第四創世主は殺人衝動を性欲で捻じ伏せるらしい~最強の力を得た凡人、仕方なくイヤイヤ成り上がっていったら世界を救うことになりました~

文場凡

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第四章:武林迷宮

二十八話:武林迷宮 三十一階層~二十階層

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 「盟約が結ばれたね……これで雷冥の力はキミのものだ……」
 「おおっ、やったなメリシア! 念願の一体目だ!」
 「はい! やりましたソウタ様っ!」

 二人で手を合わせながら喜び合っていると、チゴウが俺の服の裾を摘まんでチョンチョンと引っ張った。

 「ん、なんだ?」
 「あの……ぜひボクとも盟約を結んで欲しいんだけど……」
 「それは願ってもない話だけど……一緒にどこか行って欲しいとか言ってなかったか? っつーか、それ以前に契約するには力を示さないといけないんだろ?」
 「僕を困らせていた元凶なら、だったいま目の前で盟約を結んで……もうこの武林迷宮からはいなくなったよ……それに、力だって十分すぎるほど示して貰ったよ……僕よりも強い雷冥を圧倒したのは見てたからね……」
 「あぁ、そういう感じでいいんだ」

 てっきり、直接対決をしないといけないのかと思っていたがそうでもないらしい。

 「なら、お前もメリシアと契約してくれるか」
 「もちろんだよ……いい加減この迷宮にいるのに飽き飽きしてたんだ。ようやく、数百年ぶりに外を楽しめるよ……キミが死ぬまで離れないから、よろしくね……僕の盟主さん……」

 一聴してゾッとするようなことを言っているが、こいつらには寿命など無さそうなので、きっと言葉通りの意味なのだろう。
 そこでフッとエンゴクに対して感じた違和感を思い出す。

 「ちょっと待て、お前はもしメリシアが死んだら離れるのか? まさか……
 「盟主が死ねばまたここに戻るに決まっているじゃないか……僕らは魔力を糧に存在しているんだから……」

 四十階層で石板を見ている時、突然エンゴクが背後に現れた理由がようやく分かった。

 「メ、メリシア……」
 「……はい、恐らく三兄弟に何かありましたね」

 俺が情けない声で名前を呼ぶと、メリシアはそれだけで状況を察してくれたようだ。

 「でも、今は先に進むべきだと思います」
 「そう……だよな……」

 今から大急ぎで帝都に帰ったところで、エンゴクが武林迷宮に戻ったという結果を覆すことはできない。
 ラファムレアはあの一度きりで消えてしまって、爺さんからも音沙汰はない。
 何より、あんなものが二つも三つも存在するはずがないのだから、アテにはできない。
 となると……もし最悪のシナリオだった場合でも、もはや俺たちにはどうすることもできないのだ……であれば、今は三兄弟の無事を祈って目的を果たすことを先決とすべきなのは――

 「いや、理解はしてるんだが……それでも……」
 「ソウタ様……」

 今までの道のりのことを考えると、ここから奥はさらに険しく複雑になっていくのだろう。
 これまでのように力技で真っすぐ進んで行けたとしても、メリシアの負担を考えるとスローモーション状態のまま音速で駆け抜けるなんて真似はできない。
 グリフェルがあれば多少は楽になったかもしれないが、あの裏切り者はバツとして王宮の隠し宝物庫に封印中だ。
 クソッ……どうしようもないのか……っ!

 「なんだかよく分からないけど……急ぎの用事でもあるのかな……?」
 「……ああ、もしかすると仲間が大変な目にあってるかもしれなくてな……すぐにでもここを踏破して帰らなきゃいけなくなった」
 「じゃあそうしよう……」
 「そうしようって、そんなことできるわけが無いからこうして悩んでるんだろ」
 「何を言うんだ……僕の力があればそんなの簡単さ……さぁ、盟約を結ぼう……」

 ライメイと同じように光の粒子となったチゴウがメリシアの体を包み、やがて消えていく。

 「……で、ここからどうすればいいんだ?」

 何も起きる様子が無いため、催促するような口調で問いかける。

 「わ、分かりません……どうすればいいのでしょうか……」

 俺の言葉に、ただ困惑した表情を浮かべて慌てるだけのメリシアを眺めながら、そういえば盟約を結んだ守護武神の力をどうやって使うのかをチゴウに確認し忘れていたことに気が付く。
 基本的なことであるがゆえに忘れやすいこういったことは、以前いた世界で営業として働いていた時に散々やらかして身に染みていたはずなのに……たった半年弱でもう忘れてしまっているなんて、自分のアホさ加減が信じられない。
 そもそも、三兄弟はエンゴクの力を使うのに三人がかりだったのに、魔術に特段秀でているわけでもないメリシアが一人でなんて、できるものなのか?
 何かヒントになりそうなことはないか――と、考えを必死に巡らせていると、突然周りの景色が一変した。

 「っ!?」

 いったい何が起きたんだ!?
 キョロキョロと全身を使って辺りを見回してみると、四十階層にあった石板と同じようなモノが置いてあることに気が付いた。

 「メリシア、あれ!」
 「あ、あれは……石板!?」

 メリシアを抱え上げて石板の目の前へと跳躍し、書かれている文章に目を通す――

 雷冥と盟約を結びし道の者。
 激なる道の深淵に究みを求めよ。
 力を探す者は愚者ならず。
 力を欲する者は覚者ならず。
 力を示す者の真理こそ我へ通ずる。
 我は究覚なり。
 深き道の果てに究めし力を求めん。

 「やっぱり前半だけ違って後半は同じだ……」
 「たしかチゴウさんは三十階層の、雷冥さんは二十階層の守護武神でしたよね――」
 「ってことは、ここ二十階層か!?」
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