シングルファミリー

みゃー

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エピローグ

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 2月、まだ冬の東京。
 その都心にある30階建ての高層ビルの最上階にあるこのビルの会長室。
 そこに何ヶ月かぶりに高齢の会長城北昭一(しろきたしょういち)が訪れ、高名なデザイナー作の大きな机が前にある会長椅子にどっしり座った。
 年齢は65歳をとうに超えているが、容姿は、短い髪はキレイなロマンスグレーに整えられ、体格も良く、顔は昔はかなりの男前であったのかよくわかる。
 会長のすぐ目の前には、いつもリモート通信での短い会話ばかりで実際に会うのは2年ぶりの、先日30歳になったばかりの一人息子城北泰成(しろきたやすなり)が立っている。
 息子も背が高く鍛えた体付きで上質な黒のスーツを着こなし、顔は昔の父に似てイケメンで冷静な性格が顔付きにハッキリ出ていた。
 会長は、目は笑わず口角だけ上げて息子に嫌みったらしい口調で言った。

 「又、会うのをセッティングした女とは上手くいかなかったらしいな…少し位笑顔の一つでも女に見せたらどうだ?」

 「…」

 息子の泰成は無言のまま、父から外していた寒々しい視線を彼に一度向けるとすぐ外した。
   会長は、机に肘を付けて顎下で両手を組んで、上目遣いで息子を見てすごんだ。
 
 「今回もいい女だったはずだかが……顔も良い、胸も大きく体付きもいいし21歳で若いが吸い付いてくるような色気もある。4年前まで一時期有名アイドルグループにもいたようだし、父親は国会議員で祖先はかなり田舎だが有名な藩主の家系。セッティングをダメにするのはこれで何人目だ?もういい年になったんだ。それにお前にはいい精神科医もずっと付けてきた。いつまで子供の頃に巻き込まれた事件を言い訳に甘えて、自分が背中に負ってる子供を作り家名と企業を守る責任から逃げるつもりだ?とりあえず結婚だけしろ。そうすればいずれ子作りもなんとかなるかも知れん」

 泰成も、目は笑わず僅かにだが口角だけ上げて冷静な口調で返した。

 「その話ですが、私が結婚して子供を持つより、私がこの会社を辞める方が簡単です。会長、前からずっと言ってますが、今日こそどうか私を社長職から解任して下さい」
 
 ドンッ!

 会長は、即机を激しく叩いた。
 しかし、泰成は一切驚く事もなく、真顔で父親の顔を見続ける。

 「それで、お前は私に私の後継ぎはお前のいとこの剛(ごう)にと又言うつもりか?お前も分かってるだろう?剛は企業の経営など向いてない一切出来ない出来損ないだ。その上毎日毎日悪い仲間とつるんで酒を飲んでは違う女と寝て海外のカジ丿に行っては親の資産を食い潰してるクズだ」

 泰成は、無表情で反論した。

 「分かりませんよ?剛も社長にしてみたら、以外と真面目になるかも知れませんよ」

 会長は又机をドンッと激しく叩いた。
 泰成にとってこんな父親との応酬は昔しから何度も繰り返ししている事ではあったが、もういつも冷静な泰成も今日はいい加減ブチキレる寸前だった。
 そして、今日こそは社長を退任して自由になり、その後は日本を本格的に離れ海外へ行くでもいいから早く自由になりたかった。そして、どこに行こうが稼ぐ自信もあった。
 しかし、今回は父の方も我慢が限界だった。
 父は急に又口元だけ笑うと、泰成があまり触れて欲しくない私生活にズケズケと踏み込んだ。

 「泰成、お前も海外へ行っては、目の前で行なわれる他人の生のセックスを、服を着たままただ見ながら酒を飲む高級会員制バーに通ってるようだから、剛の事は言えんがな」

 泰成は、以前から多分父にはこの事がバレているとは思っていたものの、面と向かって言われるとは思っていなくて内心驚く。しかし、一切顔には出さずに冷静に大した事でもないように返した。

 「治療ですよ。これも、俺の精神治療の一貫です」

 「他人のセックスを見ていたら、お前が子供の頃のトラウマで男として不能になったのが治るのか?治ったらお前も人前でただの獣のように腰を振る気か?」

 父は、目を眇めて泰成を睨んだ。

 「さぁ、長年大勢の他人のセックスを見てますが今の所は治るかどうかは何とも言えませんが……それに、俺自身は自分のセックスを他人に晒す趣味は全くありません。さっきも言いましたが、俺が他人のセックスを見るのはあくまで治療です。俺がセックスに興味を持ち続けるには仕方ない方法かなと思います。それに、他人に自分のセックスを見せたい人間は結構いて、その店はその国の法律では合法で営業してます。日本も非合法の地下でそう言う所はありますが、流石に日本のそう言う所には通ってません。あぁ……会長も興味がお有りなら、是非今度海外に行きたくなった時会長も御一緒にいかがですか?若い男女の恋人同士のセックスがいいですか?それとも、戸籍に入ってる本当の夫婦のセックスがよろしいですか?それとも……女同士、男同士がよろしいですか?」

 泰成は、目付きが冷たいままクスっと笑った。
 父は、今度は机の上にあったコーヒー入りのティーカップセットを左手で払い、会長室の白い壁にぶつけた。ガシャンと陶器の割れる音がして、壁の広範囲に黒の液体が飛び散る。

 「……ドイツから取り寄せた高いやつだったのに…」

 しかし泰成は、そう言いやはり驚く事も無く平然と父を見詰めた。
 すると、父は目に怒りを籠もらせながら、又、泰成を驚かす発言をした。
 
 「よかろう。お前を社長から解任してやる。その代わり、お前は次の社長を社長のレールに乗るまで教育して、更にその教育期間中に次期社長を次期社長婦人に見合う女と婚約させろ…」

 「やはり、剛ですか?」

 泰成は、クールな失笑を目元に浮かべた。
 しかし、父親の提案は意外なものだった。

 「剛な訳なかろうが!私は今決めた。私には今、お前も知ってる通り内縁の妻がいる。その女には、前の夫との間に20歳のフリーターの息子と4歳の娘がいる。その息子を私の養子にして、その息子を次期社長にする。お前は、その息子を教育した上で婚約者を決めて次期社長のレールに乗せろ。そうしたらお前を社長から解任して自由にしてやる。何処へなり行くがいい!」


 

  

 


 

 


 

 

 

 

 
 
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