インフィニット ウィンター  

みゃー

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(まさか……昨日の、あの人?……)

 空也は、そう心の中で呟くと、一度生唾を飲み込みこみ、長身の黒のスーツのイケメンの顔を凝視した。

 だが、長身の黒のスーツのイケメン西城は、一度深々と頭を下げ、その後空也の顔を見て、しかし空也とは初対面の雰囲気を全身で出しまくりながら挨拶した。

「初めまして。空也様。今日より空也様のボディガードをする、西城です。どうかよろしくお願いします」

(本当に?本当に、昨日のあの人じゃない別人なのか?顔や体つきだけじゃなくて、声まで似てるのに……)

 空也の心に疑念が渦巻いたが、空也と西城が向かい合うすぐ横には、空也の祖父がいてニコニコしながら空也達を見ている。
 ここで祖父に不審がられ色々詮索されるのもマズい。
 空也は、冷静に表情や顔色を変えず、西城に合わせて返事した。

「初めまして。天野空也です。よろしくお願いします」

 すると、空也の視線は、西城の唇にいった。

 そして、昨日の、黒のロングコートの西城とよく似た男とのキスを思い出した。

 昨日男の唇は、突然、そしてとても強く空也のそれを奪い、触れると言うより奪うように吸い付いてきた。

 ファーストキスというには、あまりに空也には強烈だった。

「どうか……しましたか?」

 そこに西城が、クールな表情で囁くように空也に尋ねた。

「いえ……ちょっと、シャワーに行ってきます……」

 空也は、西城から目を逸らすとくるりと体を反転し、西城と祖父をそこに残しバスルームに向かった。

 バスルーム自体に暖房が入っているので、空也はシャワーだけにするつもりだった。

 空也が程よい温度のシャワーを立ったまま頭から浴びながら、再び考えたのは西城の事だった。

(本当に、昨日のあの人と別人なのか?)

 だが空也は、昨日以前に、もっと、もっと以前に、西城に会った気さえする。

(あの唇を、以前から知ってる気がする……)

 再び、空也は昨日の西城とのキスを思い出した。
 
 途端に、空也の胸の鼓動が速くなった。

 そして、昨日も感じたもっと深い感覚も蘇った。

(でも……唇の他にも、もっと、もっと、西城さんを知ってる気がする……腕や胸の逞しさも、その素肌の温もりも)

 だが、そんなはずは絶対に無いと、空也はシャワーをかぶる頭を振り足元にあったジャンプーを取ろうとした。

 すると、空也は、裸の自分の下半身に違和感を感じた。

(何?これ?)

 空也は、自分の陰茎がムクっとなり立ち上がりかけてるのを見て驚愕した。

(何?!これっ!)

 空也は18歳になるが、こんな事は初めてだった。

 そして、両親や祖父母から、徹底的に性に関する情報への接触を管理されて生きてきた。

 空也は、学校での性教育授業は親から受けさせてもらえず、宗教上の理由と言う事で全て欠席していた。
 ただ、中学生になると何度か臨時の家庭教師が空也の家に来て、空也は、本の文章や絵で男同士の性交の仕方を教わり、最後にはいつも……

「お教えした事はあくまで基礎知識として覚えて頂くだけで良いのです。空也様が旦那様となられる御方と実際に褥を共になされお体を交える時は、空也様のお足を大きく開いて棒も穴も旦那様に何もかもをお見せして、旦那様のなさる事に全て空也様のお体を任されますように……そうすれば、旦那様は空也様をこれ以上無い至悦の世界にお連れして下さいます。そして、一人自分で自分の性器を触る事は、決してしてはなりません。自分で自分を触り悦に入るなど、世にも恥ずべき浅ましい行為なのです」

 と、何度も家庭教師から念を押されていた。

 だが、本当に様々な男同士の手や口を使った愛撫の仕方や、獣の交尾のようなセックスの激しい体位を文章と絵でどんなに教わっても、空也はセックスに興味が沸かなかった。
 興奮もしなかった。
 だから、空也のペニスは、射精もした事もなければ、本当に勃起すら今日が初めてだった。

 しかし、今は突然どうしたと言うのか?

 昨日で、空也の人生も、空也の体自体がも恐ろしく変化した気がした。

 体が変化したと言えば……

 空也が昨日呉服店で、産まれた時から身に付けていた天空神から貰ったブレスレットを外した時、空也の体と心が異様に軽くなったのを感じたのを思い出した。

 そう、まるで、空也の全てをガチガチに縛っていたキツイ鎖から解放されたような感覚だった。

 空也は、今更ながら思い出した。

(そう言えば……あのブレスレット、今どこにあるんだろう?……)

 しかし、空也は、下半身にどんどん集まる熱に、ブレスレットの事は再び忘れた。
 
「ハア……ん……ハア……ふう……」

 空也は、顎を突き出し艶っぽい吐息を吐いた。

 そして、自分のそこがさらに固くなる予感に驚きながら、そこに手を伸ばしいじり回したい衝動に駆られた。

 そうしたら、きっと、きっととても気持ち良くなるかも知れない……

 本能が、空也にそう囁いているようだった。

 しかし……

 突然空也は、性の家庭教師の言葉を思い出し、自分の陰茎を弄る事に大きな罪悪感と怖さを感じ、冷水のシャワーを太もも上辺りにかけ続けて体を冷ました。

 空也の下半身の熱は、すぐに引いた。

 幸いだった。

 だが、空也の下半身の熱は引いたが、胸の辺りにジンジン感じる熱がなかなか引かない。

 そんな自分を隠して、空也は服に着替えて何も無かったような顔でバスルームを出た。

 すると、バスルームの扉と向かい合う壁に、西城が腕を組みもたれかかって立っていた。

 空也は、西城の姿を見て焦るが、普通にしようと出来るだけ取り繕う。

「もしかして……ずっと待ってたんですか?」

「ええ。あなたのボディガードですから。それに、あなたのおじい様から、気晴らしと昼食を取りにどこかあなたを車で外に連れて行ってくれと言われましたから。俺が車を運転してお連れしましょう」

 西城は、まだ壁にもたれたままクールに
言った。

「えっ?!……お祖父様が、僕に昼食を外で取れと?」

 今の今まで、祖父が空也にそんな事を言った事など一度も無かった。
 親戚の特別の集まりや学校での昼食以外で、空也は祖父に外での食事を許してはもらえなかった。

 空也は、やはり祖父の急激な態度の変化
に怪訝な表情を浮かべた。

 だが西城は体勢を変えないまま、口元だけ少し笑ったようにして言った。

「もう、あなたは自由なんですから、好きな所に行けるんですよ」

「それを言うって事は、西城さんあなたは、僕が昨日までどんな立場だったか知ってるんですね?」

 空也の真剣な眼差しが、西城に向き答えを待った。

「ええ。知ってますよ。あなたのお祖父様から聞きました。天空神の許嫁生活の18年間は監禁されてるも同然で自由が無くさぞかし苦しく大変だったでしょう。でも、もう天空神はあなたの夫にはならない。あなたは、天空神と結婚しなくていい。あなたはもう好きに生きても良いのです」

 西城のその即答の中の「好きに生きても良い」や、さっき西城が言った「もう、あなたは自由なんですから」と言うワード。
 そこから、空也は、増々西城と昨日のイケメンがダブる。

 空也の鼓動が、又速度を早めた。

 だから、いつの間にか空也の口から自然と、西城への問いかけが出ていた。

「西城さん……あなた、昨日の夜、僕を橋で助けてくれた人ですよね?」



 

 

 



 



 

 















 

 







 


 

 

 

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