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第四章:武林迷宮
二十七話:武林迷宮 序列第三位――雷冥――
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「二人とも俺の後ろに隠れてろ」
「はいっ」
「あっ……殺したらいけないよ……僕と雷冥がいないと元戒と盟約を結べなくなっちゃうからね……」
「マジかよ」
そんなこと言われても……気絶でもさせろっていうのか?
どの程度の強さで殴ればいいのかも分からんのに?
こうして考えている間にもライメイとの差はどんどん縮まっていく――ええい、悩んでる暇はない!
「出たとこ勝負!」
スローモーション状態にして体組成強度の特性を最大まで上げる。
ライメイが破壊した迷宮の破片はゆっくりと飛び散っていくのに、ライメイ自身の動くスピードはそれほど変わらないため、まずは動きを止めるため体当たりするようにその巨体へと突っ込む。
音よりも早く動いているため鳴き声は聞こえないが、そのまま両手で抱きかかえて少しずつ締め上げていくと、ライメイが上を向きながらいななくように大きく口を開けた。
これは……痛がっているのか?
様子を見ながら徐々に力を強めていくと、鉄どころかダイヤモンド――下手をするとそれ以上の硬さと思われるライメイの肉体に、少しずつ腕が食い込んでいく。
完全に抑えつけ――足や頭はバタバタブルブルと動いているものの――移動できなくさせたところでスローモーションを解除すると、ライメイの肉がメリメリと悲鳴をあげる音が聞こえてきた。
「グゥモオオオオッッ!!」
「ど、どうどう!」
なだめかたが良く分からないが、テレビなんかで馬や牛を落ち着かせるときに牧場主がやっていたような、どうどう言いながら胴体をポンポン叩くというそれっぽい動作を懸命に試していると、意外なことに徐々に落ち着いてきた。
「グブルルッフシューッフーッ!」
「どうどう! どおおおどおお……」
「フーッ、フッ、グモー……モー、モー」
「よぉし、いい子だ。おーい、もう良さそうだぞー」
パチッ、パリパリッと未だに少し電撃は発しているものの、先ほどまでと比較するとかなり大人しくなったため、ライメイから手を離して少し様子を見てから二人を呼び寄せる。
「すごい……いったい何をしたの……?」
「抱きしめて、なだめた……ってことになるのか? まぁ、なんか良く分からんが落ち着いたみたいだ」
「……雷冥がここまで大人しくしているのは初めて見るよ……いつもは、僕が近づいただけで逃げちゃうか追い払われちゃうからね……」
「ソウタ様は慈愛の救世主ですからね、当然の結果です。この程度で驚いていては逆に失礼というものですよ」
今度はメリシアがエッヘンと胸を張る。
瞬間、ブルルッとおっぱいが波打ったのを俺は見逃さなかった。
ありがとう、おっぱい。ありがとう、重力。
両方とも、いつもながらいい仕事してるね。
「……で? 契約ってのはどうすればできるんだ?」
「簡単だよ……盟約を結ぶのはキミでいいんだろ……」
「いや、俺じゃなくてメリシアが契約する」
「あ、キミなのか……それなら簡単じゃないかもね……」
「どういうことですか?」
「守護武神は力を示した相手としか盟約を結ばないからね……キミが自分の力で雷冥を抑えないといけないよ……」
「あー、そうなのか。じゃあメリシア、悪いんだけどサクっと終わらせてくれるか?」
「はい。よろしくお願いします」
「僕の話を聞いていたかな……? キミじゃ近づいただけで死んじゃうと思うよ……」
「まあ見てろって」
メリシアの肩に手を置き、身体強度、時感覚、生体反射の特性を許容範囲ギリギリまで引き出す。
あれ以来、もしみんなに危険が及んだ場合でも個々で対処できるように、特性を調節した際の動きに慣れる特訓を毎日続けていたのだ。
「それじゃメリシア、頑張って」
「はいっ!」
セルフィやファフミルの身体強度は、上げたところでそこまで変わることはなかったのだが――
「はあぁあぁぁぁっ!」
シュピッ――キキッキキキキッ――
「グモッ!? グモオオオオッ!」
、おっさんやメリシアは効果絶大で、力こそパワーのおっさんに対して、速さこそスピードのメリシアという感じの、恐ろしいほど劇的な能力の向上が見られた。
ピシャッ――バリバリバリッ――ゴコォンッ――シュピンッ!
そんなメリシアの、俺でさえ時感覚の特性を五百倍程度まで調整しなければ捉えられないほどの電光石火の動きを、チゴウが口をアングリと開けながら眺めているのが、黒く汚れて塊みたいになった髪の毛のあいだから覗き見える。
「ソウタ様、お待たせしました――」
ライメイのいかずちを避けながら巧みに剣撃を放っていたメリシアが、剣を鞘へと納めながらこちらを振り向く。
「無力化完了です」
キンッ――
剣が完全に鞘へと納まる音を合図にしたかのように、ライメイの巨体がズズゥンと横倒しになる。
見ると、四本ある足の腱が全て切られていた。
「グモォォォ……」
勝ち目はないと悟った様子のライメイが情けない声で鳴く――と、その体がフワッと浮いたあと光の粒子となってメリシアを包み、消えた。
「はいっ」
「あっ……殺したらいけないよ……僕と雷冥がいないと元戒と盟約を結べなくなっちゃうからね……」
「マジかよ」
そんなこと言われても……気絶でもさせろっていうのか?
どの程度の強さで殴ればいいのかも分からんのに?
こうして考えている間にもライメイとの差はどんどん縮まっていく――ええい、悩んでる暇はない!
「出たとこ勝負!」
スローモーション状態にして体組成強度の特性を最大まで上げる。
ライメイが破壊した迷宮の破片はゆっくりと飛び散っていくのに、ライメイ自身の動くスピードはそれほど変わらないため、まずは動きを止めるため体当たりするようにその巨体へと突っ込む。
音よりも早く動いているため鳴き声は聞こえないが、そのまま両手で抱きかかえて少しずつ締め上げていくと、ライメイが上を向きながらいななくように大きく口を開けた。
これは……痛がっているのか?
様子を見ながら徐々に力を強めていくと、鉄どころかダイヤモンド――下手をするとそれ以上の硬さと思われるライメイの肉体に、少しずつ腕が食い込んでいく。
完全に抑えつけ――足や頭はバタバタブルブルと動いているものの――移動できなくさせたところでスローモーションを解除すると、ライメイの肉がメリメリと悲鳴をあげる音が聞こえてきた。
「グゥモオオオオッッ!!」
「ど、どうどう!」
なだめかたが良く分からないが、テレビなんかで馬や牛を落ち着かせるときに牧場主がやっていたような、どうどう言いながら胴体をポンポン叩くというそれっぽい動作を懸命に試していると、意外なことに徐々に落ち着いてきた。
「グブルルッフシューッフーッ!」
「どうどう! どおおおどおお……」
「フーッ、フッ、グモー……モー、モー」
「よぉし、いい子だ。おーい、もう良さそうだぞー」
パチッ、パリパリッと未だに少し電撃は発しているものの、先ほどまでと比較するとかなり大人しくなったため、ライメイから手を離して少し様子を見てから二人を呼び寄せる。
「すごい……いったい何をしたの……?」
「抱きしめて、なだめた……ってことになるのか? まぁ、なんか良く分からんが落ち着いたみたいだ」
「……雷冥がここまで大人しくしているのは初めて見るよ……いつもは、僕が近づいただけで逃げちゃうか追い払われちゃうからね……」
「ソウタ様は慈愛の救世主ですからね、当然の結果です。この程度で驚いていては逆に失礼というものですよ」
今度はメリシアがエッヘンと胸を張る。
瞬間、ブルルッとおっぱいが波打ったのを俺は見逃さなかった。
ありがとう、おっぱい。ありがとう、重力。
両方とも、いつもながらいい仕事してるね。
「……で? 契約ってのはどうすればできるんだ?」
「簡単だよ……盟約を結ぶのはキミでいいんだろ……」
「いや、俺じゃなくてメリシアが契約する」
「あ、キミなのか……それなら簡単じゃないかもね……」
「どういうことですか?」
「守護武神は力を示した相手としか盟約を結ばないからね……キミが自分の力で雷冥を抑えないといけないよ……」
「あー、そうなのか。じゃあメリシア、悪いんだけどサクっと終わらせてくれるか?」
「はい。よろしくお願いします」
「僕の話を聞いていたかな……? キミじゃ近づいただけで死んじゃうと思うよ……」
「まあ見てろって」
メリシアの肩に手を置き、身体強度、時感覚、生体反射の特性を許容範囲ギリギリまで引き出す。
あれ以来、もしみんなに危険が及んだ場合でも個々で対処できるように、特性を調節した際の動きに慣れる特訓を毎日続けていたのだ。
「それじゃメリシア、頑張って」
「はいっ!」
セルフィやファフミルの身体強度は、上げたところでそこまで変わることはなかったのだが――
「はあぁあぁぁぁっ!」
シュピッ――キキッキキキキッ――
「グモッ!? グモオオオオッ!」
、おっさんやメリシアは効果絶大で、力こそパワーのおっさんに対して、速さこそスピードのメリシアという感じの、恐ろしいほど劇的な能力の向上が見られた。
ピシャッ――バリバリバリッ――ゴコォンッ――シュピンッ!
そんなメリシアの、俺でさえ時感覚の特性を五百倍程度まで調整しなければ捉えられないほどの電光石火の動きを、チゴウが口をアングリと開けながら眺めているのが、黒く汚れて塊みたいになった髪の毛のあいだから覗き見える。
「ソウタ様、お待たせしました――」
ライメイのいかずちを避けながら巧みに剣撃を放っていたメリシアが、剣を鞘へと納めながらこちらを振り向く。
「無力化完了です」
キンッ――
剣が完全に鞘へと納まる音を合図にしたかのように、ライメイの巨体がズズゥンと横倒しになる。
見ると、四本ある足の腱が全て切られていた。
「グモォォォ……」
勝ち目はないと悟った様子のライメイが情けない声で鳴く――と、その体がフワッと浮いたあと光の粒子となってメリシアを包み、消えた。
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