シングルファミリー

みゃー

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エピローグ2

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 泰成の父の発言は冗談でなかった。
 父は内縁の妻の連れ子の2人の子供とすぐ養子縁組した。
 そして泰成が、自分が社長を辞めて父の後を継がない代わりに、父親が養子にした20歳の義理の弟の方を次期社長として教育して次期社長のレールに乗せて、それなりの家柄と実家に資産がある女性と婚約させる事が本当に決まった。

 そして1週間後…
 その義理の弟の大山敬(おおやまけい)が泰成のマンションに来る日が来た。
 義理の弟は、朝10時に一人でここに来る予定になっていた。
 今日から義理の弟は泰成と共にここで暫く暮らし、泰成から次期社長として育成される。
 その前に泰成は、シャワーを浴びた後白のバスローブを着て、広いリビングで大きく高価なテーブルで一人朝食を採っていた。
 泰成は独身なので、マンションの清掃、食事などは一流のハウスキーパーを何人か使っている。今朝の朝食は、その中の今日担当の妙齢の美しい女性のハウスキーパーが作ったものだ。彼女は食事を作る腕前も確かだが、今朝のメニューはただ食パンにコーヒーだけだ。朝はいつも、泰成は食欲が無いからだ。しかし、食パンもコーヒーも素材は一流で出来ている。

 「社長、もっとコーヒーいかがですか?」

 美人ハウスキーパーが優しく甘ったるい声で尋ねるが、泰成は全く浮かない顔付きで返した。

 「いや……もう結構…」

 そして泰成は、そろそろこのハウスキーパーは辞めさせ時だと決心した。
 何せ、最近この美人ハウスキーパーは、自分によほど自信があるらしく泰成に露骨に誘惑めいた視線と声を向けるし、何よりこれから20歳の男がここに来て短期だとしても住むかも知れないので何か間違いがあった後では遅い。
 そして泰成は、おもむろに手に持っていた何枚かの書類を見る。

 (大山敬……今年で20歳。最終学歴は、当時住んでいた家に一番近い歩いて行ける中の下のランクの公立高校で、しかも3年前に中退。その後はフリーターで飲食店を転々と勤務か…)

  泰成にとっては、父親の突飛な発言や行動は日常的であったが、今回の後継者の件はそんな泰成をも驚愕させた。
 そして、普通ならそんな馬鹿らしい提案は受け入れるべきでないのも充分分かっている。
 しかし、流石の泰成も父親との確執と怒りが限界を超えてしまい、父親の提案に弾みでイエスと答えてしまった。本当に、ただの弾みだった。
 そして、父親と会社がイヤならさっさと辞表を出せば良いのだが、泰成の会社は子会社をも含めたら約5000人の数の従業員がいて、その家族をも含め、彼らの生活を考えたらそう簡単にも辞められない自分もいた。
 父の内縁の妻のどこの馬の骨とも分からない連れ子の息子を次期社長として教育しないとならないと思うとすでにうんざりしている。
 義理の弟の敬の履歴書は父からも受けとっていたが、今見ているのは、泰成が雇っている顧問弁護士経由で泰成が調べさせて出来た義理の弟の身辺調査結果だった。
 そして泰成の目は、調査報告書に添付されている、安っぽいコーヒーショップで勤務中の義理の弟の敬を隠し撮りしただろう写真に移る。
 敬の顔の、正面と横顔がハッキリ確認できた。

 (確かに、顔だけはいいな…)

 泰成は、心の中でそう呟いた。
 義理の弟の顔は正面からも横から見ても整っていてキレイと言う表現が合っていたが、清楚な黒髪と相まって、顔のキリッとした所に真面目そうな雰囲気を感じる。
 しかし、人は見た目では分からないのは、企業のトップをしている泰成は身に沁みて分かっている事だ。
 一見真面目そうな人間でも、一皮剥けば
泰成の会社の資金を横領したり、取引先からワイロを受けとっていたり、他にも社内で犯罪をしていた奴は何人かいて、今実際刑務所に入ってる奴もいる。
 そして、義理の弟の写真の中の笑っていないその表情は、酷く冷たい人間にも見える。
 そして、報告書の詳しい調査結果によれば、敬の店での仕事態度は非常に熱心で真面目だが何故か突然の欠勤が多く、同僚とのコミュニケーションも積極的に取らないという事だ。

 (まさに底辺の人間だな……俺は早く社長を辞めたいが、だからと言ってこんな男は次期社長にはなれないし次期社長にはさせられない。そもそも、簡単に楽に社長になれるとホイホイ喜んで来るような奴だろうし、やはり今日ここに来たらさっさと今日中にも追い出さないとな…)

 泰成はそう決心すると、優雅にティーカップを持ち上げて、残りのコーヒーを口元に持っていった。
 そして、父が何故今回こんな男を次期社長にと言ったのかが全く理解できなかった泰成だが、父の方もただ単に泰成に対する怒りで後先考えずに提案してきたのだろうと結論付けた。

 約1時間後…
 泰成は、ラフな黒のニットとボトムに着替えていた。
 約束の10時の5分前…
 敬は泰成のマンションに来た。
 しかし、オートロックが開き、エレベーターで15階最上階の泰成の部屋の大理石造りの玄関内に上がってきた義理の弟を見て泰成は驚く。
 敬は、自分の小さな4歳の妹の手を本当に大事そうに優しく引いて一緒に連れて来たのだ。
 事前の話では、敬は一人でこのマンションに来るはずだった。
 それで泰成が妹に驚き顔付きが険しくなると、妹は泰成を恐れるように敬のお尻の後ろに隠れて、敬の履いているズボンの生地を敬に甘えるようにギュっと握った。




 
 


 
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