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約1227日(篤志ver)
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何気無い雰囲気で、自動ドアを開けた。
「いらっしゃいませ!」
篤志(あつし)の耳に、入ったパン屋の若い店員の男の、成長期で変わり済みの聞き慣れない声が入る。
けれど、ふっと遠くから見たその店員の顔は、篤志にとってはとても懐かしかった。
優しくタレ下がった目元と優しそうな口元だけは、何年経っても変わって無かった。
女子にモテたいのか、格好つけてるのかバレバレな髪型なのがちょいムカつくが…
篤志は、ごく普通に、パンを入れるトレーを取る。
しかし、篤志の目的は、パン…では無い。
(間違い無い…ショーちゃんだ…)
篤志が小学生の頃、同じく小学生だった兄の友達だった兄と同い年だったショーちゃん。
篤志は、小さい頃からその女のコみたいな可愛さから、周囲から特別扱いが普通だった。
どんな人物からも「かわいい」「
かわいい」とほめそやされ、優遇される…
それが篤志の日常だった。
しかし、ショーちゃんは、ちょっと違ってた。
ショーちゃんは、勿論、容姿そのままに篤志に優しかったが、他の人間のように篤志だけを特別扱いしなかった。
誰に対しても優しくて、篤志に対してと同様に他の人間に接した。
そして、篤志がダメな事をしたら
、他の人間と違ってショーちゃんだけは本気で怒ってきた。
篤志の中で、ショーちゃんはいつしか特別になり、ショーちゃんと過ごす日々はかけがえないものだった。
それなのに…あの日…
ショーちゃんが篤志より2年先に中学生になった時、篤志は、道で声を優しくかけて来てくれたショーちゃんを、ある理由から3回も無視してしまった。
それは、
篤志の兄がショーちゃんに、篤志の事が好きなんじゃないか?とひやかしで聞いたら、ショーちゃんは、
「付き合うなら女子がいい」と言っていたらしい事を後から兄から聞いたからだ。
その時篤志は、かなりの衝撃を受けた。
信じられなかった。
篤志は、この時すでにショーちゃんが恋愛対象として好きで、ショーちゃんも、篤志をそういう対象で好意を持ってくれていると思っていた。
それから、ショーちゃんは、篤志の前に現れなくなった。
その後、篤志は一度、遠くからショーちゃんを見た事があったが、結局声をかけられなかった。
そしてたまたま、篤志の家もほんの近くだか別の所へ引っ越しもして、ショーちゃんの事は、忘れよう…忘れよう…と、今日までの約1277日やってきた事もあった。
しかし、忘れられなかった…
篤志は結局、ショーちゃんと再び会おうとしたが、ショーちゃんも引っ越していて、
人ヅテに探しても…
ショーちゃんはきっと小学生の時のように、今も回りからさほど目立つ存在でもないのだろう…
見付からない。
いい意味でショーちゃんは、幼い頃そのままそこら辺にゴロゴロいるまぁまぁの類で、突出して目立つイケメンの自分と違うと篤志は思った。
その上ショーちゃんは、なかなか慎重なようで、SNSから身バレする事も無い。
なかなかショーちゃんの手掛かりがなく焦っていると…
昨日、絶対入る事の無かった町の小さいパン屋の中を何気に見たら
、
あの懐かしいショーちゃんに似た男が居た。
今の篤志は、あの、ショーちゃんを無視せざるを得なかった頃から
すっかり自信も取り戻していた。
今のこの自分の成長したショーちゃんより格段に格上のこの美貌なら、例え男だろうと、ショーちゃんは必ず自分の事を恋愛対象として好きになってくれるはずだと確信している。
(ショーちゃんに、あっちから
「もしかして…あーちゃん?」と…ぜってー、声を掛けさせてやるからな!それから、ぜってー、俺の事好きにさせてみせる!)
篤志は、時間をかなりかけてパンを選んでいる間…
店に静かに流れる、秋の夕にぴったりなしっとりとしたピアノのBG
Mとは真逆に…
その自信とは真逆に…
心臓は、激しく踊り狂っていた。
「いらっしゃいませ!」
篤志(あつし)の耳に、入ったパン屋の若い店員の男の、成長期で変わり済みの聞き慣れない声が入る。
けれど、ふっと遠くから見たその店員の顔は、篤志にとってはとても懐かしかった。
優しくタレ下がった目元と優しそうな口元だけは、何年経っても変わって無かった。
女子にモテたいのか、格好つけてるのかバレバレな髪型なのがちょいムカつくが…
篤志は、ごく普通に、パンを入れるトレーを取る。
しかし、篤志の目的は、パン…では無い。
(間違い無い…ショーちゃんだ…)
篤志が小学生の頃、同じく小学生だった兄の友達だった兄と同い年だったショーちゃん。
篤志は、小さい頃からその女のコみたいな可愛さから、周囲から特別扱いが普通だった。
どんな人物からも「かわいい」「
かわいい」とほめそやされ、優遇される…
それが篤志の日常だった。
しかし、ショーちゃんは、ちょっと違ってた。
ショーちゃんは、勿論、容姿そのままに篤志に優しかったが、他の人間のように篤志だけを特別扱いしなかった。
誰に対しても優しくて、篤志に対してと同様に他の人間に接した。
そして、篤志がダメな事をしたら
、他の人間と違ってショーちゃんだけは本気で怒ってきた。
篤志の中で、ショーちゃんはいつしか特別になり、ショーちゃんと過ごす日々はかけがえないものだった。
それなのに…あの日…
ショーちゃんが篤志より2年先に中学生になった時、篤志は、道で声を優しくかけて来てくれたショーちゃんを、ある理由から3回も無視してしまった。
それは、
篤志の兄がショーちゃんに、篤志の事が好きなんじゃないか?とひやかしで聞いたら、ショーちゃんは、
「付き合うなら女子がいい」と言っていたらしい事を後から兄から聞いたからだ。
その時篤志は、かなりの衝撃を受けた。
信じられなかった。
篤志は、この時すでにショーちゃんが恋愛対象として好きで、ショーちゃんも、篤志をそういう対象で好意を持ってくれていると思っていた。
それから、ショーちゃんは、篤志の前に現れなくなった。
その後、篤志は一度、遠くからショーちゃんを見た事があったが、結局声をかけられなかった。
そしてたまたま、篤志の家もほんの近くだか別の所へ引っ越しもして、ショーちゃんの事は、忘れよう…忘れよう…と、今日までの約1277日やってきた事もあった。
しかし、忘れられなかった…
篤志は結局、ショーちゃんと再び会おうとしたが、ショーちゃんも引っ越していて、
人ヅテに探しても…
ショーちゃんはきっと小学生の時のように、今も回りからさほど目立つ存在でもないのだろう…
見付からない。
いい意味でショーちゃんは、幼い頃そのままそこら辺にゴロゴロいるまぁまぁの類で、突出して目立つイケメンの自分と違うと篤志は思った。
その上ショーちゃんは、なかなか慎重なようで、SNSから身バレする事も無い。
なかなかショーちゃんの手掛かりがなく焦っていると…
昨日、絶対入る事の無かった町の小さいパン屋の中を何気に見たら
、
あの懐かしいショーちゃんに似た男が居た。
今の篤志は、あの、ショーちゃんを無視せざるを得なかった頃から
すっかり自信も取り戻していた。
今のこの自分の成長したショーちゃんより格段に格上のこの美貌なら、例え男だろうと、ショーちゃんは必ず自分の事を恋愛対象として好きになってくれるはずだと確信している。
(ショーちゃんに、あっちから
「もしかして…あーちゃん?」と…ぜってー、声を掛けさせてやるからな!それから、ぜってー、俺の事好きにさせてみせる!)
篤志は、時間をかなりかけてパンを選んでいる間…
店に静かに流れる、秋の夕にぴったりなしっとりとしたピアノのBG
Mとは真逆に…
その自信とは真逆に…
心臓は、激しく踊り狂っていた。
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