる――お前のお陰で久しぶりに笑うという感情を思い出させて貰ったぞ――選ばれし者よ――

 「……年寄りってのはこれだから……はぁ」

 ま、時が来れば分かるんならいっか……そろそろ出よ。
 さすがにのぼせそうなので、俺も風呂から出る――と、女性用の大浴場へ繋がる扉から、ちょうど風呂から上がったらしいメリシア達の声が漏れ聞こえてきた。

 「今夜……ソウタ様の寝室で同衾をするお役目、私がしっかり務めさせていただきますので、お二人はお部屋でご就寝ください」
 「拒否、ソウタはすでに私と約束をしている」
 「約束なんていつの間にしたんですか? 私たちはずっとソウタ様と共に居ましたが、そのような話は一度もしていなかったように記憶しています」
 「否定、ソウタの思考を演算解読、最適解として続きは帰ってからと告げた」
 「なっ! あ、あんなのを約束なんて言いません!」

 いったい何の話をしてるんだ……?
 どうきんって何のことだ? 将棋?

 「ご主人様、お湯加減はいかがでございましたか?」

 一人でモヤモヤしていると、一足先に出てきたファフミルが声を掛けてくれる。
 それにしても……なんで髪が濡れた女の子ってこんなにエロイんだろ。

 「フ、ファフミル。うん……い、いつもどおり最高だったよ」
 「それは良うございました。では、参りましょう」

 ん、参るって?

 「ど、どこに?」
 「ご主人様の寝室でございます」
 「……え、なんで?」
 「ボクのこと……お嫌いですか?」

 うっ……そんな潤んだ瞳で見つめないでくれ……。

 「嫌いだなんて、そんなわけないけど……」
 「嬉しいです……ボクのこと、好きだって言って下さるんですね……っ」
 「す――!?」
 「ファフミルさん」
 「ファフミル」

 突然ファフミルの後ろからメリシアとセルフィの声がしたため、驚いてそちらに視線を動かしてしまう。
 それが――油断だった。

 「ッ!?」
 「ん…………」

 一瞬の隙をついて、ファフミルが――俺にキスをしてきた。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

【完結】487222760年間女神様に仕えてきた俺は、そろそろ普通の異世界転生をしてもいいと思う

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
 異世界転生の女神様に四億年近くも仕えてきた、名も無きオリ主。  億千の異世界転生を繰り返してきた彼は、女神様に"休暇"と称して『普通の異世界転生がしたい』とお願いする。  彼の願いを聞き入れた女神様は、彼を無難な異世界へと送り出す。  四億年の経験知識と共に異世界へ降り立ったオリ主――『アヤト』は、自由気ままな転生者生活を満喫しようとするのだが、そんなぶっ壊れチートを持ったなろう系オリ主が平穏無事な"普通の異世界転生"など出来るはずもなく……?  道行く美少女ヒロイン達をスパルタ特訓で徹底的に鍛え上げ、邪魔する奴はただのパンチで滅殺抹殺一撃必殺、それも全ては"普通の異世界転生"をするために!  気が付けばヒロインが増え、気が付けば厄介事に巻き込まれる、テメーの頭はハッピーセットな、なろう系最強チーレム無双オリ主の明日はどっちだ!?    ※小説家になろう、エブリスタ、ノベルアップ+にも掲載しております。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...