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第四章:武林迷宮
二十九話:武林迷宮 二十階層~十九階層
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「遅くなってごめん……やっと盟主さんの魔力と同調できたよ……」
声がしたほうに目をやると、メリシアの背後からチゴウが出てきた。
「いったい何をしたんだ?」
「なにって……転移させただけだよ……?」
「転移? いや、転移円なんて出てなかったぞ」
「ああ……説明は難しいんだけど……僕はこの迷宮内なら別に転移円なんて出さなくても、どこへだって何度だって……魔力を使わずに転移できるよ……」
「マジか。それがお前の能力、ってことなのか?」
これは……笑っているのか?
チゴウがプルプルと震えるたび、黒ずんだ体に浮かぶ光沢がチラチラして視界にうるさい。
「ウフフフ……僕がただ迷宮内を自由に移動できるってだけで序列三位に位置していると……思うのかい?」
「いや……そうじゃないけども……」
「まぁこんなことは……僕の能力のほんの一端に過ぎないよ……そのうち、ちゃんと見せてあげるから楽しみにしててね……」
そういうと、チゴウの姿が薄くなって消えていく。
「ちょっと待った――まだ聞きたいことがある!」
「なんだい?」
慌てて引き止めると、消えていくスピードが緩やかになった。
が、完全に止まったわけではないため急いで質問する。
「お前やライメイはどうやって呼び出せばいいんだ? あと、なんで二十階層に転移させた? できればゲンカイってやつのところまで転移して欲しいんだが、できるか?」
「ズルは良くないよ……ここは本来、世界の理を試すために作られた迷宮なんだ……僕が君たちをここへ転移させたのは、雷冥と盟約を結んだ盟主さんはそれだけの力を示したと判断したからさ……ここから先は自力で行くべきだね……」
「でもお前は俺に借りがあるだろ」
「借り……? 何のことさ……」
「一緒に連れてってくれって言ってなかったか? ライメイに襲われて困ってたのを、俺が助けただろ」
再びチゴウの体が小刻みに揺れる。
「僕はライメイから助けて欲しいとは頼んでないよ……ただ一緒に連れてって欲しいとお願いしただけさ……連れてってくれたわけではないから、借りも無いよ……それじゃ、またね……」
「ちょ、おいっ! 待てよっ!」
チゴウの体が完全に消える。
結局どうやって呼び出せばいいのかにも答えず、こちらの願いを叶える素振りもみせなかったその非協力的な態度に、沸々と怒りが湧いてくる。
あのヤロウ今度出てきたら泣かす。
「しかたがありませんね……先を急ぎましょう……」
メリシアはこういうとき、気持ちを切り替えるのが驚くほど早い。
すでに十九階層に向けて歩き出したその背中を、俺も見習わなければいけないな、などと考えながら追いかける。
収納箱はもはや回収不可能なため、急いで踏破しなければいけなくなったわけだが、ここまで実質丸二日もかかっていないことを考えるともはや食料は必要なさそうだし、水筒に三分の二程度の水が残っているため、急げば何とかなりそうだ。
問題は――
「イオ、タオ、ラオ……みんな、無事でいろよ」
そのまま無言で通路の奥にある階段を下りていき、十九階層へ繋がる扉を開けると、そこにはこれまでとは比較にならない闇が広がっていた。
良く目を凝らしてみると、遠くに点々と明かりのようなものが見えるため、相当に広そうだ。
これはダラダラしてられないと中に入ると――部屋の中に足を一歩踏みいれた瞬間、突然体が宙に浮いて言うことをきかなくなってしまった。
「なんだこれっ!?」
「きゃあああっ!」
扉に手をかけていたのが功を奏して、何とか階段側へと戻ることができた。
ま、まさかとは思うが――
「これって……」
確かめるため、足元に落ちていた小石を拾ってから、すぐ落ちるように力を調整して十九階層へ投げ込んでみる。
予想は見事に的中し、小石は落ちていくこともスピードを落とすこともなく、そのまま真っすぐに闇の中へと消えていく。
「やっぱり、無重力だ……」
声がしたほうに目をやると、メリシアの背後からチゴウが出てきた。
「いったい何をしたんだ?」
「なにって……転移させただけだよ……?」
「転移? いや、転移円なんて出てなかったぞ」
「ああ……説明は難しいんだけど……僕はこの迷宮内なら別に転移円なんて出さなくても、どこへだって何度だって……魔力を使わずに転移できるよ……」
「マジか。それがお前の能力、ってことなのか?」
これは……笑っているのか?
チゴウがプルプルと震えるたび、黒ずんだ体に浮かぶ光沢がチラチラして視界にうるさい。
「ウフフフ……僕がただ迷宮内を自由に移動できるってだけで序列三位に位置していると……思うのかい?」
「いや……そうじゃないけども……」
「まぁこんなことは……僕の能力のほんの一端に過ぎないよ……そのうち、ちゃんと見せてあげるから楽しみにしててね……」
そういうと、チゴウの姿が薄くなって消えていく。
「ちょっと待った――まだ聞きたいことがある!」
「なんだい?」
慌てて引き止めると、消えていくスピードが緩やかになった。
が、完全に止まったわけではないため急いで質問する。
「お前やライメイはどうやって呼び出せばいいんだ? あと、なんで二十階層に転移させた? できればゲンカイってやつのところまで転移して欲しいんだが、できるか?」
「ズルは良くないよ……ここは本来、世界の理を試すために作られた迷宮なんだ……僕が君たちをここへ転移させたのは、雷冥と盟約を結んだ盟主さんはそれだけの力を示したと判断したからさ……ここから先は自力で行くべきだね……」
「でもお前は俺に借りがあるだろ」
「借り……? 何のことさ……」
「一緒に連れてってくれって言ってなかったか? ライメイに襲われて困ってたのを、俺が助けただろ」
再びチゴウの体が小刻みに揺れる。
「僕はライメイから助けて欲しいとは頼んでないよ……ただ一緒に連れてって欲しいとお願いしただけさ……連れてってくれたわけではないから、借りも無いよ……それじゃ、またね……」
「ちょ、おいっ! 待てよっ!」
チゴウの体が完全に消える。
結局どうやって呼び出せばいいのかにも答えず、こちらの願いを叶える素振りもみせなかったその非協力的な態度に、沸々と怒りが湧いてくる。
あのヤロウ今度出てきたら泣かす。
「しかたがありませんね……先を急ぎましょう……」
メリシアはこういうとき、気持ちを切り替えるのが驚くほど早い。
すでに十九階層に向けて歩き出したその背中を、俺も見習わなければいけないな、などと考えながら追いかける。
収納箱はもはや回収不可能なため、急いで踏破しなければいけなくなったわけだが、ここまで実質丸二日もかかっていないことを考えるともはや食料は必要なさそうだし、水筒に三分の二程度の水が残っているため、急げば何とかなりそうだ。
問題は――
「イオ、タオ、ラオ……みんな、無事でいろよ」
そのまま無言で通路の奥にある階段を下りていき、十九階層へ繋がる扉を開けると、そこにはこれまでとは比較にならない闇が広がっていた。
良く目を凝らしてみると、遠くに点々と明かりのようなものが見えるため、相当に広そうだ。
これはダラダラしてられないと中に入ると――部屋の中に足を一歩踏みいれた瞬間、突然体が宙に浮いて言うことをきかなくなってしまった。
「なんだこれっ!?」
「きゃあああっ!」
扉に手をかけていたのが功を奏して、何とか階段側へと戻ることができた。
ま、まさかとは思うが――
「これって……」
確かめるため、足元に落ちていた小石を拾ってから、すぐ落ちるように力を調整して十九階層へ投げ込んでみる。
予想は見事に的中し、小石は落ちていくこともスピードを落とすこともなく、そのまま真っすぐに闇の中へと消えていく。
「やっぱり、無重力だ……」
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