あの日のきみと約束を

(^O^)/<ひとし

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高校生編

28 春の海で(6)

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「りーんー??昨日のあのチャットどう言う事????」

朝一食堂に向かう僕は礼央くんに捕まり一部始終を全て話した。

「…それ、ちょっと僕からは…いや、そうだな…うーん。未亜とかだとヒロくんが嫌がるだろうし…颯斗…うーん。」

礼央くんはうんうん唸っている…やっぱダメかな…。僕も流石に従兄弟に聞くのはどうかって自分でも思う…だけど僕の周りにそう言うことに長けてそうな友達って…あ!明くん!
明くんなら美人さんだし、クールだしそう言うの聞いてくれるかな…。実際明くんと恋バナしたことあるわけじゃないから、どんな感じなのか聞いたことないんだよね…付き合った事ないって前に言ってたけど…。

「ちょっと友達に聞いてみる!ダメなら唯(ユイ)に聞いてみようかな!」
「いや、まぁ、うん…そうだね…唯ちゃんか…参考になるのかな…。」

明くんでダメなら唯に聞くしかない!
唯は僕のすぐ上の姉で現在カナダ人の彼氏と婚約中。彼が大学を卒業したら結婚するらしい。
唯なら話しやすいし、聞いてくれるかも!

とりあえず明くんに連絡を入れてみるかな…。

ーーー
RIN:明くんに聞きたいことがあるんだけど今いい?
アキラ:いいけど、それって僕答えられること?
RIN:わからない…。あのね、大翔を誘惑しようと思うんだけど何かいい方法ないかな?
アキラ:…???誘惑???何でそんなことになってんの???
アキラ:あ、ちょっと朝ごはんの時間だからあとで電話する!
アキラ:めちゃくちゃ!!!気になるんだけど!また後でね!
RIN:わかった!僕もこれからご飯だからまた後で!
ーーー

明くんにとりあえずすぐに断られることはなかったけど、困惑させてしまったみたいだ…。
とりあえず朝ごはんのために食堂に向かうと僕以外のみんなはすでに席についていた。

「おはようございます。遅くなってすみません…。」
「あら、いいのよ~どうしたの?何かあった?」
「あ、いえ友達に連絡してて。」

「友達?って誰?」
「え?明くんだよ。」
「そうか…。」

大翔が一瞬不服そうな顔になりそうだったんだけど、明くんの名前を出したら大丈夫だった。
これはやっぱりオメガの友達以外にはあんまり連絡とかしない方が良さそうだな。
…と言っても僕日本に友達はほぼいないし、学校でも喋るのは明くんとクラスメイトぐらいだからそんなに友達多くないんだけどね。
カナダ時代もそこまですごく仲良い子っていなかったし…というか隣に住んでたブライアンっていう幼馴染が、僕が他の子と話してると邪魔してきてあまり友達が出来なかったのも原因の一つなんだよね…。

今日の朝ごはんはゆし豆腐とポークたまごおにぎり、海ぶどうが乗ったサラダとシークァーサーのジュースとさんぴん茶だった。
ポークたまごはハワイのスパムおにぎりみたいだな、僕が作るとしたらもう少し甘めにするかな…そしたら大翔も好きな味になりそう。さんぴん茶はいわゆるジャスミン茶のことを方言でさんぴん茶って言うらしい。
海ぶどうの乗ったプチプチしてるサラダやっぱり美味しいかも。
海ぶどう自体に味は特にないから食感を楽しむためだけど、このドレッシング美味しいし作り方聞かなきゃ。

「凛は今日どうする?」
「あ、明くんと後で電話しようって話になったからちょっと電話して…あとは沖縄料理のことシェフさん達に教えてもらいたいなって思ってたんだけど。いいかな?」

「そうか。ちょっと俺も急ぎの仕事の連絡が来てるからそっちやってるよ。」
「わかった。じゃあ部屋にいる?」
「あぁ。」

ちょうど、と言っていいのかわからないけど大翔も仕事をしなきゃいけないみたいだから、ご飯が終わったら明くんと電話で相談して…ダメだったら唯に連絡してみよう。
それと昨日の晩御飯や今日の朝ごはんで出てきた料理を教えてもらって、寮で作れるようになりたいな。


****


朝食も終わって大翔は部屋に戻ったし、他のみんなも各自のヴィラに戻ったみたい。
僕は食堂を出てすぐのところにあるリビングスペースでスマホを手に明くんとコソコソと相談している。

一部始終を明くんに伝えて、僕がどうにかして大翔を誘惑して最後まで…って話をしたら電話口に大きなため息が聞こえてきた…。

「それってさぁ、凛が素直に話したら六浦くんのことだからちゃんと考えてくれるんじゃないの?」
「そ、そうかもしれないけど…もしそれで断られたら…。」
「いや、断らないでしょ…。」
「大翔って頑固なんだよ結構…。」
「それは凛もでしょ。」
「うっ…。」

「ねぇ、明くんいい方法ないかな…なんか大翔をその気にさせるようなさ…。」
「いや、そう言われても…僕だって別に経験あるわけじゃないし…。」
「明くんって付き合ってる人いないっぽいこと言ってたけど…その気になる人とかはいないの?」
「気になる人~~?いないよ、学校でも普通に生活してるからなぁ。凛みたいにビビビッ!みたいな運命的な出会いが自分にあるようにも思えないし。」
「そうかなぁ、絶対明くんにも運命の番はいるわけだし。」
「まぁいても会えるとは限らないから運命なんだけどね!僕のことより自分のことでしょ!」
「あ、うん。」

なんかいい方法はないかと考えてみたけどこれと言って浮かぶことはなかった。
まぁ、確かに…明くんも僕もそういうの未経験の二人だからしょうがないのかもしれないけど。

明くんにはお礼を言ってお土産を買っていく約束をして電話を切った。

唯にかけてみるか…カナダのトロントに住む唯とは時差が14時間ある、今こっちは10時だから向こうは深夜0時ごろ…多分起きているだろうけど、とりあえずチャットで連絡をしてみる。

ーーー

RIN:ゆいー起きてる?ちょっと…相談があるんだけど。

ーーー

ものの数秒で既読マークがついたのを確認する。
めちゃくちゃ早い…。

ーーー

YUI:起きてた!!!!凛久しぶり~~!
YUI:何!
YUI:相談??
YUI:気になる!
YUI:詳しく!!!!!!

ーーー

僕が一言打つだけで鬼のように返信がくる…、僕が返信に戸惑っていると電話が鳴った。
着信画面はもちろん唯…。

「凛!!おそーーい!もう返信待てなくて電話しちゃったわよ。」
「あ、ごめん唯!」

「もぉ!すぐ謝らないの!」
「う、ごめ…じゃなかったわかった。電話ありがとう。あのね…」

今日1日で三回目の一部始終を話す…唯の場合はまず番を見つけた話や、夏休みに挨拶に行く話も含めて他の二人よりも少し細かく伝えてみる。

「ま、待って!凛番を見つけたの?しかも『運命の番』?No way!!!Are you kidding me?」
「I’m not kidding.昔、カナダの家にきたことがあるんだ。僕が2~3歳の頃…だから唯は4~5歳の頃かな…大翔っていうんだけど。覚えてる?」
「あ、そういえばあなた思い出したのよね昔のこと。そう、4~5歳…覚えてるような覚えてないような…でも確か凛とやたらと仲良い子がいたわね、街で拾ってきた子で…確か日本人だったのは覚えてるわ。」
「拾ってきてない!もぉ!迷子になってたのを助けたんだよ…その子とたまたま日本で再会したんだけど、その子が僕の『運命の番』だったんだよ。」

「すごーい!ほんと運命じゃない!すごい!!え、で?その大翔くんと?その最後まで?したいって話だったっけ?」
「…そう、大事にしてくれてるのは分かるんだけどね…。」
「…そっかー、そうねじゃあ夜這いしたらいいんじゃない?」
「え?よば、え?」
「夜這いよYO・BA・I!!!ちょっと乗っかって、おねだりすればいいのよ!ちょっと小首でも傾げながら可愛くおねだりすれば一発でしょ!」

ちょっと!!!!!!なんて事を言い出すの!!!
よ、よば…夜這い!!!
しかも乗っかるとか…おねだりとか…できてたらこんなこと相談してないよ!

「ちょ、ちょっと唯!僕にはハードルが高いって!」
「えー!大丈夫よ!なんとかできるもんよ!ちょっとお酒でも飲んで酔っ払った勢いでもいいんじゃない?」
「お酒って!日本では20歳から!っていうかそっちでも19歳からなんだからどっちにしてもダメでしょ!」
「何よ~固いわねぇ。うちもアルが全然手を出してこないから、ちょーっとパーティーで間違ったふりしてお酒飲んで、介抱して貰うふりしてなんとかこぎ付けたんだから!」
「え…実体験…?」
「そうよ?実証済みよ!可愛くおねだりしなさい!凛ならできるわ!」

「そ、そんなぁ…。」

まさか実体験だったとは…。
っていうか…唯ってば…そんな肉食系だったとは知らなかった。

「とりあえず頑張りなさい!夏休み会えるの楽しみにしてるわ。まぁちょっと…パパと弦兄さんが大騒ぎしそうだけど、そこはママと私がなんとかするから…。」
「うん…ありがとう、そっかそうだ父さんと兄さんのこと忘れてた…そこはよろしく…。」
「はいはい、私の時も大変だったもの…はぁ、そろそろ寝るわ。おやすみ~。」
「うん、ありがとう。おやすみ。」


なんとか…できそうにないけど…。
唯の提案はものすごく大胆だったし、あと夏休みの里帰りですこーーしだけ過保護な父さんと兄さんの対策を忘れていた。二人とも僕が事件に巻き込まれてからというものものすごく過保護になってしまって、何かというと口を出してくる。それ自体は心配してくれてるのがわかるからなんともないんだけど。
唯の婚約の時も大いに揉めた…。
アル…唯の婚約者のアルフレッドが挨拶に来た時なんて、父さんも兄さんも前日から泣いて、嫌がって部屋に籠城してと大騒ぎだった…。
アルは小さい頃から知ってる幼馴染なんだけど、それでも恋人同士になった時も大騒ぎしてさらに婚約の時もそんな状態だから、結婚式の時なんてもっと大変だなんて話してたけど…。
まさに僕も同じ状況になるんだよね…。

礼央くんと颯斗さんから実家には報告をしてもらってるけど…。ちょっと夏休みのこと考えるのが億劫になりそう…。

そして、その前に…よば…いや…夜這いはほんとハードルが高すぎる。


「困ったなぁ…。」

リビングルームのソファにもたれかかってたらついつい声が出てしまっていた。
一つため息をついて天井を見上げる。

「凛様、どうかしましたか?」

聞き慣れない声がして後ろを振り返ると、そこには料理番の一人である与那覇さんが立っていた。

「あ、与那覇さん…どうしたんですか?」
「いえ、そろそろ昼食の準備の時間で凛様が沖縄料理の勉強をなさりたいと伺っていたので呼びにきたんですが。」

あ、そうだった。
時計を見るともう11時過ぎている。唯と1時間ぐらい喋ってたのか…。

「わざわざ、すみません。今行きます。」
「何かお困りごとがあるようですが?」
「あ、いや…まぁあの、あるんですけど…大丈夫です。なんと無く解決しそうなんで…。」

解決しそうなのは嘘なんだけど、まるっきり嘘でもないか。
僕が腹を括れてないだけなんだけど。
かといって与那覇さんにこの話をするのもどうかと思うので、なんとなく濁した…流石に言いづらいし。

「そうですか、何かあれば相談ぐらいは乗りますよ。じゃあ行きましょうか。」

与那覇さんは人好きするような笑顔でにっこりと僕を先導してくれる。
料理も覚えなくちゃね!今日はお昼作りも手伝わせてもらうから、大翔に美味しいもの食べてもらおう!

調理場まで向かう間、料理のことなんかを質問しつつ僕らはリビングルームを後にした…。



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