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第五章:其の叡智の業を以って全てに黎明を
十五話:緊急事態と恋バナ
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「ふわぁぁ……フゥ」
あらかた書き終えた作戦計画書を閉じ、久しぶりのデスクワークで凝り固まった(気がする)上半身の筋肉を伸ばしながら、大きくあくびをする。
なんだかんだで少しは寝れる――寝落ちしてしまう――だろうと踏んでいたのに、結局、当初の予定通り一睡もせず朝を迎えてしまった。
こうなったのも、メルナリアの『魔術の祖は自分である』という、あの話を聞いてしまったからだ。
「やっぱり、キュウカクに聞いてみるしかないのか……」
メルナリアの話を全面的に信じるわけではないが、そんなウソをついても何の利益も無さそうなところに信憑性を感じてしまい、一人で考えたところで答えの出ない、思考の迷路を堂々巡りさせられる羽目になった。
ユーリの件もあって正直気は進まないが、他に手段が無いのでは背に腹は代えられない。
シャイアがこの世界をいずれ崩壊するように作ったという話も、面白半分に崩壊させようとしてるのか、はたまたやむを得ない事情があってそう作らざるを得なかったのか、その辺りの微妙なニュアンスの違いで俺の選択肢も大きく変わってくる。
あとキュウカクがメルナリア級の魔術を使っているのは、キュウカクが守護武神だからなのか、それともメルナリアから手ほどきを受けたのか。
そういう細かいところを聞こうとしたら「時間だ」で酒ごとフッと消えちまうんだもんな……。
「ま、とりあえずはメリシア達を起こしにいくか」
これ以上は考えたところでしかたがないので、気持ちを入れ替えて席を立ち、部屋を出る。
と、扉の目の前ではキュウカクが優雅に頭を下げていた。
「主様、緊急事態です」
「いやお前がここにいることがすでに緊急事態なんだが」
俺が呼ぶまで出てくるなと言い含めてあったはずだよな?
あれ、言ってなかったっけ??
「ん? メリシアはどうした」
「盟主及び人間の子供は五次元へと位相変換され、現在は連絡手段がございません」
「は……?」
「取り急ぎご連絡を――と、妾だけ自害して戻ってまいりました」
そりゃユーリやメリシアは死に戻りなんてできないからな……って、いやいやそうじゃなくて。
「ユーリとメリシアが五次元に行ったって、マジで? え、なんで?」
「申し訳ございません……妾では分かりかねます」
そりゃそうだろう。
キュウカクにとっても不意打ちだったに違いない。
この俺の、なんで? という疑問の真意を知るには、メルナリアと話した内容を把握していなければならないのだから。
そしてこうなっては、もはやキュウカクに対する不信感などをあれこれ考えている余裕もなくなってしまったため、昨日の話をかいつまんで伝える。
「あの小僧が……そんなことを……」
話を聞き終わると、俺に相対する時以外は常に高飛車なキュウカクが、珍しく狼狽した様子を見せた。
「メルナリアと少々いざこざがあった話は覚えておいでですか?」
「ああ、そうそう。お前がどうして魔術を使えるのか、そのいざこざも含めて聞きたかったんだよ、アイツとの間にいったい何があったんだ?」
キュウカクが一瞬視線を伏せて何かを考え込んだものの、すぐに顔を上げ、メルナリアとの驚愕のいきさつを語り始めた。
「あの小僧は一時期、妾に恋をしていたのです」
「えっ」
あらかた書き終えた作戦計画書を閉じ、久しぶりのデスクワークで凝り固まった(気がする)上半身の筋肉を伸ばしながら、大きくあくびをする。
なんだかんだで少しは寝れる――寝落ちしてしまう――だろうと踏んでいたのに、結局、当初の予定通り一睡もせず朝を迎えてしまった。
こうなったのも、メルナリアの『魔術の祖は自分である』という、あの話を聞いてしまったからだ。
「やっぱり、キュウカクに聞いてみるしかないのか……」
メルナリアの話を全面的に信じるわけではないが、そんなウソをついても何の利益も無さそうなところに信憑性を感じてしまい、一人で考えたところで答えの出ない、思考の迷路を堂々巡りさせられる羽目になった。
ユーリの件もあって正直気は進まないが、他に手段が無いのでは背に腹は代えられない。
シャイアがこの世界をいずれ崩壊するように作ったという話も、面白半分に崩壊させようとしてるのか、はたまたやむを得ない事情があってそう作らざるを得なかったのか、その辺りの微妙なニュアンスの違いで俺の選択肢も大きく変わってくる。
あとキュウカクがメルナリア級の魔術を使っているのは、キュウカクが守護武神だからなのか、それともメルナリアから手ほどきを受けたのか。
そういう細かいところを聞こうとしたら「時間だ」で酒ごとフッと消えちまうんだもんな……。
「ま、とりあえずはメリシア達を起こしにいくか」
これ以上は考えたところでしかたがないので、気持ちを入れ替えて席を立ち、部屋を出る。
と、扉の目の前ではキュウカクが優雅に頭を下げていた。
「主様、緊急事態です」
「いやお前がここにいることがすでに緊急事態なんだが」
俺が呼ぶまで出てくるなと言い含めてあったはずだよな?
あれ、言ってなかったっけ??
「ん? メリシアはどうした」
「盟主及び人間の子供は五次元へと位相変換され、現在は連絡手段がございません」
「は……?」
「取り急ぎご連絡を――と、妾だけ自害して戻ってまいりました」
そりゃユーリやメリシアは死に戻りなんてできないからな……って、いやいやそうじゃなくて。
「ユーリとメリシアが五次元に行ったって、マジで? え、なんで?」
「申し訳ございません……妾では分かりかねます」
そりゃそうだろう。
キュウカクにとっても不意打ちだったに違いない。
この俺の、なんで? という疑問の真意を知るには、メルナリアと話した内容を把握していなければならないのだから。
そしてこうなっては、もはやキュウカクに対する不信感などをあれこれ考えている余裕もなくなってしまったため、昨日の話をかいつまんで伝える。
「あの小僧が……そんなことを……」
話を聞き終わると、俺に相対する時以外は常に高飛車なキュウカクが、珍しく狼狽した様子を見せた。
「メルナリアと少々いざこざがあった話は覚えておいでですか?」
「ああ、そうそう。お前がどうして魔術を使えるのか、そのいざこざも含めて聞きたかったんだよ、アイツとの間にいったい何があったんだ?」
キュウカクが一瞬視線を伏せて何かを考え込んだものの、すぐに顔を上げ、メルナリアとの驚愕のいきさつを語り始めた。
「あの小僧は一時期、妾に恋をしていたのです」
「えっ」
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