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 コウとアキ王子の泊まる部屋は別々で、つまり宿の女主人の友人2人に当てられていた2部屋だった。そのそれぞれには、ベッドが2台ずつ設置されている。
 コウとアキ王子は部屋の用意が出来るまで、受け付けのカウンター近くのソファで横に並んで、宿の使用人の持ってきた上品なティーカップ入りの紅茶を飲んで待つ事にした。
 しかしコウはすぐ、隣りで余りに姿勢良くお茶を飲むアキ王子を見てその美しさに思わず目が釘付けになった。
 それでもアキ王子を見て美しいと思うのは、万人が月や星を見てそう思う感情と同じで恋愛感情では絶対に無いとコウは思った。そして王子と視線が合うとさっさと顔を逸らした。
 だが、絶対に恋愛感情でないと強く思いつつもコウは、アキ王子の身体の安全は酷く気になった。 この旅では護衛もまだ雇ってなかったから、コウもアキ王子も本当の身分は隠していたからだ。しかし、例え護衛を雇ったとしても、今のコウの手持ち資金では何人も採用は出来ない。ならせめてこの旅の間は王子の安全の為、王子が偽名を使う事を提案した。
 コウがあまりに真剣な顔付きで提案してきたので、アキ王子は最初驚いていたが即OKした。
 王子の偽名は…コウとアキ王子との話し合いで、アルと決定した。
 コウ達は、すぐに部屋は用意されると思い待った。
 しかし……女主人が急ぎコウ達の所に帰って来たと思ったら、予想外の言葉を口にした。

 「あの……申し訳ありません。部屋を出てもらう私の二人の女友達の片方は旦那さんと同じ部屋だったんですが、さっき夫婦ゲンカをしたとかで、友人の方は私の家に行くと言ってますが、旦那さんの方が部屋を出たくないと言ってまして…」
 「えっ?じゃあ、部屋は一つしか無いって事?」

 コウは困惑した。

 「はぁ……本当にすいません。出来たら、御二人で一つの部屋にお泊りになれませんか?」

 女主人は、コウと王子の顔を見て懇願した。

 「ちょっと、待ってて欲しい。すぐ戻る」

 コウはそう言い、王子を促して二人で宿の外に出た。そして王子に告げた。

 「アキ様。俺は他の宿を当たるか野宿するんで、部屋はアキ様がお使い下さい」

 王子は、それを聞き眉間にシワを寄せ返した。

 「コウ……それは出来ない」
 「もしかして俺が、アキ様を置いて黙って何処かへ行くとでも思ってます?」

 コウの口から自然とそう言葉が出て、今度はコウのそこにそれが寄った。
 アキ王子は一瞬、何を思ったか真顔でコウをじっと見詰めたが、すぐ首を横に振って微笑んだ。

 「そんな事は思ってないよ」

 コウは、そんな王子をじっと見詰めた。そしてふと「そんな事は思ってないよ」が本当に王子の本心か気になったし、よく考えればプロポーズをしてきた王子を残して一人旅を始めた自分が「黙って何処かへ行くとでも?」と言える立場なのかと今になって思った。それにコウは、コウなんて今でも王子の為にすぐに王子の前から黙って消したいとも思っている。
 コウは、今の自分が酷く矛盾していると思った。
 そんな心中複雑なコウに、アキ王子は続けて言った。

 「この宿がダメなら、又二人で違う宿を探してもいいし、野宿してもいいんだ。ただ私は……私は、コウと一緒に居たいだけなんだ。ただ、それだけなんだ」

 アキ王子は、向かい合う自分より背の低いコウをじっと見詰めた。
 コウは、王子が何気なく告げてきた愛の言葉にドキっとして視線を外せなくなったが、すぐに幾らか残っていた己の冷静さに鞭を打ち出してある事を考えた。

(待てよ。多分他の宿を探してももう部屋はないだろう。なら、野宿して、王子に旅の現実を教えるのがいい!コウ!言え王子に!別の宿をさがしましょうと!そして最終的には王子に野宿してもらえ!)

 次の瞬間コウの脳裏に、たった一日の野宿で耐えられなくてコウに別れの言葉を告げてトボトボ城に撤退するアキ王子の後ろ姿が浮かんだ。

 (そう……王子の為にもこうならないといけない。だから、言えコウ!別の宿を探しましょうと言えコウ!)

 コウは、内心で自分自身を強く鼓舞した。

 (言え!コウ!こんなお城育ちの美しい王子様が野宿に耐えられる訳が無い。そう、チャンスだ!チャンスだ!チャンス……チャンス……チャンス……チャンス…)

 いつしかコウはアキ王子の顔を見詰めながら、そのフレーズを心の中でブツブブツブツ呪文のように繰り返し始めた。

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こんばんは!
読んで下さった方、ありがとうございます🙏

1月9日の今日と、明日と明後日、出来損ないアルファ公爵子息~を更新いたします!
どうか、どうかよろしくお願いします!

 






 

 

 



  
 
 
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